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十話 ベージュのスライムはおっぱいだった! 遭難者・魔法使いのツボミ現る!

「ツボミ!? つか、何でこんな所で埋まってんの? お前ほどの実力があるギル専なら助けに来る隠密部隊あっただろうに。本当にビキ忍者のシギリしか捜索してなかったのか」


 トシツネとノブナガはダンジョン内部の修復作業員として現場で作業していると、行方不明になっていた魔法使いのツボミを発掘した。これは同じギルド専属であるビキ忍者のシギリが探していた魔法使いである。


 乳を触られまくった怒りは収まっていないが、ギルド専属の魔法使いとしてしっかりした所を見せたいツボミは冷静になる。

 大きく開いた胸元から見える巨乳を中心にして全身の土汚れを払い、風呂に入る時すら外さないと言われる青いトンガリ帽子の位置を手でしっかりと直してから白髪サイドポニーのシズカは答えた。


「いくらギルド専属の魔法使いだからって常に居場所を教えてるわけじゃないしね。ギルドが感知して無い場所で生き埋めにあったらお陀仏なのよ」


「そうだよな。そもそもシギリは方向音痴だしな。基本的に探索時の捜索者によって結果が大きく左右される。忍者としてギルド内では成功して来ているけど、実情を知ってると今後は不安だよ」


「それはシギリ次第だから知らないわよ。それよりお腹空いたわ……バタン」


 と、自分で言って倒れた。

 すぐに駆け寄るトシツネを見るノブナガはまた変な小娘が現れたと溜息をつく。


「おいトシツネ。このタヌキ顔の女は誰だ?」


「聞いてただろ? この女はオレの家の裏手に住むギルド専属の魔法使い青黒(せいこく)ツボミ。ビキ忍者のシギリが捜索してた魔法使いだよ」


「ツボミ? このタヌキみたいな顔をした小娘はツボミというのか。まるで女版家康のような顔だ」


「イエヤス? それよりノブナガ。アカネの時みたいになるから変に動物に例えたりするなよ。魔法で攻撃されちゃ敵わない」


「非難轟々の管理人の金剛アカネか。あのキツネ顔の小娘とこの小娘は似てはいないが、双方共に攻撃的なのだな。だが、それは貴様に対してだけかも知れんぞ」


「そこまで言うな。アカネもこのツボミも根は良い奴だ。オレの友達なんだから仲良くしろよ」


「男女に友情などは無い。あるのは性欲と利害関係のみだ。甘い奴め」


 へいへいとノブナガの言う事を流しつつ、トシツネは自家製の散薬である源土散薬の粉末をシズカの口に入れ、水で流し込む。


「これで良し。気絶から起きたら軽く食事させて体調を整えればこのダンジョンから一人でも脱出出来るだろ。このツボミがここまで疲弊してるのは五年以上前に起こった魔女災害以来だぜ」


「俺には魔女と魔法使いの差もわからん。それよりもその薬が源土散薬か。打身、骨折などに効果がある。しかしかーなーりー苦い」


「良薬口に苦しだぜ」


「本当にそうかな?」


 と、ノブナガは自分達にとって毒になるのか薬になるのかわからない魔法使いのツボミを見据えた。その後、薬の効果と食事でツボミはある程度の回復をした。助けられたお礼として、ツボミもダンジョン内部の修復作業に参加してくれた。

 そして、ツボミの魔法による手伝いもありダンジョン内部の崩壊地点の修復作業が完了したのである。綺麗になった崩壊地点で腰を下ろしトシツネ達は話をしていた。


「魔女探索をしてたらとんだ災難だわ。いきなり頭上から崩落事故があって巻き込まれてしまった。流石の私も生き埋めにされたら魔法は使えないわ。更に上の岩盤に押し潰される可能性があるからね」


「貴様はギルド専属魔法使いで優秀なのだろう? それでもさっきのような物理的な崩壊に巻き込まれると、魔法という奇術でも手も足も出んとはな。魔法とやらも万能では無いようだ」


 フンと鼻息を吐き口ヒゲを撫でるノブナガは再戦の機会があればベビーサタンも物理的攻撃で仕留めてやるとほくそ笑む。むむ……と眉間にシワを寄せるツボミをなだめるようにトシツネは、


「ツボミも昔はたいした事無かったけど、五年前にエドランドが魔女に襲われた時に撃退した英雄なんだ。だからギルド専属の魔法使いであるギル専として活動してる。幼なじみとして、オレの目標でもあるな」


「そ、そんな事を言われても何も出ませんからねー」


 幼なじみに目標とされ英雄と言われている事に照れている。同年代に目標と言われれば、それは十五歳という多感な時期なれば当然だろう。しかし、タカの目のような鋭い瞳と感性を持つ、数多の武将を蹴散らして来た戦国時代の覇者になる寸前であった男から見るとただの子供である。乳繰り合うような二人のやりとりなど、子供がキャッキャしてるだけのお遊びだ。


(……)


 所詮は才能に溺れた小娘だろうと冷ややかな目をするノブナガは二人を静止するよう低い声で言う。


「ツボミよ。そもそもここに生き埋めになった理由は何だ? 運悪く俺とトシツネがベビーサタンという魔族と交戦していた場所の下の階層にいて崩落に巻き込まれた。本当にそれだけなのか?」


 おい! という顔のトシツネに気付かないノブナガはツボミの返事を聞く。


「そうよ。何か異様な魔力反応があったからその付近に行っただけ。魔法使いである以上、魔王の娘という巨大な魔力を使う存在には反応してしまうの。……てゆーかトシツネさ。まさかこの崩落事件を起こしたのは貴方?」


