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007 お着替えの時間

 軽く触れただけなのに、ビクッ、と震えたキズナを見て、パーラは心配そうな顔になる。


「……いや、すこし疲れてるだけだよ」

「ホント?」

「たぶんね」


 実際、表情からも疲弊感が垣間見えるので、そこまで間違っていない。

 だが、どうにもボディタッチが多いヒトは苦手なのも事実だ。意味もなく、殴打され続けていた過去を思い出してしまうからだ。

 いまだって、パーラが殴りかかってきたのではないか、と脳が無意識のうちに判断して震えたに違いない。パーラがそんなことをするような者には見えないにしろ、トラウマはそうかんたんに克服できない。


「だったら寝ちゃいなよ! もっとキズナちゃんと喋りたかったけど、それはあしたでもできるしね!」

「ああ、ごめん。ありがとう」

「謝ることないよ~。それじゃ、またあした!」

「うん」


 パーラに手を振り、キズナは部屋に入る。ベッドとテレビ、机と椅子、パソコン等が置かれている普通の部屋だ。

 ロスト・エンジェルスは肌寒いからか、防寒設備もしっかりしていて、暖房と電気ストーブが設置されていた。

 無課金ユーザーみたいな安っぽいワンピース一枚しか着ていなかったキズナは、ようやく暖かい場所で落ち着く。


「これでココアでもあれば完璧なんだけど。まあ、あとはシャワー浴びて寝るだけだし、これ以上要求するのもなぁ」


 そんな独り言をつぶやき、メントから借りたモコモコしているパジャマに着替える。姿見も置かれてあったので、いま自分の身体がどうなっているのか確認しておく。


(なんか罪悪感湧くな)


 着替えるのだから下着になるわけだ。ただ、シャワーと違って全裸になる必要はない。まず生まれたときの姿へなる前に、自分の新たな身体にある程度慣れてしまおうという算段である。


(めちゃ美脚だ。尻尾は矢印みたい)


 前世と変わらないくらいの身長、162センチくらいのキズナだが、スラリと細くて長い脚を見れば、自身がスタイル抜群であることくらい知れる。


(でもパジャマがぶかぶかだ。めくっておこう。あと、尻尾は……こうだな)


 部屋着の持ち主メントの身長が170センチ。ヒップサイズは(メントが大きすぎて)合っていないが、長さ的にはめくるだけで充分である。また、尻尾に関しては引っ張って半ば無理やり露出させた。


(胸、割と大きいな……)


 そして、問題の上半身。白く安っぽいブラジャーが着けられていた。ついでに、あのふたりが言ったように背中には翼が生えている。

 ただ、その30~40センチくらいの翼を動かせる感覚はない。これではコスプレみたいなものだ。


(って、どうやって翼をしまおうかな。胸周りキツイし、できれば出しておきたいんだけど)


 と、翼の扱いに悩んでいたが、その問題は服に身を包んだ瞬間に解決した。


(直接背中から生えてるわけじゃないんだ。ホログラムみたい)


 サキュバスの翼は3次元の写真みたいなものらしい。まあ、ここは魔術という概念があるようなので、そんな不思議な話でもないだろう。


「あー……、もう疲れたな。シャワー、あしたにしよう」


 色々あった一日、着替え終わったキズナはベッドに身を委ねるのだった。


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