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35トン級戦車の検証<2>

前述でまずは戦車の心臓たる発動機に対する問題点を示した。


ディーゼル発動機では時間的都合で間に合わない、ガソリン発動機では液冷式では信頼性に問題があり、空冷式では航空機用発動機との兼ね合い、そして燃料問題を引き起こすと言うことが解るだろう。


「このはと」作中ではディーゼル発動機の問題を考え、史実よりも早く統制型発動機への取り組みを示唆しているが、それでもすぐになんとかなる問題でも無い。


よって、現実的には米帝のM3/M4中戦車同様に空冷星型500馬力台の発動機を組み込むことが常識的な判断と言えるだろう。あくまで、ここでは常識的なという前置きをする。常識的な判断とはそれが正しいという意味ではないからだ。それは先述した通りであり、別の問題を引き起こすからだ。


次に中島飛行機の発動機総生産数/航空機総生産数について述べることにする。各形式含めての年産を下記に示す。


38年 1548基 987機

39年 2538基 1177機

40年 3144基 1081機

41年 3926基 1085機

42年 4889基 2788機

43年 9558基 5685機

44年 13926基 7943機

45年 3981基 2275機


次に三菱の発動機総生産数について述べることにする。各形式含めての年産を下記に示す。

※三菱の場合、少数生産の試作分などは含まず主力制式発動機の数のみ計数。

※肝心の三菱の航空機総生産数が資料を紛失したことで列記出来ないが、概ね、中島の半分から7割程度の数字であると概算出来たはずだ。


38年 622基

39年 2783基

40年 4519基

41年 5091基

42年 7941基

43年 13977基

44年 10708基

45年 2770基


これを見る限り、発動機生産は明らかに三菱に分がある。44年こそ数字が凹んでいるが、これは地震の影響が大きいと推察される。


だが、概ね発動機と航空機は3:1~2:1の関係に収まる。これは双発機の分が含まれるからだが、自然減の分などで消費される発動機も含まれているから戦争後期の分はそういった消費交換分を多く含まれることになる。


よって、これを見る限り、戦車に回せる分の発動機を別枠で作る余裕はないように思える。


帝国陸軍の1個戦車連隊の定数は中戦車40両/中戦車30両+軽戦車10両/軽戦車40両という編成が一般的であるようだ。


では、相模陸軍造兵廠及び三菱/日立の工場での戦車総生産数を概ね60両程度が月産数の限界であると推定される。これはチヘとチヌの生産数から推定した数字であるが、これらとホニなどの分を含むとしても多く見積もって70両程度ではないだろうか。


あくまでこれは最大限に見積もっての数字であるため、35トン級戦車を考えると月産数は多く見積もって40両程度と推測する。


そうなると毎月1個戦車連隊相当の量産は可能であるということになる。


仮に中島の寿もしくは光を統制型発動機から転換生産して東京自動車工業(ヂーゼル自動車工業)、三菱重工、池貝自動車、日立製作所、新潟鉄工所、興亜重工業、昭和内燃機、羽田精機などの各企業に行わせるとするとしてもだが、各社共に統制型発動機の生産で手一杯であろうから、工場増設ないし転換生産のためだけの企業を設立する必要があるかも知れない。


工場増設の場合、戦車製造は一般的に帝都近郊であるから立地と規模を考えて三菱・ヂーゼル・日立が適当という判断になるだろうか。中島本体からの部品供給を考えてもそういう判断になると推測する。しかし、そう考えると明らかに赤字覚悟の経営の専業企業なんて戦時下でないと絶対無理だろうなぁ。進んで引き受けるなんて思えないのだが・・・・・・。


まぁ、その辺は軍のゴリ押しでそうなったと思えばそこまでか。御国へのご奉公を厭うなど売国奴ってヤツだろう。


しかし、ドイツはティーゲルを月産100両とか平気で生産して、その上でⅣ号戦車やパンターを数百両単位で生産しているのだから驚きだと思うが、我が帝国の両隣にはもっとイカレたヤツがいるのだから泣きたくなる。


思うのだが、これ、35トン戦車なんて真面目に作って配備しようと思うと双発爆撃機を整理していかないととてもじゃないが賄えないと思う。重爆だの軽爆だのと区分して運用するのは無駄でしかないから重爆に統合整理して近接支援は九九式襲撃機みたいな機種に任せるか単発戦闘機にロケット弾でも装備してばら撒くとかそういうのでないととてもじゃないが予算的にも生産余力も無理だとしか思えない。


仮に寿/光を転換生産ないし工場増設としない場合、川崎のBMW-6系のハ9を増産することになると思われるが、その場合でも、川崎の発動機工場にハ9とハ40の2種類の生産ラインが並行することとなる。そうなるとハ40の生産数に影響を与えることとなるのは明白で、史実よりも三式戦闘機飛燕の首無し問題が早まる可能性がある。


これはハ40の問題もそうであるが、ハ9の問題が並行して発生するわけで、生産阻害だけでなく、改善などに手間を取られる可能性が出てくることを意味している。まぁ、その場合は川崎の土井武夫技師が五式戦闘機の前倒しを考えるかも知れないが。まぁ、三式戦の空冷化の提案は43年の時点で行われているから、問題の早期解決に繋がるのであれば、それは前向きに捉えることも出来るかも知れないが、もっともそれは後世の人間の視点であり、当事者にとっては頭を抱える問題であり正解であるかどうか解らないのだが。


少なくとも、何れの発動機を選択するにしても航空機用発動機生産能力と切っても切れない関係があると認識して当たる必要があるだろう。

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