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不登校男子、半サキュバス♀転生-お人好し中学生キズナがネガティヴ女子高校生を救って溺愛されてく話-  作者: 東山ルイ
シーズン0 交差した終りと始まり

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014 新たなスタートへ

「はやっ。すごい情報網だね」


 いつ“評定金額”が公示されたのか知らないものの、“カインド・オブ・マジック学園”の情報筋は本物のようだ。転生してから2日目、キズナの外堀は埋め立てられつつあった。


「KOM学園? あー、最近できた学校だよね!」

「そーそー。あたしらの学校は一応男子いたけど、ここは完全女子校。だからあの学校よかぁ平和なんじゃねえの、って思ってたんだよ」

「私たちの学校、ホントひどかったもんね~。まあ、私はメントちゃんとかいたから平和だったけど!」

「あたしの知らねえところで詰められてたのに?」

「他の子に比べればマシだよ、おカネ奪われただけで済んだしね……」

「髪の毛焼かれてるヤツとかいたしなぁ……」


 両者とも、苦虫を噛み潰したような顔で、壮絶そうな過去を振り返っていた。これには、キズナも戦慄するほかない。

 だからこそ、パーラとメントは、キズナへ自分らの通っていた学校を勧められない。普通、OBとして関われる母校を紹介しそうなものだが、それでもなお勧められない、そこまでひどい学校だったのであろう。


「なんか不安だな」

「大丈夫、キズナちゃん。私たちの学校より、治安悪いところなんて存在しないから!」

「そうだな。あたしらの母校とKOM学園じゃ、疫病と風邪くらい差があるぞ?」

「まあ、オファー? が来てるなら、もうそこに決めちゃおうかな。さっきメントさんが言ったような、契約破棄のオプション付きで」


 決断は早いほうが良い。キズナはソファーにもたれて胃を落ち着かせながら、そう宣言するのだった。


 *


 ロスト・エンジェルス連邦共和国。19世紀が始まったばかりだというのに、シュミレーション・ゲームで無作為につくったようなビルが立ち並ぶ近未来国家である。

 そんなすこし不思議な異世界へ転生し、一ヶ月が経過したサキュバスと人間とのハーフがいた。


「キズナちゃん、似合ってるよ! サングラスもね!! まあ、 KOM学園って制服着用義務ないんだけどね!」

「オマエ、中1なのにスタイル良いよなぁ。身長も年齢考えりゃ高いし……てか、そのバスト分けてくれよ」


 女子用の学生服を羽織ったキズナへ、思ったことをそのままぶつけてくるふたりの友だち。こういう子たちに囲まれていたら、自殺に近い形で転生することもなかったのかもしれない。


「ねえ、ふたりとも」

「なーに?」

「なんだ? 改まって」

「ありがとうね。散々な目に遭って転生したし、逃げ回ってばかりの前世だったけど、ふたりのおかげで自己嫌悪も減ってきた。だから、ありがとう」


 素直な感謝だった。自己嫌悪の塊だった少年は、肯定感などなかった少年は、承認欲求もまるで満たされていなかった少年は、異世界まで逃げおおせてようやく、自分の人生の主人公になれたのだ。


「おいおい、これから死ぬわけじゃあるめえ! キズナ、オマエの人生はここから始まるんだよ!」

「そうだよー! 逃げることなんて恥でもなんでもないしね!」


 明るいふたりの言葉に、キズナは頬を緩めるのだった。

 新たなスタート。新たな人生。くだらない過去を捨て、絶対成功させてみせる。


シーズン0、おしまいです! 次章『シーズン1 Ready Freddie? -愛という名の欲望-』をお楽しみに!!

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