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40 甘やかされる日々

竜王国にやって来てから1年─



私は相変わらず平穏な日々を過ごしている。


少し変化があったのは、アルマが竜人の伯爵家の子息と婚約した為、仕事が終わると、その伯爵家に帰る事になった事。


『ご両親が居ないと言うなら、我が家にいらっしゃい。結婚はまだ先だけど、貴方はもう家族の1人だから』

『有り難いお話ですが、私はレイラーニ様付きの侍女ですから』


と、最初はアルマも結婚迄は─と断っていたけど


『私、娘が欲しかったの!お願い!!』


と、最終的に伯爵夫人に頼み込まれる形で、婚姻前から伯爵家でお世話になる事が決まったのだ。

毎日伯爵家に帰ると、婚約者と夫人に出迎えられた後、親子2人でアルマの取り合いになるんだとか。今迄、1日中ずっと一緒に居たから、アルマが帰ってしまうと寂しい─時もあったなぁ…。


いや、勿論寂しい。第二の姉であり母でもあったアルマ。だけど、アルマが帰ると、入れ替わるように……


「今日の魔法の訓練はどうでした?」

「まだまだ上手くできませんでした」


テオフィルさんがやって来るようになった。

そして、毎日一緒に夕食を食べるようになった。王城付きの女官もアルマも、当たり前のように2人分の食事を用意して、普通に2人きりにされてしまう。そんな事になって3ヶ月経つけど、未だに意識し過ぎて緊張している。それに何と言っても……


「お疲れでしょう?」

「つっ…疲れてません!!」

「遠慮はいりませんよ」


特に、魔法の訓練をしたり体力を使った日には、私を抱き上げて運ぶようになったテオフィルさん。最初の頃は驚きの視線を向けられていたけど、今ではすっかり見慣れた光景の一つとなっていて、それはそれで恥ずかしい。



「これ、美味しいですよ?一口どうぞ」


と、「あーん」を要求される事も多々ある。

眉間に皺を寄せていたテオフィルさんは何処に行ってしまったのか…今のテオフィルさんは、とても甘い。「もう止めて下さい!」と言えば良いかもしれないけど、言えない自分が恨めしい。だって、仕方無い。


ー私も、テオフィルさんが好きだからー


テオフィルさんも、私の気持ちに気付いているから、こう言う甘い行動をしているんだと思う。


「悔しい…」

「何がですか?」


視線を向けた先には、楽しそうに笑っているテオフィルさんが居る。


「わっ……私ばっかりドキドキしてる!」

「ドキドキ…なるほど。俺を意識してくれてるんですね?それなら良かったです」

「うー……」


ポフッ─と、抱き上げられた状態のまま、テオフィルさんの肩に顔を(うず)める。


「もうそろそろ、素直に俺に甘えてくれませんか?」

「これ以上、どう甘えろと?溶けちゃいますよ?」

「溶けたレイラーニ様も可愛らしいでしょうね。まぁ…俺からしたら、まだまだ足りませんけどね。レイラーニ様が溶ける迄…もっと頑張りますね」

「違うから!!頑張る方向、間違ってるから!」


私の必死の抵抗虚しく、抱っこ状態で私の部屋迄運ばれて、その日の夕食は「あーん」に始まり「あーん」に終わった。








******



「ジャレッド様とグレッタに、子供が生まれたそうです。少し灰色掛かった白髪の女の子だそうです」


ダンビュライト特有の髪色の女の子。彼女もまた、それなりの治癒力を持っているだろう。


お父様とテオフィルさんの計らいで、お姉様達のお墓が、竜王国の街外れにある墓地に移されてから1年。私は月命日にその場所にやって来ては、3人に話をしている。


「それと、報告があります。私とテオフィルさんとの婚約が調いました」


私が竜王国にやって来てから2年。

この1年は、ただただテオフィルさんに甘やかされた1年だった。もう逃げられない、逃げる気もないからテオフィルさんからの想いを受け入れて、私の想いも伝えて、晴れて婚約を結ぶ事となった。


『やっとか…思ったよりも粘ったね?』


と、お父様にクスクスと笑われたのは、正直恥ずかしかったけど、喜んでくれて嬉しかった。

お互い種族が違う上に(つがい)でもないから、結婚迄に色々とする事があると言われた。


私は竜人寄りの人間。

テオフィルさんは竜人と人間のハーフの竜人。


「ややこしい……」


私にも竜力が流れているから、純粋な人間よりは身篭る可能性も高くなるだろうとも言われた。

竜王国の王座は世襲制ではないから、子ができなくても気にする事はない─と言われているから、プレッシャーも無くて良かったなと思う。


ただ……お互いの竜力を馴染ませる為にしなければならない事が……慣れなくて恥ずかしくてたまらない。


「手を握って、お互いの竜力を流し合うのもできますが、それだと効率が悪いので、効率が良い方法でいきましょう」


と、ニッコリ微笑んだのはテオフィルさん。


「そうですね。効率が良い方が良いですね」


と、同意したのは私。そんな私を微笑まし気な眼差しを向けていたのはアルマだった。

アルマは、その効率の良い方法を知っていたからだ。


何故か、アルマが私とテオフィルさんの2人きりにするかのように、そのまま部屋から退室してしまった。


「アルマ?どうして───」

「効率の良い方法を、教えてあげますね」

「え?」


と、テオフィルさんを見上げれば、優しくキスをされたのだった。




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