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3 何者?

「旦那様と奥様とお嬢様が……亡くなった?」

「──!?」


「食事会を終えて、馬車で邸へと帰る途中で何者かの襲撃を受けたようで………」



食事会の後、雨が降り出し、その雨の中を邸へと帰って来る途中、急いでいた事と雨が降っていた為護衛も少なかったそうで、襲撃を受けて対応し切れず───そんな中、辛うじてその場から逃れる事ができた護衛の1人が大公様に助けを求め、急ぎ騎士を向かわせたが──間に合わなかったそうだ。



そこからの事は、よく覚えていない。



邸の使用人達が執事の指示を受けながらがバタバタと動き回り、侍女長が来客の対応をする中、お父様の弟である叔父─ジェームズ─がやって来た。


「兄達の葬儀は私が指揮をとる」


それは、叔父がダンビュライト公爵を引き継ぐ─と言う意味を含んでいた。






葬儀は滞り無く執り行われた。







この叔父は、私の事をよく思ってはいない。力が全てだと思っている人だから、私の事をダンビュライトの人間だと認めていないのだ。これから、私の扱いがどうなるのか──


ー良くて使用人扱い。悪ければ…追放だー



そんな不安がよぎっていたところに、大公様から密かに私宛に手紙が届いた。


“ジェームズ達には極秘で、レイラーニ嬢に話す事がある。3日後迎えを遣るので来て欲しい”


ー大公様からの極秘の話とは一体ー


どんな話があるのか、全く見当がつかない。悪いような話しか思いつかなくて恐怖すらあるけど、断る事なんてできる筈もない。怖くても、もう私を守ってくれる人も居ないのだ。



それから、約束の日迄の3日間は既に今迄の日常とは違うものになっていた。

喪中の為、まだ正式に叔父がダンビュライト公爵を引き継いではいなかったが、邸内では叔父が仕切るようになり、使用人達も叔父の言う通りに動いていた。私は自室から出る事を禁じられた。食事は部屋へと運ばれては来るが、1日1食しか運ばれては来なかった。


そして、約束の3日目朝、衝撃的な知らせが届いた。



「大公閣下が毒殺されました」





前日のディナーに出された食事に毒が仕込まれていたそうで、その毒により亡くなったそうだ。


それから、大公様の邸内は勿論の事、国中が荒れに荒れた。大公様が亡くなった事で、私への迎えが来る事もなく日々は過ぎていき、結局は犯人を見付ける事もできず国葬が執り行われた。



その大公様の後を継いだのは、弟のギデオン様だった。このギデオン様もまた実力主義の人だ。私がダンビュライトの名を語るのを、忌わしく思っていると言う事を知っている。それを、亡くなった大公様が窘めているところを目にした事があった。だから、ダンビュライト公爵を引き継ぐのは、“直系である私か叔父か”─で議論される事は全く無く、喪が明けると直ぐにダンビュライト公爵は叔父が引き継ぐ事が決定した。



そして、驚くべき事実が判明した。





「私の名前が……無い?」

「そうだ。ダンビュライトを引き継ぐにあたって、ダンビュライトの戸籍を確認したら、その戸籍上にお前の名が記されていなかったんだよ。ただ……先代閣下の直筆で、“レイラーニをダンビュライト公爵家の娘として扱う事を許可する”と言う契約書があった。これが、どう言う意味か分かるな?」


“娘として()()


私は本当に、ダンビュライト家の子供ではなかったのだ。


「兄や先代閣下の思惑は、今となっては分からないが……これで、ようやく間違いを正せると言う事だ。ギデオン様は、この誓約書を破棄すると仰ってくれてね。ダンビュライト家に無能は必要無いが、お前をこのまま捨てるのも家名に傷が付いてしまうから、使用人としてこの邸に居る事を許してやる事にした。せいぜい、頑張るんだな」


「………ありがとう……ございます…………」





それから自室に戻ると侍女長が待っていて「付いて来なさい」と言われ、侍女長の後を付いて行くと、使用人達の住む離れの2階フロアの更に奥にある、普段使用されていない薄暗い部屋へと入れられた。


「今日から、ここがレイラーニの部屋よ。明日からは身支度を整えて、6時に1階に来なさい」


侍女長はそれだけ言うと、この部屋から出て行った。


この部屋には小さい窓が一つあるが、北側にある為日中でもあまり光は入らなさそうだ。室内には、1人用のベッドと小さな机と椅子と備え付けのクローゼットがあるだけ。

そのベッドに座ると、ギシッと音を立てた。





『この子の名は“レイラーニ”。紛れもなく当主である私と妻であるミレーヌの娘だ─』


『─治癒の力が無くたって、貴方はダンビュライト家の娘で、私の大好きな可愛い妹なんだからね!』


『戸籍上にお前の名が記されていなかったんだよ』




「お父様、お母様、お姉様……私は一体……何者なんですか?」


それに答えてくれる人は、誰一人居なかった。






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