「あはは……まぁ、色々あってな」


「色々って何よ?」


 むむ……と眉間にシワを寄せるツボミは魔法のステッキでトシツネの脇をグリグリした。ここまで知られたら、もうトシツネは真実を話すしか無いと思い観念した。


 そして、このエリアでノブナガを発掘した事や、魔王の娘ベビーサタンと戦って撃退した事を話す。それを聞いたツボミはこの地上に近い場所にまで魔王の娘が来れるほどの状況になっている事に危機感を抱く。


 ダンジョンに魔女が現れたという事件だけではなく、ダンジョンの地下奥深くにいる魔王の一族がダンジョンの地上付近に現れたとなれば今後戦争が起こるのは必須である。マズイな……と暗い顔で眉間にシワを寄せるツボミは、


「……トシツネがベビーサタンを撃退したとはいえ、この付近まで魔族がワープゲートを開いてたなら今後も危険ね。例えゲート壊していたとしても、魔族がこんなエリアまで威力偵察に来れるなら人間がここまで手引きした可能性がある。ワープゲートを生成するには一年以上はかかる大掛かりな仕事。人間が関与しないと、いくら隠していてもワープゲート作成時の膨大な魔力でバレるからね」


「人間が……か? 何の為に?」


「天下布武の為に決まっておろう」


 驚くトシツネにノブナガは答える。それに反発するようにトシツネはノブナガの前に出て言う。


「ノブナガ。お前のその天下布武を魔族が成してしまえば、このエドランドだけじゃ無く、ジパング大陸そのものが魔族とモンスターに蹂躙されるんだぞ?」


「すでにそう言う状況なのだろう? ならば戦うしかあるまい。人間の中に裏切り者がいるなら始末し、魔族共も倒す。そしてその先に人間が天下布武を成すしか世界の平和はあるまい」


「その行動は正しいとは思うが、その天下布武の頂きにお前がいるなら……オレはお前を倒すだろう」


「理由を聞こうか?」


「……天下布武とは多くの他人を勝利という餌を巻いて麻薬を使ったように酔わせ、自軍と敵軍の全ての欲望を利用して覇王になる行為。その後、お前は誰を敵にして動く? オレはお前が敵がいないと生きて行けない戦闘狂にしか見えない時がある。それだけだ」


 両者共に本気の気持ちを話している為に譲り合う精神は無い。この二人の仲がまだよくわからないツボミは動揺を隠せなかった。


(だでぇーーっ! 何でマジなケンカしようとしてるの? だでぇーーっ! ちょっとやめてよ! 私を取り合う構図でも無いのにケンカはしないでよー!)


 こうなれば! と覚悟を決めるツボミは二人の間に不穏な空気が流れているのを打破する為に急に腹を抑えて倒れる。


『ん?』


 と呟くトシツネとノブナガは倒れたツボミを見た。そしてもう一度、源土散薬を飲ませて復活させた。アヘアヘ……と源土散薬の苦さに快感を覚えるツボミは口からヨダレを垂らし、ノブナガはちょっと引いていた。何やかんやで、一触即発の状況は去った。


 そして、トシツネは魔法使いの始祖たる魔女と魔王の娘・ベビーサタンという強力な魔を持つ敵対する存在について考えて閃く。


「因みによ。オレ達はこの場所で魔王の娘のベビーサタンに会って撃退してる。もしかすると、ギルドは人間魔法使いの始祖である魔女と魔族のベビーサタンを勘違いしてるんじゃないか?」


「いえ、魔女で当たっているわ。対象と遭遇したギルドの人間が魔女と認識している以上、魔女が復活したのは間違い無い。世界に混沌をもたらす以上、魔女は復活する度に排除しなくちゃならないの」


「確かに異様な感覚がこの周囲にある」


 そのノブナガの言葉にトシツネとツボミは反応した。


「どこだノブナガ?」


「そんなまで人を頼るな、たわけめ。発掘師なら感じて見せろ。そうでないと、新しいダンジョンルートを発掘するなぞ不可能である」


「確かにそうだな。お宝だか知らんが、発掘してやるぜ!」


 すると、体調が優れないのか青ざめた顔をツボミはした。

 トシツネは目を閉じ集中して周囲の岩壁をサーチするように感じている。そのままゆっくりと瞳を開けると、その足は壁際に後退するツボミの方へ向かう。ノブナガはその光景をただ見つめていた。


 トシツネは迷い無く後退するツボミに向けて足を進め、スコップを手に取り進む。背中に岩壁がぶつかり逃げ場が無いようなツボミは左右を向いてからトシツネを見た。そのトシツネの左手はツボミの頭に伸びている。青いトンガリ帽子を抑えるツボミは焦る顔で言う。


「だで!? これはダメ――」


「――」


 そのトシツネの左手はツボミの背後の岩肌に触れていた。そして、右手のスコップでその場所を叩いて見る。


「ここだ。この奥に何かいる。振動が壁越しに伝わって来る。さて、発掘しますかね!」


 ここ掘れゲンツチ! と軽快な歌を歌いつつトシツネは発掘する。すると、そこにいた存在に三人は驚く。


『――!?』


 何と、そこには白目を剥いてヨダレを垂らし、イビキをかいている青い肌の黒い下着姿の魔族。魔王の娘ベビーサタンが存在していた。

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