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23 不成立

今朝、間違えて23話目を21話目に投稿した話になります。

*ネル視点*




「そんなに急いで……どこに行くのかな?」


ホールに入ると、何処かへ行こうとするテイルザールの国王ヘイスティングスの姿が目に入った。


「なっ!?ラ───ネルがどうしてここに!?」

「“どうして”とはまた……不思議な質問をするんだね。私が1から説明しないと分からないのかな?」

「まさか───」


私がニコリと微笑めば、ヘイスティングスは顔を歪めた。顔色も、面白いぐらいに青褪めている。その後ろに控え立つ宰相の顔色も悪く震えているところを見ると、宰相も知っていると言う事だ。王妃や側妃達は意味が分からないと言った顔をしているから、ギリギリセーフ……否、王妃と第一側妃はアウトだ。


「長い間、ヘイスティングスにはお世話になったから、挨拶もだけど……色々とお礼をしないといけないと思ってね」

「お…お礼などは…………」

「“要らない”とは言わせないけどね?私としては、お礼をしなければ気が済まないからね。そうそう、お礼をする前にコレを返しておくよ」


私がそう言うと、扉の向こうからボロボロになった獣人がぶっ飛んで来た。


「ガレオン!?」

「……ゔっ…………」


テオフィルは、一切手加減をしなかったようだ。


「ソレが、()()()()()()()に手を出そうとしていたから、その身を以て分からせておいた。それで、私の大切なモノは返してもらう」

「大切な…モノ?一体………」

「テオフィル」


静かに名を呼べば、私の大切なモノを抱き上げたテオフィルがホールに入って来た。


「レイ!?ソレは、私の10番目の──」

「“ソレ”?“10番目”?そのような呼び方は止めてもらおうか?そもそも、お前のモノですらないのだから」

「何を言っている?ソレは、私の10番目の側妃だ。魔法による正式な婚姻届にもサインしてあるから、それが覆る事は無い」


確かに、魔法による正式な書類に自筆のサインをすれば、お互いの同意無しに覆ったり解消される事は無い。勿論、魔法が掛かっている為、勝手に改ざんしたり燃やしたりする事もできない。

但し───


「そうだね。婚姻届を確認したら、ちゃんと2人の自筆のサインがあった。でも……」


ピラッと私の手にあるのは婚姻届だ。「何故それを持っているんだ!?」と言う顔をしているヘイスティングス。ちゃんと保管されてはいた。されてはいたけど、私の影は優秀な上に色々なお礼も含めて必要以上の熱を持って動いてるから、アッサリ見付けて取って来てくれたのだ。


「この婚姻届は、完璧なものではないから…ほら……」

「なっ!?」


私が魔法で火を出せば、その婚姻届は一瞬で燃え尽きて無くなってしまった。


「これで、婚姻の事実は無くなった…と言うか、もともと最初から2人の婚姻は成立していなかったんだよ」

「どう言う………」


ヘイスティングスが、チラリと視線を向けた先に居たのはグレスタン大公だ。その隣で震えて立っている令嬢が、ダンビュライトの者だろう。


「彼女の本当の名前が“レイ”ではないからだよ」

「“レイ”では……無い!?それでは、グレスタン公国は、我が国を欺いて嘘の契約を結ばせていたと言う事か!?」

「それは…違います!!」


私に対して怯えていたヘイスティングスは、今は怒りをグレスタン大公に向けている。私からすれば、獣人も人間も然程変わらない存在だが、人間からすれば獣人は脅威対象だ。ましてや、今のグレスタン公国は加護も無ければ結界も綻びだらけだから、テイルザールが攻め込めばアッサリと崩れ去っていくだろう。

私としては、“レイ”として送り出してくれたグレスタン大公とダンビュライト公爵には感謝したいぐらいだが……勿論するつもりはない。


「これで分かっただろう?もう、レイがテイルザールに居なければいけない理由はなくなった。それと、レイは新たに私との契約を結んだから、グレスタンには戻らず、このまま()()()に連れて帰るから」


テオフィルに抱き上げられているのはレイラーニ。アルコールを飲まされた挙句、人間にはキツイ媚薬まで飲まされていた。苦しそうに涙を流し出したレイラーニを見た時は、本当に我を忘れてしまいそうになった。


『お願い、どうか、レイラーニを護って』


彼女との約束が無ければ、今頃どうなっていたのか分からない。


それから、レイラーニの浄化魔法の掛かった水と薬草から作っておいた万能薬を飲ませた後、魔法で眠らせた。「私がお連れします」と、テオフィルが眉間に皺を深く刻みながら言うものだから、笑いながらレイラーニをテオフィルに任せた。

こんな時に─と思う程、レイラーニを抱き上げているテオフィルは穏やかな目をレイラーニに向けている。


ー無自覚だろうけどー


「色持ちの無能なレイを、一体何処に連れて行くと言うの!?」


震えながらも私に質問をしたのはダンビュライト公爵令嬢だろう。コレにもまた、嫌悪感しかない。だから、答えてやる必要もないが、ここでハッキリさせておくのが良いだろう。


「何処に?と訊かれれば、本来レイが居るべき場所……竜王国だと答えておこう」






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