表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/42

42 最終話

*テオフィル視点*



そんな濃厚な新婚休暇を過ごしてから半年。





「レイラーニが身篭りました」

「みごも………………………孫!!??」

「………………孫!!??」

「まだ確実ではありませんが、レイラーニ曰く“竜人な気がする”だそうです」


執務室に居る竜王(義父)宰相()に報告すると、2人とも少しの沈黙の後立ち上がりながら叫ぶように声を出した。勿論、俺自身も驚いている。まさか、こんなにも早く子供ができるとは思わなかった。もう少し2人だけの時間を過ごしたかった気持ちと、直ぐに子供ができた喜びと半分半分と言ったところだ。


ただ、人間の妊娠期間は“十月十日(とつきとうか)”と言われているが、竜人は1年程ある。だから、人間母胎の竜人の子ではどうなるのか─早く生まれて来る可能性もあるとの事だった。それに、竜力が不安定になる可能性もあるから、より注意をしておいた方が良いと言われた。


「ユーリッシュ家には優秀な医師や薬師や使用人も居るだろうけど、テオフィルには、主に家でできる仕事をしてもらう事にしよう」

「ご配慮、ありがとうございます」


そう。結婚してから、俺とレイラーニはユーリッシュ家で暮らしている。母上が毎日のようにレイラーニを可愛がっていて、レイラーニも嬉しそうに笑っている。

陛下の言う通り、万が一何かあっても母上や医師が対処してくれるだろうけど、俺がレイラーニの側で見守りたいと言う気持ちがあるから、陛下の提案を素直に受け入れた。






******



「余程、お互いの竜力の相性が良かったのね」


と、ニコニコ微笑んでお茶を飲んでいるのは母上。あれから家に帰って来ると、レイラーニは寝ていると言われ、母上にお茶の相手をしろと言われサロン迄やって来た。


「可愛い嫁を得ただけじゃなくて、孫まで……無愛想で可愛気の無い息子に、それは全く期待はしていなかったけど、“遅咲きの春”でも良い親孝行をした事は褒めてあげるわ。あ、勘違いしないでちょうだい。テオの事は、息子としてちゃんと愛しているから」

「ありがとう…ございます?」


ー褒められているのか、貶されているのやらー


「これで私も、もう少し長生きをする楽しみができたわ!」

「まだまだ若いでしょう。これからも、レイラーニと子供と、仲良くお願いしますよ」

「それは任せてちょうだい!」


それから、母上とこれからのレイラーニへの対応について話し合いながら、久し振りに親子2人でお茶の時間を過ごした。






******



妊娠して半年もすれば、不安定だった竜力が落ち着き、寝たきりになっていたレイラーニも、ようやくベッドから出られるようになった。


『やっぱり、お腹の子は竜人ですね。幸いな事に、レイラーニ様が魔力もお持ちで、竜力も馴染んで落ち着いているので、特に問題無く出産までいけるかと思います。無理だけはされないように』



「──って、確かに医師(せんせい)は言ってたけど、これはやり過ぎだと思うの!」

「大丈夫。これは竜人達からすれば普通の事だから」

「それ、竜人だけの免罪符だと思うの!」


妊娠半年ともなれば、お腹も少しふっくらして来た。1週間程前まで寝込んでいたレイラーニが、「庭に行きたい」と言うから、俺は喜んで抱き上げて庭に向かって歩き出せば、自分で歩けるから下ろして欲しいと言われた。


ー勿論、下ろす気は無いー


「それに、ある程度体を動かさないと駄目だって言われたでしょう?」

「……じゃあ、明日から歩けば良いから、今日迄は大人しく俺に抱き上げられて下さい」

「………ふふっ………分かった。今日迄は、大人しくここに収まってあげます」


ポフッと頭を俺の肩に預けるレイラーニ。俺の腕の中で安心しきっている姿を見ると、更に愛おしさが増すから不思議だ。


「テオフィルさん。私、恋愛なんて知らずにグレスタンかテイルザールで息を殺して過ごして行くんだと思ってたんです」


ー勿論、何があったのかは全て知っているー


「それが、ネルさんとテオフィルさんと出会えて楽しくなって、ネルさんが本当のお父様だったって知った時は嬉しかったんです」


ーそれは、陛下も同じ気持ちだっただろうー


「それで…テオフィルさんと出会えた事で、虚しく死んで行くんだろうと思っていた私にも、人を愛する気持ちを知る事ができた上に、私に宝物となる存在もできました。ありがとうございます。テオフィルさん、これからも宜しくお願いしますね。大好きです」


チュッ─と、頬に触れるだけのキスをした後、花が綻ぶような笑顔になったレイラーニ。


ー押し倒したら……駄目だよな!?ー


自分でも、久し振りに眉間に皺が寄った事が分かった。そんな俺を見たレイラーニは、パチッと目を見開いた後「久し振りに…眉間の皺を見たわ」と、楽しそうに笑った。





それから、予定より少し早い4ヶ月後に、アイスブルーの髪色に、青色の瞳の男の子が生まれて、竜王陛下と両親が喜んだのは勿論、国中がお祝い騒ぎとなったのは、言うまでもない。














*宰相の呟き*



10年以上不在だった竜王陛下が帰還された時は、本当に嬉しかった。おまけに、コーデリア様との子であるレイラーニ様と共に。


そのレイラーニ様は小さくて可愛らしい女の子だった。そんな()()レイラーニ様の側に常に居るのが─


普段から無愛想な上、眉間に皺を寄せている私の息子のテオフィルだった。妻に似て綺麗な顔立ちをしているのに、無駄遣いしかしていない。妻と共に、嫁も孫も諦めかけていたが──




「「ウチの嫁と孫が可愛い…」」


今日は休日で、尚且つテオフィルが久し振りに登城している為、本当に久し振りに妻と共に、嫁と孫とゆったり過ごす事ができた。そして、気が付けば、寝ている孫を抱いてソファーに座っている嫁も、眠気と闘った後、寝てしまった。


孫の寝顔も、眠気と闘う嫁も、寝てしまった嫁も本当に可愛い。どうやら妻も同じ思いだったようで、同じ事が口から溢れた。


「可愛くてずっと見ていたいけど、このままだと危ないから、2人を寝室に運びましょうか」

「そうだな」


と、妻と2人で笑ってから、妻が孫をそっと抱き上げ、私は使用人達に(私が嫁を抱き上げた事を、テオフィルに言わないように)口止めをしてから嫁を抱き上げて寝室へと運んだ。









❋本編には出て来なかった宰相ですが、竜王不在の間一番苦労した竜人なので、最後に呟いてもらいましたw❋

(๑❛ڡ❛๑;)



❋これにて完結となります。読んでいただき、ありがとうございました❋

感謝Շ”ਭ ପ(꒪ˊ꒳ˋ꒪)ଓ。ෆ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