九話 ゴブリンやスライムを学ぶノブナガ。レアなベージュのスライムも発掘?
トシツネとノブナガはダンジョン内部を歩いている。目的は前回魔王の娘・ベビーサタンと戦闘した地下五階での岩盤修復と除去作業だ。ギルドの依頼として金は振り込まれるので一石二鳥としてトシツネはこの依頼を受けてここにいる。
そして、それは発掘したノブナガの異世界ジパングでの知識を広げる為のものでもあった。ノブナガはスライムやゴブリンなどのモンスターと戦ってダンジョンというものを知るのも目的にある。
そうこうしていると、ダンジョンの基本的なモンスターの一体。緑の獣人であるゴブリンが棍棒を持って現れた。
「ギギッ!」
背中のスコップを取り出すトシツネは構えるが、ノブナガ特に警戒もせず目の前のゴブリンを見据えたまま言う。
「あのブヨブヨした獣がゴブリンというのか。はて、このゴブリンというのは話せないが口が聞けないのか? ギギッ! としか言わぬぞ?」
「モンスターってのは弱ければ弱いほど知能が無いのがモンスターだ。ゴブリンはザコだから言葉は話せない。大量に出てこない限りは大した事は無いさ」
「ほう。ならあやつにも仕事をさせればいいではないか。力だけはありそうだ。倒して言う事を聞かせれば良し」
「だからゴブリンってのは敵なの。人間の敵。基本的に食欲しかない人間に害する動物だと考えてくれて構わない」
「デアルカ」
と、いまいち納得してないノブナガは口ヒゲを撫でる。そして左手の平に右拳を叩き込んで前に足を進める。
「鳴かぬなら、殺してしまおうゴブリンを」
走り寄るゴブリンの右手の棍棒を左手で受け止め、ギギッ!? と驚くゴブリンと目が合うノブナガはそのまま右拳をストレートに伸ばした。ぶっ飛んだゴブリンは地面に倒れ、そのまま動かなくなる。ほえー! と口をあんぐり開けて見ていたトシツネは素直な言葉を吐く。
「素手でゴブリン倒した!? ノブナガすげーな!」
「デアルカ」
フンと鼻を鳴らすノブナガは大した敵ではなかろうと先に進む。その道の曲がり角を曲がると、水色のウネウネしたモンスターが二体いた。
「ノブナガ。あれがスライムだ」
「あの水色のウネウネした生き物がスライムか。二匹いるが、大した事はあるまい」
「んじゃ任せるぜ。ゴブリンよりは弱いけど、たまに火を吹くから注意しろ」
「火遁を使うのか。要するにあの口を警戒すれば火遁には当たるまい」
「ノブナガ、潰さずに勝てよ」
すでに動き出しているノブナガはあえて真っ直ぐ突っ込んだ。二体のスライムは同時に口からファイアを放つ。赤い炎はノブナガの目の前に殺到した。
「ノブナガ!?」
何で忠告した事を聞かないんだ!? と驚くトシツネは炎の塊を見る。スライム達はウネウネしつつ微笑み、焼け焦げた人間が現れるのを待つ。
『……?』
はて? とスライム達はノブナガがそこに存在していない事に戸惑う。同時に、上空から落下して来たオレンジのオールバックの男に手刀を食らって左右に飛ぶ。着地したノブナガは呟く。
「油断大敵よの」
「ノブナガ! 空中に飛んでたのか! スライムを潰さないでいてくれたのはありがたいぜ」
言いつつトシツネは倒れたスライムに駆け寄る。すると、ストローを刺してドリンクのように中身を飲み出した。
「汗をかいた時にはこのスライムドリンクは人間の身体に効果的なんだよ。お前も飲んどけ。汗をかく前に水分補給が熱中症対策だ」
「なら飲んでおこう。この世界の飲み物は面白い味がするからな」
ストローを刺したスライムを受け取るノブナガは、異世界ジパングではスポーツドリンクと同じだと言う少し甘い味がするスライムドリンクを飲む。ダンジョンを進む二人はもうすぐ地下五階にたどり着く途中だ。その最中、ゴブリンの群れやスライムの群れを見ると逃げ腰になるトシツネをノブナガは不振に思っていた。
「……トシツネ。貴様は弱いな。何故あんな獣数匹同時に現れただけで勝てぬ?」
「そもそもオレのジョブは『発掘師』なんだよ。基本的にダンジョンや洞窟を掘ってクリスタルを見つけて売るのが仕事。戦闘向きじゃないの」
「貴様は俺を発掘して『チート』という無敵の力を得たのでは無いのか? それを使えばいいであろうに」
「チートなんていざと言う時にしか使えねーよ。常にベビーサタンを追い払った時の力を自在に使うには、オレはまだレベルが低すぎる」
「ではこのまま長生きしてチートを扱えるようにせねばならんな。励む事だ」
「あたぼーよ。源土の平均寿命は五十年。ほとんど五十を迎えれば死ぬ。オレはそれを超えるのさ」
その言葉を聞いた瞬間、ノブナガは口元を笑わせてかつて自身が桶狭間の決戦の前に放った言葉を思い出す。
「人生五十年。下天の内をくらぶるば。夢幻の如くなり。貴様の言うスローライフの楽しさは怠惰を享受してるだけの最悪の人生。老いた者は次の次代へは行けぬ」
