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10 後宮

翌日。

国王の空いている時間が午前中しかないと言う事で、何の前触れも無く朝も早くから女官に起こされ、()()()()に身支度を整えられた後、謁見の場へと案内された。





「お前が、ダンビュライト公爵令嬢のレイか。長旅、ご苦労だったな」

「お初にお目にかかります。レイ=ダンビュライトでございます。宜しくお願い致します。そして、こちらは、私の侍女のアルマでございます。同行の許可を頂き、ありがとうございます」


「そのアルマは、獣人だったな?なら、丁度良かった。我が城には、か弱い人間に慣れている者が居ないから、そのままアルマにはお前の世話をしてもらおう」


ー“私の為に、態々侍女を用意なんてしていない”と言う事ねー


「ありがとうございます」

「早速ではあるが、このまま後宮のお前の部屋に案内させよう。折角の謁見の場ではあるが、時間がないのだ。また時間ができれば、こちらから声を掛けさせてもらおう。マルソー…」

「承知致しました。それでは、失礼致します」

「では、レイ様、こちらへ……」


私が挨拶をすると、国王に“マルソー”と呼ばれた宰相様が私達に退室を促した。


何日も掛けてテイルザールに辿り着いた側妃(わたし)との謁見が、わずか5分程。厚遇される事は期待してなかったけど、ここ迄あからさまに出て来るとは……。後宮内での私の扱いも、それなりの覚悟がいるのかもしれない。





王城の奥に国王の宮廷があり、後宮は更にその奥にある。勿論、後宮にはそこに住む側妃と国王以外には、国王から許された者だけしか入る事はできないようになっている。宰相様は、後宮に入る事を許されている1人だ。



「これからの事や後宮での事は、後から来る後宮の女官長にお訊き下さい」


部屋まで案内してくれた宰相様は、それだけ言うと部屋から出て行った。


案内された部屋は、後宮の一番奥にある部屋だった。


「何と言うか…予想通りの待遇ですね」

「窓があって部屋は明るいし、綺麗なベッドもあるから何の問題も無いわ」

「レイ様………」


ダンビュライトでは、陽の光が殆ど入って来ない薄暗い部屋で過ごしていたから、部屋が明るいと言うだけで気持ちが良い。

それからアルマさんと一緒に荷解きをしていると、女官長がやって来た。



「私は、この後宮の女官長を務めておりますユゲットでございます。それと、こちらはマチルドです。レイ様にはグレスタン公国から、一緒にお付きの侍女も来ると聞いてはいましたが、このマチルドも付けさせていただきます。」

「マチルドです。宜しくお願い致します」

「こちらこそ、宜しくお願いしますね」

「それでは、これからの事と、後宮での決まりなどをご説明させていただきます」






書類上で済ませて婚姻式等は行わないが、テイルザール国王の10番目の側妃としての地位は確実なものとする


友好の証として迎えた側妃であるが、テイルザールには既に世継ぎも王子も王女も居る為、喩え私との間に子が出来たとしても、王位を継ぐ事は万に一つも無い


後宮内は自由にしても良いが、国王の宮廷、王城には許可なく来る事は禁止


他の側妃が求めれば、必ずそれに従う事





ー何とも素晴らしい決まり事だー


自由であって自由じゃない。“後宮で大人しくしていろ”と言う事だ。


「後宮内とは、庭園も含まれますか?」

「はい。庭園はご自由にしていただいても結構ですが、それぞれの側妃様達と同様にレイ様専用の場所がありますから、後で案内させていただきます。それと、また日時は改めてご報告しますが、レイ様の入宮のお祝いを、第一側妃様が開かれますので、その時に9人の側妃様方へのご挨拶とご紹介をさせていただきます。ですので、それ迄はあまり部屋からは出ないで下さい」


ー挨拶が済むまで篭もれと言う事ねー


その挨拶の機会がいつになるのやら……。きっと、直ぐではないだろう。


「主に、レイ様の事はアルマさんにお任せしますが、何か困った事や訊きたい事がある時はマチルドに訊いて下さい。それでは、今からこちらに昼食を準備させていただきます」







「昼食ね………」

「あからさまですね」


ユゲットさんが部屋から出て行くと、すれ違うように昼食が運び込まれて来て、2人の給仕係がテキパキと準備をした後、この部屋に控える事なく出て行った。

“自分達で勝手に食べろ”と言う事だ。

見た目は豪華なフルコース。ただ、どの料理からも湯気は立っていない。グレスタン公国程の寒さはないけど、テイルザールも少し肌寒い季節。本来なら、温かい食事が用意される筈だけど。


「きっと、食べなければ食べないで何か言われるんだろうな……」

「ですね……」


私とアルマはため息を吐いた後、ゆっくりと昼食を食べ始めた。





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