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貴方にとってはただのガラクタでも、私にとっては一級品の代物なのです。なので変身してみました

「これが莫大な遺産とは、そういえば大叔父はこういう魔導機械が好きだったか……しかし何でこんな物を残そうとしたのやら」


 と、ハイルは倉庫内で目の前の錆び付いた茶色い横長の機械に目を向けながら頭を悩ませた。


 オンボロの大型魔導採掘機、これが大叔父の遺産ということである。

 昔はダンジョンをその力業で掘り進むのに使われていたらしい。

 分解してジャンク品として出せば多少の金にはなるかもしれない。

 そう思ってこれを売り飛ばす準備しようとしていると、リンデがそれに待ったをかけた。


「ハイル様、この採掘機を売るのは少しばかり待っていただけないでしょうか?」


 大叔父の遺産の権利は半分がリンデが持っている。

 ハイルとしてはこんなガラクタ早く売りさばきたかったのだが、リンデから同意を得なければ売ることはできない。


「俺としてはこれを売って少しでも金にした方が今後のためにも良いと思うが」

「私としてもこれを売るのには反対致しません。ですがその前に今一度これをゆっくりと調べさせていただきたいのです」


 今更この採掘機を調べてどうするのかとハイルは思ったが、最終的に売るというのであれば否定する事も無いだろう。

 ハイルはリンデの提案を受け入れることに決めた。


「構わん。お前の好きにするが良い」


 採掘機を調べる許可を得られたのでリンデは頭を下げる。


「ありがとうございますハイル様。ところで私がこれを調べている間は決して見ないで、誰もここには入れないでくだいまし」

「ああ、もちろんだ。俺も品定めする時は茶々を入れられるのが大嫌いだからな」


 リンデの人払いのお願いをハイルは特に気にもせずに受け取った。

 そして屋敷の侍従達に、この倉庫の周りを見張るように命じる。


「良いか、これよりリンデが倉庫から出てくるまで誰も入れるのではないぞ」

「は!」


 侍従達が緊張した面持ちで返答したのを見届けると、ハイル自身は自分の屋敷へと戻って行った。


―――


「では私はこれから見聞致しますので、ハイル様の仰られた通り皆様は外で待っていて下さいませ」


 リンデに言われるがまま侍従達が倉庫の外に出ていく。

 それを見届けた後、倉庫に誰も居なくなった事を再度確認するとリンデはいつものスライム体に変身した。

 変身した目的はもちろんこの採掘機を隅々まで調べるためだ。


「さて、スラリと調べてしまいますか」


 多数の分身に分裂して採掘機に取り付くと、液状の物体を採掘機の中に次々と侵入させていく。

 それぞれのリンデの分身が中の構造を分析し始めるとようやくこの機械の仕組みが分かってきた。


(フムフム、ここの構造はこうなっていたのね。やっぱり外で見るのと中で見るのは違うわ)


 実はリンデは子供の頃にもこの採掘機を見たことがあったが、その時は中に入り込むのを両親から止められていたのである。


(そう言えばその時の場にハイルもいたのよね。ハイルは覚えていなかったけど)


 リンデと両親の前に採掘機の前にいた先客、それがハイルだった。

 だが、その時のハイルはこの大型機械にはまったく興味を示さずに大叔父がダンジョン攻略で陛下から貰った勲章の方に興味があるようだった。


(目の前の大型の機械よりも、あんな小さな装飾品に興味を惹かれるなんて変わった男の子だなって思ったっけ)


 そう一人物思いに耽っていると、採掘機の構造が大体把握できてきた。

 一通りの調査が終わったので、試しにリンデは自分の分身を近くの採掘機に変身させてみる。

 本物の採掘機の横に少し小さいが瓜二つの採掘機が並ぶ。


「外見は上出来ね私、中の仕組みも大丈夫よね?」

「もちろんです私、むしろ小型化した分小回りはこちらの方が上ですよ私」


 採掘機に変身した方のリンデがエヘンと蒸気を出す。

 シュー!とした蒸気音が倉庫内に響き渡る。


「ちょっと少しうるさいですよ私」

「そうよそうよ、うるさいわよ」


 まだ採掘機に取り付いていた私達から抗議の声が上がる。


「ごめんなさい私……」


 採掘機に変身したリンデはシュンと蒸気を一吹きして謝ると変身を解除した。

 緑色のスライム体になってもどこか申し訳無さそうに縮こまっている。


「まあ稼働テストが出来たと思えば良いじゃない。それじゃ皆本体に戻ってきて」


 リンデは分裂したスライム達になだめるように言うと、それらを全て本体に戻していく。

 その後倉庫の外に出て、護衛している侍従達に声をかけた。


「終わりました」


 リンデが外に出たことで外で待機していた侍従達が回りに集まってくる。


「良かった。途中何やら蒸気が漏れだすような音が聞こえたのですが、我々はハイル様から中を決して見るなと言われていたので確認する訳にもいかずどうしようかと思っていた所でした」


 そう言うとその見張りの侍従はほっと胸を撫で下ろした。

 やはり先程のスチーム音は外にも聞こえていた様である。


「ご心配をお掛けして申し訳ありません。ですが、このように何事も無かったので大丈夫です」


 リンデは謝罪すると、侍従達に連れられて倉庫を後にした。

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