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鉄牛と鉄獅子の遺伝子  作者: 有坂総一郎


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20/23

諸兵科連合部隊の夢幻<5>

戦車師団の総兵力の数字にくらっときたが、それで済ませてはここで可能性を検証する意味が無い。


では、本題である歩兵戦闘車(IFV)にスポットを当てていこう。


歩兵戦闘車の原点は装甲兵員輸送車(APC)に由来する。これは二次大戦時には一定の水準で米独において実現していた。アメリカにおいてはM3ハーフトラックがそれとなるだろう。ドイツにおいてはSd.Kfz.250 ハーフトラックやSd.Kfz.251 ハーフトラック を挙げることが出来る。


さて、それらも多少の武装を施して乗車戦闘が可能な能力はあるが、あくまで輸送がメインとなる。


限定的な交戦能力ではあくまで戦場までの移動手段としてしか利用出来ず、戦場のど真ん中で立ち往生するなど問題もあり、本格的な装甲を付与した交戦能力を有した兵員輸送車を必要とするに至ったのである。


こうして積極的に戦闘へ参加出来るそれがIFVとして発展登場することになるが、それはまたドイツによって生み出されたのである。それがクルツとラングであったが、どちらも西ドイツ軍部においては希望する性能に達しておらず、後にマルダーを開発することになる。同時期フランスもAMX-VCIを開発している。


独仏に遅れること数年、今度はソ連がBMP-1を開発し、これは軽量なため浮航能力を有していた。また、兵員室に8名を収容、ガンポートを備え密閉された兵員室に乗車した歩兵が携行火器を車外へ射撃することが可能であり、これは車両の火力を増強するとともに、歩兵は車外へ出ることなく戦闘が行えるというものであった。


BMP-1は西側諸国に「BMPショック」と言うべき衝撃を与えた。これは後に開発される陸上自衛隊の89式装甲戦闘車にも引き継がれている。


しかし、このガンポートはくせ者であり、装甲に穴を空けてそこに車内から射撃出来るようにしているという構造上、装甲の弱点となっていた。そのため、第1世代IFVに流行した後は第2世代ICVにおいては廃止されることが多かった。だが、89式装甲戦闘車の様な例外もある。


戦後日本において冷戦による北辺防衛は国家防衛上重要なものであり、北海道侵攻を仕掛けてくるであろうソ連のT-80&BMP-2のペアに対抗するというそれによって敵IFVの排除を行うことが求められた。しかし、当時の日本には60式/73式装甲車といったAPCしか存在していなかったため自前のIFVを調達することが急務となっていたのである。また、TK-Xと称され開発中であった90式戦車と同時期に配備することを念頭に開発が進められた。


概ね、第2世代、第3世代のIFVは25-40mm級の機関砲を装備している。89式装甲戦闘車は90口径35mm機関砲、M2ブラッドレー歩兵戦闘車は87口径25mm機関砲、ウォーリア装甲戦闘車は81口径30mm砲、ダルド歩兵戦闘車は80口径25mm機関砲、プーマ装甲歩兵戦闘車は82口径30mm機関砲、Stridsfordon90は70口径40mm機関砲といった具合である。


何れも長砲身の機関砲を装備している。


では、30-40年代にこういった砲がなかったかというとそうでもない。


例えば、ボーフォース40mm機関砲は60口径であり、また、九六式二十五粍機銃も60口径である。


しかも両方とも36年時点で十分に調達可能な代物である。


流石に89式装甲戦闘車に搭載されているエリコンKD 35mm機関砲の初速1300m/秒に比べれば落ちるが、それでも九六式二十五粍機銃は初速900m/秒であり、ボーフォース40mm機関砲初速960m/秒と十分な性能である。


ドイツの3.7cm FlaK 36/37高射機関砲も十分に選択肢に入ると言って良いだろう。

なんだったら初速が落ちるけれどCannone-Mitragliera da 37/54(Breda)というのも選択肢としては悪くないだろう。


開発時期を考えると40年前後とすればここに挙げた選択肢の何れもが可能であるし、3.7cm FlaK 36/37はライセンス生産して一式三十七粍高射機関砲となっているから一番有望なのはこれになりそうではある。兵站の面でも共通化が出来るから望ましい。


ただ、この時期に25mmは兎も角、40mm前後ってのは戦車砲と同然だから過剰な性能とも言えるだろう。場合によっては軽戦車が不要になってしまうことさえ起きそうだ。


となると250kgと軽量で制圧射撃に過剰すぎない九六式二十五粍機銃が一番適当と言うことになりそうだ。だが、陸軍が海軍に頭を下げるとは思えないからラ式二十粍高射機関砲を採用するという流れが適当になりそうだ。


思ったよりも現実的なサイズに収まったな。


これならナトをベースとしなくてもホキの車体延長程度で収まりそうだ。そうすると史実実績の年産500両まで行かなくてもその半分程度なら十分に賄えそうだ。


ふむならば、先述した戦車師団の構想分を十分に整備出来ると踏める。ということは2個戦車師団程度の必要分を賄えると言うことになる。


実現の可能性が見えてきたぞ。

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― 新着の感想 ―
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