013 スキンシップに慣れないと
そう言われると、すこし気が楽だ。
適合できなければやめられる。やめたあとにも、拾ってくれる学校はあるような口ぶりだし、だからこそ身構える必要もないのだろう。
「キズナちゃん、もう“評定金額”出されたの~?」
「ああ、何メニーか当ててみな」
「んー、私とそう変わんないと見せかけて意外と高いような気がする! でも、年齢的に3,000万メニーかな?」
「その倍以上だよ。なんと7,000万メニーだ!」
「えーっ!? 7,000万メニー!? あんな強いメントちゃんが1億メニーなのに!? キズナちゃんやべーじゃん!!」
メントの強さは知っている。キズナがデモ隊に絡まれたとき、一瞬で彼らを爆破して窮地を救ったからだ。
あの人数を一瞬でさばける者が1億メニー。そうならば、やはりキズナの7,000万メニーは破格なのだろう。なんの実績もないのに。
「うん、まあ、その、ありがとう」
「どうも感情が揺さぶられないヤツだなぁ……」
「昔からだよ、メントさん。感情をむき出しにできるヒトが羨ましくて仕方ない」
「それこそ天性のものだしなぁ。あたしもパーラも喜怒哀楽激しいから、悪りぃけど気持ちが分かんねえや」
という会話を交わしていたら、パーラが朝食をつくり終えたらしく、3つのブレックファーストが運ばれてきた。
「おまたせ! 朝は軽く、だよね!」
「そういう割には結構な量だけどな」
「だって私もメントちゃんもたくさん食べるでしょ!」
「いや、キズナが食べ切れるのか、って話だよ」
結構な量だ。きのう食べたピザほどではないにしろ、朝食なんて食パン一枚しか食べてこなかったキズナからすれば、胃もたれしそうなカロリーである。
「出されたものは全部食べるよ。パーラさんに悪意があるとは到底思えないし」
「嬉しいこと言ってくれるじゃん!」
パーラはキズナの胸あたりを肘で軽く突く。そしてきのうのリプレイでも見ているかのように、銀髪の少女はビクッと震えた。
「あっ、ごめんね……」
「いや、大丈夫。そろそろスキンシップにもなれる……はず」
女子の世界で生きていくのであれば、多少のボディタッチは受け入れなければならないのだろう。
されど、まだ時間がかかりそうだ。
*
「あー、腹八分目だな」
「ねっ!」
キズナが食べ過ぎのあまり椅子から動けなくなっている頃、ふたりはケロッとしていた。こうなると、朝っぱらからこんな食べられる強靭な胃がほしくなる。
「でも、キズナには量が多すぎたらしい。無理して全部食べなくても良かったのに」
「や、出されたものはよほど嫌いじゃない限り食べるからさ……」
「美味しかった? 改善点とかある?」
「ないよ。想像の50倍以上美味しかった。ただ、もうちょっと少なくしてくれると嬉しい」
という会話の直後、メントのスマートフォンが鳴った。
「なになに……おお、キズナ! きのうの夜中言った、“カインド・オブ・マジック学園”から連絡が来たぞ!」
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