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ごく普通の婚約破棄だと思っていたら、お相手様はスライムだったのです  作者: 砂塵精魔


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13/19

急いでいる方をみるとなぜかこちらは冷静になってしまいますね

 屋敷に戻ったリンデは、自室に戻ると母に手紙を書いた。

 今日の配達受付時間に間に合わせるため「母が焼いたクッキーを食べたくなったので焼いて送ってほしい」という簡単な内容になってしまったが、まあ母なら分かってくれるだろう。

 封をして使用人の誰かにこの封筒を預けようと自室を出ると、使用人の一人がちょうどこちらに向かって走ってくるのに出くわすことになった。


「リンデ様!旦那様がもうすぐお戻りになられますので、至急玄関の方へいらしてください」


 早速手紙を渡そうかと思ったのだが、屋敷のメイドに呼び止められてしまった。

 よほど急いで来たのか、髪を束ねている白いヘアバンドが外れかかっている。


「廊下を走るものではありませんよ、それに服装が乱れています」

「も、申し訳ございません!」


 リンデに指摘されたメイドは小さく叫び声をあげると、その場で立ち止まった。

 よほど急いできたのか、顔はメイドの赤い髪と同じように赤く染まっており、肩で息をしている。


「まず身だしなみを整えましょう。少し屈んで貰えないかしら」


 リンデは手に持っていた手紙をしまいながら言った。


「いえ、わざわざお手を煩わせるわけには……」

「良いから、早く私を玄関に向かわせないといけないのでしょう?」


 メイドの方が私の立場を気にしてか戸惑う様子を見せたので、リンデは少し強い口調で言う。

 それで観念したようにメイドが頭を下げたので、ヘアバンドの位置を直してあげた。


「すいませんリンデ様……ありがとうございます。私のために何もそこまでして頂かなくても……」

「礼には及びませんよ。それに私のために急いできたのでしょう?」


 なお謙遜するメイドを労ると様に言うと、メイドの方もさっきよりは落ちついたようであった。


「はい、旦那様がもうすぐ戻られるとの連絡が入ったのでリンデ様にも伝えなければと」

「分かりました。それでは参るとしましょうか」


 リンデはメイドに自分に付いてくるようにと言うと玄関へ向かうのだった。


 ーーー


 空はすっかり暗くなってしまった。

 その空の下を走る馬車の中でハイルは上機嫌だった。

 それもそのはずで、ようやくダンジョンに行く算段ができたからだ。


(前回よりも大掛かりな探索を行うために高い出費となったが、まあこれはどうとでもなるな)


 ここ最近はその段取りを組むために色々と奔走していたため、その苦労がやっと報われたという感じであった。

 そうこうしている内に馬車は彼の家である屋敷へと着く。


「お帰りなさいませ」


 玄関の扉を潜ると中にいた使用人達が一斉に頭を下げ、ハイルを出迎えた。

 彼らに答えるように片手を振りながら玄関を進む。


「うむ、ご苦労。また屋敷を空けるからその時もよろしく頼むぞ」


 歩いている最中にふとハイルは思い立った。

 そうだ。今度は日帰りではなくダンジョン前に野営地を設営するか、いっその事ダンジョン内での寝泊まりを考えても良いかもしれない。

 それほど彼にとっては新しい装飾品を手に入れるためにダンジョンに入る日がもう待ち遠しい。


 上機嫌で玄関を跨いだハイルだったが、直ぐにそのニヤけた顔を正すことになる。


「ハイル様、お帰りなさいませ」


 リンデがそこに立っていたのであった。

 そもそも自分の帰りが遅かったからリンデがここにいるのは当然でもあるのだが、どうも釈然としない。

 すぐに表情を戻すと足早にその前を通り過ぎようとする。


 ゴトッ!

 何か倒れる様な音が聞こえ、次の瞬間にはこちらに向かって水しぶきが飛んできた。


「ワッ!?なんだこれは!」

「も、申し訳ありません!」


 どうやらリンデの横にいたメイドが更にその隣にある小棚上の花瓶を落としたらしい。


「貴様、この屋敷の主人に水を被せたな!しかも高価で貴様の命よりも重い大事な花瓶を割るなどと!」

「花瓶は割れてはおりませんし、床も濡れてはおりません」


 メイドの不始末に激昂したハイルだったがリンデの言葉を受け、再度周りを確認する。

 どういう訳か床に花瓶と中に活けてあった花は転がってはいるが床は濡れてはいなかった。

 花瓶も無事のようである。


「ただ上着が少々濡れてしまったようなので、それを着替えるのを手伝いましょう」

「それは自分で着替えるからいい!しかし、貴様は今すぐ屋敷から出ていけ!」


 ハイルは近づいてきたリンデを振りほどくと、メイドを指差した。

 メイドの顔は蒼白になっている。

 彼女は再びこちらに向かって再度頭を下げてきた。


「申し訳ございません旦那様!ですが、もう夜になりましたし、私はこのお屋敷を今追い出されたら今日行くところがありません。どうか御容赦を……」

「そんな事は知った事か、今すぐ出ていくんだ」


 こちらに恥をかかせたのになんて図々しいメイドなんだとハイルは思った。


「ハイル様、この通り謝っておりますし、今夜は許してあげて頂いても良いのでは?幸いハイル様が濡れてしまわれた事以外に被害はありませんし」

「なんだと、そもそも貴様がここにいなければこんなことにならなかったんだ!」


 そうだ、そもそもリンデがここにいなければよかったのである。


「だったら貴様が罪を被れリンデ!お前は1ヶ月間外出禁止だ!」


 これには流石のリンデも閉口したようで、といってもほとんど無表情なのでいつもと変わらないかもしれないが。

 だが、一言「分かりました」とだけ言った。

 まあ、リンデに一泡吹かせたのだからこれでいいだろう。

 ハイルは踵を返した。


「俺は部屋に戻る。後は貴様の勝手にすればいい。そうだ今日の夕食は俺の部屋に運ばせるんだ。いいな?」


 そう言うとハイルは自室へとこもってしまったのだった。

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