序章
今日であの娘と連絡を絶ってから50日目だ、
50日は長いようで一瞬だった。
中学校生活が終わりそうなときに交換したあの娘の連絡先は最初の方はちょこちょこ連絡を取っていただけだった、内容もそんなに中身が詰まっていなくたわいもない会話といえた。
でもそんな会話に乗ってくれているあの娘とは何時しかずっと連絡を取り合うような仲になっていた。最初の方は全く意識していなかった。
でも数週間たった時に「あ、あの娘とは毎日連絡を取り合っている」って気づいた。なんでこんなくだらない時間の無駄になるようなことしか話していないのに、毎日連絡を取り合っているんだろうと嗜好を巡らせては忘れた。
その時からあの娘を意識するようになった。そのときから既に僕はあの娘とは釣り合わないなって考えてた。
だってあの娘はとてもかわいいうえに謙虚で優しいんだ、それはモテてもおかしくないと思う、というか実際にあの娘を好きな男子を複数名知っていた。つまりモテてたんだ、その男子たちは僕より秀でているところしかないから付き合うとしても僕以外の誰かだろう勝手に決めつけて納得して落ち込んでいた。
それでもあの娘との連絡している時間は笑っていることが多くて愚痴も聞いてもらえるからどうしても連絡をしてしまうんだ。
だけど自己劣等感が激しい僕はどうすることもなくただ連絡を取り続けていた。そんなことをしていると高校生活が本格的に始まっていた。
高校は同じだったのがうれしく思えるほどには、僕の気持ちはあの娘に傾いていた。本当にうれしかった。
あの娘の部活は美術部で僕のクラスにも美術部の子がいた。その子は美術部であの娘と仲がいいみたいで、よくあの娘からその子の話を聞いていた、そして勝手にその子の連絡先を追加した。その子と仲良くできたらあの娘のことをもうちょっと知れるかもなんて思っていた。
そんなことを考えている自分はやはり気持ち悪いと思う。
でもそんなことを考えていると、あの娘から連絡がきた。それは「町中の方に遊びに行こう」だった。
僕はその送信されたメッセージをみて歓喜していた。それは夢にまで見た光景だった。
でも同時に、とてもなく大きな不安に押しつぶされそうになった。
「二人で行って会話に詰まることがないかな?」
「その時の僕は平常心を保っていられるかな」
「どんな風に振舞えばいいのかな」
そんな些細でありながらも僕の心の占領をしては離れない不安があった。でもあの娘が誘ってくたから断れない。
どうすればいいのかわからなくなっていた。そこで思いついたのはあの娘と二人で遊ぶのではなく、その子を誘えばいいんじゃないのか。そうすれば会話に詰まることもない。あの娘と話すことも少なくなるから、平常心を保てるんじゃないのかと考えた。それは僕の中での名案だった。
だからあの娘には「二人で行くと迷子になりそうで怖いから」なんて理由をつけてその子を誘うことにした。その時にあの娘が「私と二人で行くのはいやなの?」って聞いてきた。(嫌なわけがないけど)と心で叫び同時にその時の僕は「いや、迷子になるのが怖いから」って言った。嘘をついてしまって非常にいたたまれなくなってしまった。
そしてその遊ぶ約束をした日が来た。その日はバス停に集合で先にあの娘と同じバス停で乗ってあとからその子が同じバスに乗るという予定だ。
バス停に行くとあの娘がいた。やっぱりかわいかった。ずるい。そしてバス停につくまでの間に考えていた会話の話題を振っていた。
あの娘はやっぱり話に乗ってくれた。どうでもいいことを話していると、あの娘はスマートフォンを取り出しては妹の写真を見せてくれた。見て「うちの妹ゴリラなんだよ」と言っていた。確かにあの娘は華奢だったから比べるとガタイはよく見えていた。だからゴリラなんて言っていたのかもしれない。そこから兄弟の話を聞いていてあの娘は楽しそうに話していた。そんな姿をかわいいなって思ってキュンって心が躍りだしていた。またあの娘はスマートフォンを取り出して写真フォルダを見せてくれた。そこにはいままで僕が送信してきた画像の数々だった、
「送ってもらったイラストかわいいから全部保存してあるんだよ」
その一言で僕の踊りだしていた心が、心臓がさらにペースを細かくした。別に僕が書いたわけでもない、かわいいなって思ったイラストを保存して、この気持ちを共有したくて送っていただけなのに、それをわざわざ全部保存してくれているなんて嬉しくて、あの娘に傾いていた気持ちがあの娘に倒れてしまった。
ドキドキしていた僕と何も思ってないあの娘のところに空気をよんでくれたかのようにバスが来てくれた。僕はヒートアップした心臓を休めた。バスの中で僕は一番後ろの席に座ってあの娘がその前に座った。
ちょっとしてその子が乗ってきた。その子はあの娘の隣に座った。あの娘とその子は楽しく話はじめた、(本当にこれでよかったのかな)ってその光景を見て思った。もしその子を誘わなかったら僕はもっと長い時間あの娘と二人きりでいられたから誘わなくてもよかったのかもしれない。嫉妬と名付けるのがちょうどいいその感情はあの娘の気を引きたい、あの娘の注目先を僕に少しだけでいいから移したい、なんて考えていた。その感情は僕の腕をあの娘のはねていた髪の毛に伸ばすように仕向けた。
あの娘のはねた髪の毛をそっとつまんでいたくないように優しく引っ張った。あの娘は驚いて振り向いてくれた。それだけで僕は満足だった。あの娘は不機嫌にならず笑ってくれた。
町中についた。バスを降りては町中を彷徨った、土地勘が僕にはほとんどなくあの娘についていくだけになった、それでもとても楽しかった。
あの娘はその子と話しているから無理をして会話を作る必要がなかったから、気が楽でやっぱりその子を誘っておいて正解だと自分の中で結論付けた。
でも楽しい時間は一瞬過ぎるもの、気づいたらそろそろ帰りの時間だった。特に大きいイベントはなく安心した。あの娘と僕は同じバスで帰るけどその子は違うバスで帰るということだった。
そして僕たちを乗せたバスはバス停から出ていった。
疲れていたせいか感覚的にはすぐに降りるバス停まで来てしまっていた。自分でも驚きながらバスを降りてあの娘が乗ったままのバスが走り去っていくの眺めてから自分の家に着いた。
だが問題はここで発生した。あの娘からゲームセンターで預かってて言われててリュックにしまい込んだパーカーが僕のリュックから顔をのぞかせていた。そこで数十秒フリーズしてしまった後どうすればいいかをあの子に尋ねることにした。
いつもならサクサク動く指が接着剤でくっ付いているぐらい動きが悪く打ち間違いを多発してしまう、動揺を隠しきれない僕がそこにはいた。
落ち着いて深呼吸をしてもう一度深呼吸をして、数えきれないぐらい深呼吸をして、少しだけ落ち着いて「パーカー持ち帰っちゃったんだけどどうすればいい」のメッセージを送信した。
すぐに既読のマークがついた。あの娘は忘れてた……みたいな感じであわてて言ってて取りに行くから待っててと言われた。その時に僕は「届けるから場所を教えて」の一言を言えずにもたもたいた。あの娘に自分の家の近くに来てもらうのが申し訳なくて、でも届けるのも相手の負担になるんじゃないかなんて悩んでいた。悩んだ結果奥手な自分はあの娘が来るのを待つことにした。
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