039 魔術師ライセンス
あれから1週間、キズナはすっかり学校に慣れていた。特別講師になってくれたキャメルやホープから魔術とロスト・エンジェルス語を学び、いよいよ充実した学生生活を過ごしつつある。
「自殺しておいて良かったのかもね」
そう言っておどけるキズナは、夕暮れの中パーラとメントの待つ家へ帰っていく。
「ただいま」
「おかえり~!! キズナちゃん、なんか封筒来てるよ!」
パーラが出迎えてくれた。彼女は茶色い封筒をキズナに差し出す。
「なに、これ」
「分かんない! でも、政府はいつも封筒でなにか送ってくるから、たぶん行政のものだと思う!」
「嫌な予感しかしないね」
キズナは寒い玄関から暖かいリビングへと入り、封筒をビリビリと破っていく。
「なんだ、これ」
「んー? どしたの?」
「魔術師ライセンスを取得してくれ、だってさ」
「魔術師免許? キズナちゃん13歳だから関係ないでしょ」
魔術師証明証。18歳以上から獲得することのできる、魔法使いであることを示す免許だ。これがあれば、就職の幅が広がるというし、評定金額も上がるともいう。
ただ、パーラが言ったようにまったく関係ない話だ。サキュバスとのハーフのキズナの年齢は13歳。本来ならば獲得することもできないからである。
「あれかな、カイザ・マギア使ったからかな」
「カイザ・マギア? キズナちゃん、やっぱりすげえじゃん! いえーい!!」
なぜか手を合わせようとしてきたので、パン、と手のひらを合わせた。
「でも、その年齢でカイザ・マギアなんて使ったら政府に睨まれちゃうよ! ロスト・エンジェルスでもカイザ・マギアを使えるヒトは限られてるんだから!」
「けど、1週間前くらいに使っちゃったんだよね。色々揉め事があってさ」
「マジ? だったら政府が出頭を求めてくるかも」
「怖いなぁ」
そんな折、メントが帰宅してきた。「ただいま」と彼女が言うので、キズナもパーラも「おかえり」と返す。
「ねえ、メントちゃん。18歳未満の子がカイザ・マギア使ったら、どんな罰則があるのかな?」
「なに、もしかしてキズナがあの魔術を使ったってこと?」
「うん。不慮の事故みたいな感じだけど」
「そうか……。連邦政府はしつこいからな。キズナ、オマエ使い走りにされるんじゃねえの?」
「使い走り?」
「そ。魔術師ライセンスを付与してカイザ・マギアを使った罪を打ち消すために、連邦が抱えてる問題解決をしてくれ、ってな」
「面倒だなぁ」
「オマエ、本当に気ぃ抜けてるよなぁ……」
それがキズナの美点なのだから仕方ない、と彼女は思いつつも、封筒の中に入っていた書類を良く読んでみる。
「なになに……“セブン・スターズ”ってなに?」
「は?」メントは怪訝な顔になる。
「“セブン・スターズ”? ロスト・エンジェルス最強の魔術師たちだけど、それがどうかしたの?」
「いや、その“セブン・スターズ”の候補生を無力化しろ、って書いてある」
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