062 バウンティ・ギルド
「そんなことより、パーラさんとメントさんはどこに入院してるんだろ」
「パーラさんにメントさん? あ、MIH大学のヒトだね」
「アーテル先輩、知ってるんですか?」
「メントさんの名前は知ってるよ。私と術式が似てるから、少し話したこともある」
「ほへー。でも、どこへ入院してるかは知らないんでしょ?」
「うん……」
アーテルは、なぜか申し訳無さそうな表情になる。別に追及しているわけではないのだから、そんなシュンとした顔にならなくても良いのに。
「どうせ、あの銀髪が知ってるんでしょ?」
そんな中、イブがやや嫌味ったらしい口調でキズナへ言ってきた。彼女は続ける。
「キズナ。悪いことは言わないから、あんなのとは縁を切ったほうが良いわよ。ヒトを小馬鹿にする者にろくなヤツはいないわ──」
イブがそう言いかけた頃、
病室のドアが開かれた。そこには、銀髪で碧眼の少女が花束を持って立っていた。
「よう」
イブは露骨な舌打ちをした。
「おいおい、ヒトの面見たら舌打ちかよ。それでもオマエ、お嬢様かい?」
「私は直感で貴方が嫌いなのよ」
「女の感ってヤツか? ッたく、世間知らずのお嬢様は社交辞令も知らないと」
「い、イブちゃん。ルーシ様! ちょっと落ち着こうか!」
険悪な雰囲気を肌身に感じ取ったアーテルは、ふたりが喧嘩にならないよう腐心しているようだった。
「私は落ち着いているよ。慌てる理由もないし。それより、キズナ。〝大魔術師〟昇格おめでとう」
ルーシは花瓶に花束を入れる。花の種類なんて分からないが、多分一番高いものを買ってきたのだろう。随分豪華絢爛な花だ。
「13歳で〝大魔術師〟なんて、私以外に前例がないぞ。やってきたことを鑑みれば、当然のことだが」
「〝大魔術師〟になると、なにか良いことあるの?」
「良い質問だ。良いか? オマエは転生者であり、しかも13歳にして10億7000万メニーの値札をつけられている」驚愕に染まるイブを、ルーシは意図的に無視した。「それはつまり、転生者を嫌う連中や……こういう連中に目をつけられる」
ルーシはスマホの画面をキズナへ見せてくる。
【バウンティ・ギルド:1億メニー以上の魔術師ライセンスを持つ、性根の腐った豚の首を刈り取った者へ、その評定金額の1パーセントをお支払い】
キズナ及びアーテルとイブは、顔を強張らせた。
「キズナ、オマエには魔術師免許が発行されている。まあ、10億メニー超えなので当然だよ。そこにいるお嬢さん方にはまだ、ライセンスは発行されていない。本来、高校生を卒業していないと発行されないからな」
ルーシは、とんでもない爆弾発言を淡白な態度で言い放った。
「え、え?」アーテルは言葉を失う。
「……それって、キズナはまともに街も歩けないってことじゃないかしら?」
「そうだね。〝バウンティ・ギルト〟を潰さない限り、キズナはいつでも追われる立場さ」
キズナは、呆然といった感じで首を緩やかに横に振り、いかにも拗ねた態度で、やがて毛布を被って寝始めてしまった。
ご無沙汰しております。今まで評価してくださった方、それとこれから評価してくださる方に感謝します。