「まるで、誰かの人生を見た結果のような言い方だな?」
「道の山が示してくれたからな」
「道の山?」
「それはいい。思ったのだが、発掘するならこのダンジョンとやらを新たに発掘すれば良いであろう。それを売って金にすれば一儲けだ。こんな考えはこの異世界では不可能なのか?」
このノブナガの言葉にトシツネの頭は雷を受けたような衝撃を覚えた。発掘というジョブの新しいルートが頭の中で光の速さで構築され、光が爆発するようにトシツネの中で煌めいた。
「……いや、不可能じゃない。落ち着いて考えれば出来る話だ。このジパングには未知のダンジョンがまだたくさんあるはず。そのルートを発掘者として確保すればこのジパングで億万長者になれるぞ! このオレがジパングで一番になれるんだ!」
うほほーい! と一人でトシツネは舞い上がって踊り出す。まさかここまで豹変するとは思わないノブナガは呆れつつも、冷ややかな目で異世界の相棒を観察していた。
(この思考の切り替えの速さ。この小僧……まるであのサルのようだ。この才能は擦り切れるまで使い倒そう。それがこの異世界ジパングで天下布武を成す俺の目的を果たす道筋となろう)
そうして、トシツネとノブナガはベビーサタン戦で崩れ去って通行止めになるエリアへと辿り着いた。そこでトシツネは崩壊した石の壁となるエリアをスコップで除去し、修復作業に取り掛かる。
「おそらく強力なモンスターが出てくる方面がダンジョンの未開の地なんだ。その付近を掘っていけばどうにか新ルートが生まれるはず。とりあえずそれはここを修復してからだ。それにギル専・魔法使いのツボミを探す必要もある。お前は背後を見張ってててくれ。オレはひたすら掘り進む」
それから十分ほどが過ぎる。特にモンスターも現れないので退屈なノブナガはアクビをしていると、トシツネが何やら騒いでいた。どうやら何かを発見したようだ。
「やっぱり地面は源土の味方だぜ! 何かベージュのスライムみてーなの発掘した! これはレアなスライムかも知れん! むほっ!」
鼻息を荒くするトシツネは肌色のスライムのようなものを発掘した。
「何だコレ? ぽよんぽよんする。新手のスライムかな?」
「どうしたトシツネ。この肉の塊みたいなのが気持ちいいのか?」
「いや、触り心地はいいけどスライムだったら危険だ。肌色のスライムなんて見た事無いし。スーパースライムかも知れない」
「たわけが。スーパースライムならば発掘してやればよかろう。初めて発見したならばギルドから報奨金が出ると聞いたぞ」
「耳が早いなノブナガは。どれ、いっちょ発掘するかな」
トシツネは小さいスコップを使い、そのベージュのスライムらしき生き物の周囲を掘る。その最中、ノブナガは柔らかく弾力があり触り心地の良い生物を触りまくる。
「このスライムが新種だったら俺が名付け親だな。この気持ち良さは天晴れだ。ずっと触っていたいのぅ」
「だな。つか、オレの発掘した結果なんだから新種ならオレに命名権がある! ゼッテーノブナガには権利を与えない!」
「貴様、こんな時だけ強欲だな。俺はこれに顔を埋めてリラックスしてやる」
「ちょ! 待てよ!」
「触らないで……」
と、何やら人の声が聞こえた。
当然周囲には誰もいない。
トシツネとノブナガはわけもわからぬまま周囲を見渡した後、お互いの顔を見る。
『……』
ふと、二人は目の前のベージュのスライムだと思っていた『何か』について考えた。そして触る。グニグニと触り、感触を堪能しつつ確かめる。
「だで触るな……乙女の肌に触れるな……助けて……」
瞬間、二人はこのベージュの肉の塊が何かを理解した――。
『おっぱいだ!』
肌色のスーパースライムだと思っていてぷにぷに触っていたが、それは何と人間のおっぱいだったのである。トシツネは生き埋めだと思い急いでその人間を発掘した。そして、発掘された人間の少女は怒りの表情で全身の汚れを払っていた。
『……』
ノブナガは何だこの変な服装のたぬき顔の小娘は? と思い、トシツネは驚愕した顔でその少女を見つめていた。
服装は青いトンガリ帽子に白いローブ。その下は胸元が大きく開いた青空のような色のワンピースを着ている。短いスカート丈から伸びる足は白いニーソで固められており、青のショートヒールを履いていた。
髪は白髪のサイドポニーであり、やや垂れ目で左目の下にホクロがある巨乳少女であった。
「ツ……ツボミだったのか……」
これがトシツネの住む非難轟々の裏手に住居を構えるギルド専属の魔法使い・ツボミであった。そのツボミはプンプン! と胸を触られまくった事に怒っている。
「コラ! 人のおっぱいつついて何が楽しいの! トシツネ最低よ!」
先端に五芒星が描かれるステッキを突き出し、魔法使いのツボミは巨乳を揺らし言い放った。




