小さな脅威が襲ってくる
ガリガリと家を削る音が響く。
全周囲から聞こえるそれは、小さな虫の大群によるものだ。
今、この町はそんな虫に襲われ、壊滅していっている。
それが今までどこに潜んでたのかは分からない。
だが、ある日突如あらわれて襲いかかってきた。
建物を、人にかじりついていく。
全員が死に絶えるまで。
人々も対抗した。
殺虫剤で迫る虫を倒していった。
だが、大量にあふれる虫を全て倒すにはいたらない。
大群の虫を殺すには量も足りなかった。
手持ちの殺虫剤はすぐに底を突いた。
そうなれば対抗する手段は無い。
人々は襲いかかる虫になすすべもなく食い尽くされていく。
その虫の群れは町を覆っていった。
それだけの数の虫があふれていた。
幸いなのは、進行速度がそれほど速くないこと。
急いで逃げた者達はそれで助かる事ができた。
だが、大群の中に取り込まれた者達はもうどうしようもない。
家の中にいても、その家がかじり尽くされる。
体に取り憑いた大量の虫は、全身を食い尽くす。
口から入ったものは、体内から体を食い尽くす。
生き残る事は不可能だった。
生存者はそれを伝えた。
自分が体験した事を伝えた。
撮影した動画もネットにあげた。
それでも最初は誰も信じなかった。
信じず対応をしなかった。
それが初動の遅れにつながった。
虫はその間に繁殖していった。
調度、産卵の時期だった。
そこかしこに卵を産み付けた虫は、次のエサを求めて動いていった。
そうして幾つかの町が死に絶えた。
人々はようやく状況を把握した。
すぐに対策が考えられていった。
何はなくとも、今現在活動してる大群の処理が始まった。
集められた殺虫剤が散布されていった。
一先ず虫の大群はそれで壊滅した。
だが、卵は残っている。
その駆除は進まなかった。
対処のしようがなかった。
見えるところにあるならともかく、土の中にまで潜んでるものもあるのだ。
それに、広範囲に分布しすぎている。
どうにかしたくても、どうにもできなかった。
やれる事はやった。
それでも、再度の大量発生は避けられない。
そう結論が出た。
やむなく、その対処におわれる事になる。
どれだけ出て来るのか分からない虫。
それに対応できるだけの殺虫剤。
その他の、除虫手段。
可能な限り様々な方法が揃えられていった。
そして迎えた翌年。
卵からかえった虫が動き出す。
幼虫の段階でできるだけの処置はしていった。
しかし、想定以上に広く分布し、大量に出現した虫への対処は遅れた。
それらの大半は殲滅する事ができたが、取りこぼしも多かった。
産卵の前に大方を削ることは出来た。
それでも、翌年も大量に発生するだろうと予想された。
殺虫剤の大量使用の影響も懸念された。
土壌汚染などが起こらないよう使うとなると、どうしても使い方が限られる。
それを避けようとすると、大量の虫を駆除できなくなる。
可能なかぎり害の少ない薬を使ってはいる。
だが、全く影響が無いとは言えない。
大量に使えば、なんらかの影響はどこかに残る。
こういった自然環境に与える影響もあるので、駆除はどうしても及び腰になった。
徹底した大群壊滅の妨げになるほどに。
仕方のないこととはいえ、取りこぼしが出るのはつらいものがあった。
翌年にまた大量発生を余儀なくさせるのだから。
かくて大量に発生した虫の大群は、毎年毎年の脅威となっていく。
発生する地域がある程度予想出来るのが救いだろうか。
なので、事前に近隣の住人を避難させることが出来る。
被害を極力おさえることが出来る。
そんな虫害が今年も発生する。
重なりあった羽音と、それに混じってかすかに聞こえる、顎の開閉音。
不気味なうねりは、今年も人里へと向かっていく。
それは今年生まれた虫が死に絶えるまで続く。
殺虫剤によるか、寿命を迎えるまで。
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