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不登校男子、半サキュバス♀転生-お人好し中学生キズナがネガティヴ女子高校生を救って溺愛されてく話-  作者: 東山ルイ
シーズン1 Ready Freddie?-愛という名の欲望-

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032 デート開始

この回より文字数を1500字くらいまで増やします。体調次第で減らすかもしれないです……。

 時刻は9時半。あれから休憩を挟みつつ、かれこれ5時間くらいロスト・エンジェルスの言語を勉強していた。キズナは外がすっかり明るくなっていることを知り、とりあえずシャワーを浴びる。


「というか、まともな服持ってないんだよね」


 シャワールームで身体を清めた。そして、キズナは妊婦さんが着るような、冬用の白いワンピースしか持っていないことを思い出す。

 実際、朝方から昼間はさほど寒くならない。だが、いくらなんでも外用の服を一着しか所有していないのはマズイ気もする。


「パーラさんのだとつんつるてんになっちゃうし、メントさんのだとブカブカになっちゃう。はーっ。面倒だなぁ」


 一応パーラやメントの服を鏡の前で合わせてみるものの、サイズが合わない。


「もう制服で行こうかな。やー、服にもっと関心を持つべきかも」


 そんなことをつぶやきながら、キズナは集合場所の喫茶店へ向かう。待ち合わせ時間は10時半。そろそろ家を出ないと間に合わない。


 *


(ロスト・エンジェルスにはブラックコーヒーないのかな?)


 思いの外バスが混んでいなかったので、10時にはカフェに着いてしまった。キズナはなんとなくブラックコーヒーが飲みたくなったが、メニュー欄にそれはなかった。


(まあ良いや。適当に頼んでおこう)


 別に無糖コーヒーしか飲めないわけでもない。タッチパネルでカフェラテを頼み、キズナはぼーっと届くのを待つ。

 そんな最中。


(あ、イブさん来たみたい)


 白く短めな髪、整った顔立ち、黒いコート、黒のスキニーパンツ、またもや真っ黒なブーツ。そんな出で立ちだった。


「遅れたみたいね。ごめんなさい」

「いえいえ。ぼくもさっき着いたばかりなんで」

「そう。ところで、キズナ」

「なんですか?」

「その格好、寒くないのかしら?」


 対してキズナの見た目は、良くいえばシンプル、悪くいえばいい加減なものだった。

 無課金ユーザーみたいな安っぽい長袖のワンピース。やや長めの赤みがかった銀髪は一応溶かしてあるものの、顔へはメイクすらしていない。常にかけているサングラスだけは5万円ほどのものなので、むしろ浮いてしまっている。

 さらにいえば、店内までたどり着くまで、寒さを感じない瞬間はなかった。本日の朝の気温は7度。せめて上になにか羽織りたいところだ。


「ああ、まあ、寒いですよ」

「ホントに変わり者ね……。まあ、まず服を買うところから始めないとね」

「おカネないですよ?」

「それくらい出すわよ。私のほうが4歳お姉さんなんだから」


 テーブルを越して、イブは両手で頬杖をつきながら、キズナと目を見つめ合う。すでに“チャーム”がかかっているのだから、キズナの目を見たところで実害はない、と判断したのであろう。


「ありがとうございます」

「良いのよ。良いお洋服屋さんを知ってるわ。一服つき終わったら行きましょうか」


 そういう会話の後。


「おまたせしました」


 カフェラテが届いた。キズナは店員にペコリと頭を下げ、落ち着いた表情でマグカップのコーヒーを飲む。


「礼儀正しいわね」

「店員さんだってヒトですしね」

「まあ良いわ。軽食とか食べないのかしら?」

「あんまり腹減らないんで」

「その歳で朝ごはん食べないと、身長伸びないわよ? 軽く食べたほうが良いでしょう」


 イブはそう言い、タッチパネルでパンを注文した。


「ぼく、コーヒー代くらいしか持ってないですよ?」

「これくらい奢るわよ。さっきも言ったけれど、私のほうがお姉さんなんだから」

「はあ。ありがとうございます」


 イブは先ほどから、両手で頬をつきながらキズナの顔を見ている。恋するような、見惚れているような、そんな表情で。誰かを恋愛的な意味で好きになったこともないキズナでも分かるくらい、彼女はキズナをうっとりと見ている。


(困るなぁ。ぼくみたいな欠陥品、好きになってもろくな目に合わなそうなのに)

閲覧ありがとうございます。

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