010 転生者キズナの”評定金額”→7,000万メニー
酔っ払っているように見える、実際酔っているであろうメントは、されどしっかりした語気でそう答えた。
「ほへー。メントさんの学校ってそんなに荒れてるの?」
「荒れてるなんて次元じゃないさ。定期的に行方不明者が出るような学校だぜ~?」
「こわっ」
「あたしらの学校は“強さこそが美徳”だからな。それに比べりゃ、“カインド・オブ・マジック学園”はだいぶ平和らしい。女子校だしな~」
「女子校」
見た目が銀髪ボブヘアの少女であるとはいえ、中身が男子である以上、女子校なんて編入して良いものなのか。
「まあ、女子校だからって完全に平和とも限らんけど~」
「どういう意味で?」
「男子は腕力で勝り、女子は魔力で勝るからな。魔術使ったいじめの可能性は否めんってことさ。てか、キズナって前世じゃ共学の中学行ってたの~?」
「うん。ほとんど行ってなかったけどね」
「不登校?」
「そんなところ」
「なら、なおさら“カインド・オブ・マジック学園”のほうが良いな~。あそこ、結構登校拒否児に対するカウンセリングとかも充実してるしよ~」
「だけど、平和とも限らないんでしょ?」
「キズナ~、魔術師養成学校の治安なんて、期待するほうがどうかしてるぜ? それでもあの学校はいじめ撲滅とカウンセリング、あと異世界人へも優遇制度とってるしな~」
2枚目のピザに手を伸ばした頃には、すでにメントが残りすべてを食べ終わっていた。まあ小腹を満たせただけ良かっただろう。
「ま、あたしはあした学校だしとりま起きてるけど、オマエは二度寝かましちゃいな。疲れとるには、寝るのが一番だしよ」
「……。慢性的な不眠症なんだよね、ぼく」
「呼吸器処方されたんだろ? あれって結構リラックス作用強いから、吸って横になってれば眠れるさ」
メントはキズナの背中を叩く。優しく、撫でるような、くすぐるようにも。
「そうしてみるよ。ピザとサングラス、ありがとうね」
「気にするなよ。あたしらは友だちだろ?」
「そうだね。たった一日くらいしか関わってないけど、前世の誰よりも大切な友だちだよ。ふたりは」
そんな言葉とともに、キズナは自室に戻っていくのだった。
*
「──つまり、この転生者はサキュバスの血が入っていると?」
「ええ。もはや絶滅したはずの魔族の血が、彼女には確かに入っています」
「そうか。精密検査のおかげでおおよその“市場価値”は出せたのだろう?」
「もちろん。年齢や転生からまだ1日とすこししか経過していないことを鑑みれば、極めて異例な金額となりますが……」
【転生者】
【淫魔と人間のハーフ】
【評定金額:7,000万メニー】
「7,000万メニーか。13歳でこの金額は前例がない。だが、前例は塗り替えねば意味がないからな」
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