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28 番と妃①

「えっと……」


私の記憶と情報が正しければ、獣人や竜人にとっての番への愛情はとても重いもので、一緒になれなければ精神がおかしくなるとかならないとか─


「ふふっ…レイ様が思っている通りで、私の番が既に結婚していて子供も居て……その事実を目の当たりにした時、怒りやら悲しさでどうにかなりそうになってね。知らず知らずのうちに、竜力と魔力が暴走仕掛けて、図らずも大切な番を傷付けてしまいそうになった時に、()()が現れたんだ」





***


「気をしっかり持ちなさい!貴方が彼女を傷付ければ、貴方自身も傷付くわよ!?」


暴走仕掛けた竜力と魔力に当てられて気を失っていた番を護るように現れたのは、アイスブルーの髪色をした女性だった。


「その暴走を抑えないと、被害が大きくなるわ!何だか知らないけど、自分勝手な理由で破壊なんてしないで!貴方…それなりの竜人なんでしょう!?何とか抑えなさいよ!!」

「……………」


ーか弱い人間が、暴走仕掛けた竜人─しかも竜王に説教するとはー


ここで私が腕をひと振りするだけで、この人間だけではなく、この一帯を吹き飛ばす事など造作無い事なのに。だが───


ー彼女は…正しいー


人間にとって、番とは理解し難いものだ。いくら私が“貴方は私の番だ”と言ったところで、私を愛してくれる事はないだろう。既に、彼女には愛した夫が居て、更に子供も居るのだから。それに、彼女は幸せそうに笑っていた。


ーその彼女の幸せは、番である私が与えたかったけどー


彼女の幸せそうな笑顔を思い出せば、暴走仕掛けた竜力と魔力が落ち着いて行った。






「あの…大丈夫?」

「大丈夫……ではないな………」


今は落ち着いていると言っても、番の存在を認めた上で、もう手に入れる事ができないのだ。番と出会えなかったとは意味が全く違って来る。


「番の存在を認めた後に、その番を得る事ができない、失ってしまうと言う事は、私は少しずつ心が蝕まれ病んで行き、最期は狂ったように死を迎える事になる」


番は、謂わば自分の半身のような存在だ。その半身を求めて求めて─それでも手に入らなければ、病んでいくだけ。


番と出会えなかった場合は、求める事がないから病む事はない。


ー私が完全に狂ってしまう前に、次期竜王を決めて姿を消さなければー


「それ、私が……抑えてあげるわ」

「……は?抑える?」


何を言っているのか…全く意味が分からず、彼女の顔を見つめていると、彼女はふふっ─と笑った。


「私、これでも結構有名で実力もある結界師なの。その力を利用すれば…何とかなる気がするの!折角縁ができたんだもの、お試しに私を頼ってみない?」


何とも適当な……いい加減な事を言っているのか─と呆れはしたけど、怒りなどは全くなかった。

彼女の、その何処から来るのか分からない自信と、全く迷いがない目は、寧ろ好感が持てた。


「そこまで言うなら、私を護らせてあげよう」


そう言うと、彼女は「任せて!」と言いながら笑っていた。





結界師である彼女は、本当に凄かった。仕組みなどはよく分からないが、失った番を異常な程求めてしまう感情?が発動しないように、結界のような魔法を掛ける事に成功したのだ。完全なモノではないから、心に少し穴が空いたような感覚はあるけど、それだけで、それ以上何かを求めようとする事はなくなった。そのお陰か、竜力も魔力も暴走するような事もなくなった。

そうして心に平和が訪れると、心にゆとりができ、色々な事が見えるようになり、気が付けば、いつも結界師の彼女の姿を目で追うようになっていた。




「これからも、私の側に居てくれないか?私は…どうやら君が好きみたいだ」

「それ…どんな告白?“みたい”って何?私、ハッキリしない男の人は嫌いよ?」

「きら─っ!?好きです。今すぐ閉じ込めてしまいたい位好きです!勿論、閉じ込めたりはしないけど、本当に………好きだから、側に居て欲しい。駄目…だろうか?」


恐る恐る、彼女の顔を覗き込むと、彼女はパッと笑顔になって「ずっと側に居るわ!大好き!」と言って、私に抱きついた。


「勿論、閉じ込めなんてしたら…全力で逃げるからね」

「………しません」


ー彼女なら、本気を出したら私から逃げられそうだから、閉じ込める事はしないようにしようー


ただ、私は竜人で彼女は人間だから、子供はでき難いだろうと思っていた。幸い、竜王は世襲制ではないから、子供ができなかったとしても特に問題はない。彼女を母親にしてあげられないと言う事だけが、気掛かりではあったけど『それじゃあ、その分私を愛してくれれば良いわ』と、笑う彼女を更に愛しいと思った。番ではない彼女に、毎日恋をしていくかのように、愛おしさが増して行く日々。そんな穏やかや日々を過していると…ある日、彼女が倒れてしまったのだ。




「……………かいにん?」

「はい」

「私は、お前の医師の任を解いた覚えはないよ?」

「陛下……違います!かいにん───王妃様は妊娠されています!」

「………にんし………妊娠!?懐妊!!??」

「そうです!おめでとうございます!!」


奇跡が起こり、彼女が妊娠したのだった。




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