012 気楽に行こう
「今後、かぁ」
いつまでも、パーラやメントの家になにもしないで居候するわけにもいかないし、きのうの夜中メントが言っていたように、ここは中学へ編入する方法を考えるのが正常だろう。
とはいえ。
「学校、嫌いなんだよね。良い思い出がまるでない」
「寂しいこと言うなよ。確かに前世じゃ良い思い出なかったかもしんないけど、ロスト・エンジェルスの学園は日本って国とだいぶ違うぜ?」
「そうなの?」
「日本じゃ魔術がないんだろ? でもロスト・エンジェルスへはそれがある。つまり、一般教養と魔術知識を身に着けてくみたいな感じだよ」
そう言われると、すこし楽しそうだ。古今東西、魔法は人類の憧れだったのだから。その憧れに近づけるのであれば、確かに悪い場所ではないかもしれない。
ただ、それでもなお引っかかるところもある。
「けどさ、メントさん。魔術師の学園に治安を期待するほうがどうかしてる、って言ってたでしょ?」
「まぁな」
「ぼくみたいな根暗、2日目にはいじめの対象になってるだろうし、そう思うと足がすくむんだ」
「ちゃんと感謝できるだけ、ほかの根暗よりは断然マシだろ。大丈夫、いじめられやしないよ」
「そうかなぁ……」
そうやってキズナが悩んでいると。
「んー、目が覚めてきた! おはよ、メントちゃんにキズナちゃん!!」
呑気な猫との獣娘が目を開け、元気な挨拶をしてきた。
「パーラさん、おはよう」
「おはよ! ふたりとも早起きだね~!」
「オマエが遅すぎるだけだろ。きょう学校あるんじゃねえの?」
「あっ、いけねっ!! 準備しないと!」
どうやら大学への登校すらも失念していたらしい。まあ、週5日必ず通う場所でもないはずなので、忘れるのも無理はないかもしれない。
「でも、その前にご飯だよね! キズナちゃん、ブル食べられる?」
「そもそも食べたことないよ」
「ベーコンと目玉焼き、マッシュルームとかソーセージ、ハッシュドポテトといっしょにトースト食べるヤツだよ! 朝食にはぴったりでしょ?」
(要するにイギリス料理ってこと? 英国料理ってまずいらしいけど、大丈夫なのかな?)
と、まずいものは食べたくないと思うキズナであったが、返事する前にパーラはキッチンへ立っていた。これはもう、パーラの料理スキルに期待するほかない。
「死刑判決受けたような顔するなよ、キズナ。まあ、ブリタニカの飯はまずいことで有名だけど、パーラの飯はうまいぞ?」
「そうなの?」
「いつか料理人になれそうなレベルだぜ? まあ、匂い嗅いでいりゃ、うまそうなのも伝わってくるだろ」
「そうかもね……」
とりあえず飯が出てくるまで待機、でなく、話を進めなければならない。
「中学、かぁ」
ぼそりとつぶやき、話の軌道修正を図る。
「まあ、入ってみてから決めても良いんじゃねえの? いろんな名門校が手を挙げるだろうけど、合わなかったら契約破棄でやめるとかオプションつけておけば良いわけだし」
「学校に契約破棄とかあるの?」
「そりゃあるだろ。キズナくらいの“評定金額”を持つ13歳なら、いくらでも自由は効くさ」
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