064 倒す旅へ
ルーシはニヤリと笑い、満足げに頷く。
「その調子だ。なに、君らの出番は必ずある。仲間はいくらいても困らないからな」
どうやら今すぐなにかをさせるつもりはないらしい。それでも、キズナがふたりの確固たる意志を訊き心が和らいだのも事実であった。いじめられてばかりの人生だったが、自分が決してひとりではないことを再確認できた。
一方、〝バウンティ・ギルト〟という存在を無視できないのも事実だった。今のキズナは10億メニーの評定金額が懸けられたカモであり、敵対がどれだけの戦力を導入してくるかも分からない。
「さて、私は忙しいので帰るよ。盟友と連絡を取らなきゃだしな」
そう言い、ルーシは足早に立ち去ってしまった。
場には、キズナとアーテル、そしてイブが残される。
「キズナ、貴方って転生者だったの?」
イブはおそらく魔力の探知ができない。そこがアーテルとの差だろう。
そんなことをぼんやり考えつつ、キズナは返事する。
「そうですよ」
あっさりとした、言ってしまえばあまり関心のない言い草のように聞こえただろう。
「どうして私に言ってくれなかったの?」
「だって、面倒くさそうですもん。イブさんが悪いヒトだとは思いませんけど、こういうのって隠しておいたほうが良いかなぁって」
「貴方って、本当に掴みどころがないわよね……」
「死ぬ前からこんな感じですよ」
「キズナちゃん」アーテルが会話に入り込んでくる。「どうやってこの国へ来たの? 普通、天使が手引きするものだと思ってたけど」
「どうやって? そうだな……なんか、目が覚めたら立体駐車場の屋上にいました。天使やら神様やらと会った記憶はないですよ」
「そんなことあるのかしら?」イブが訝るような表情になる。「普通、天使は輪廻転生を手伝う。転移の場合でも、それは変わらない。なにか勘ぐりたくなるわね」
「ぼくをここへいざなった天使が、なにかを企んでいると?」
「そう」イブは腕を組む。「貴方を使って、なにかを企んでるのか。それともなければ、大間抜けなだけか」
異世界の常識なんて知り得ないが、少なくともアーテルやイブがそう言っているのだから、天使が存在するのは事実だろう。
それに、確かに勘ぐってもおかしくない。キズナは半サキュバス少女としてこの国へ来た。精神鑑定を行った医者いわく、一国を滅ぼせるほどの力を持つ存在として、ロスト・エンジェルスへ転生した。それが故、なにか裏で動いているのではないか、と。天使が、なにかを企んでいるのかと。
「ともかく、当面の敵は〝バウンティ・ギルト〟ですよね。アイツらがいる限り、ぼくや……ぼくの恩人が困る」
「そうだね……」
「あの銀髪頼りなのが気に食わないけど、私たちにできることなんて限られてるものね」
結局、そこに行き着く。〝バウンティ・ギルド〟を倒す旅が始まる。
忘れた頃にやってくる……。




