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一話 『発掘師』源土トシツネは人間を掘り当てた!

「今日も落ち着いて発掘するぞ!」


 と、とあるダンジョンの内部で黒髪の平凡そうな容姿の少年はスコップを持ち発掘作業を始める。その装備は簡易的な物で、笠に丸印が描かれた家紋である源土(げんつち)一族の白いヘルメットを被り、赤いシャツに水色のツナギを着ていて、足元は黒のブーツだ。少年の近くにはバックが有り、休憩中に食べるおにぎりと水筒。それに糖分満タンのマル秘デザートが入っていた。


「もう借金を払う時が迫ってる……今日こそはクリスタルを発掘しないとな。とっとと親父の残した借金を払い終わって、のんびりスローライフを送りたいぜ。このハズレスキル『発掘師』を継承して来た源土一族も俺の代で金持ちになる――ぜっ!」


 ダンジョンや坑道の発掘などを主に請け負う源土(げんつち)一族の末裔・源土トシツネはひたすらに高値で売れる稀少な宝石であるクリスタルの発掘に躍起になっていた。


 この異世界ジパングワールドにおいて少年の持つスキルはハズレスキルの一つであった。『発掘』とは単にダンジョンなどの硬い岩盤を容易にシャベルなどで掘れる能力の事だ。


 世界にダンジョンが現れた時はダンジョン内を探索しやすくする為にいくらでも仕事あって潤っていたが、ある程度ダンジョンが探索されて内部が通りやすくやると発掘師の役割は終えてしまった。

 異世界ジパングワールドでも基本的に発掘師の仕事はそこまで無く、政府が山などを勝手に発掘してしまう事を禁止している為に源土一族は衰退の一途をたどり、今はこのトシツネ一人だけになっていた。


「いっつもここ掘れ源土野郎♪ ポカポカ発掘クリスタル出ろよ♪ いっつも掘ってる源土一族♪ 最強、金持ち、ハーレム野郎……」


 一人歌を歌いながら周囲に誰もいないダンジョンの中で発掘作業をしている。この辺のダンジョン中腹エリアはある程度の発掘はされてしまっているが、時期が経つとクリスタルがまた現れる可能性がある為に発掘作業をする。一日を過ごしてもほとんどロクな鉱石も取れない為に、発掘師というジョブでも無い限りこんな事をする人間はトシツネだけである。


「……何だ? 何か当たったな。まさかクリスタルか?」


 掘り進めるスコップの先にいつもと違う感覚があった。これは岩盤では無く、何か変なものであった。急いで掘り進めると、オレンジ色の大型のケースのようなものであるのがわかった。それは人の入るような棺であり、死者が眠る為に作られたものは明白だった。

そのオレンジの棺に描かれる五つ木瓜と呼ばれる家紋があるのはトシツネは無論、知る由もない。


「……何だこのオレンジの棺は。とにかく開けてみるか。こうなりゃ、開けてみるしかねぇ……」


 とにかく開けて確認する事が先だと思い込んだまま、トシツネは動いた。今までこんな棺はダンジョンの中で発掘した事は無い。これが誰かが隠したお宝であれば、ラッキーだと思い込もうとしている。そうして、トシツネは恐る恐るその棺に手をかけて開いた。


「……? 何だ!? 人が死んでる? いや、生きてる!?」


 すると、口ヒゲを生やした神経質そうな顔の男が棺の中で眠っていた。明らかに呼吸はしており、死者のような感じは見受けられない。髪型はオレンジ色のオールバックであり、頭髪と同じ色のオレンジのマントの下に白のワイシャツと赤いベストを着ている。首からは金色の懐中時計をぶら下げており、黒ズボンにブーツを履いている男だった。


「……」


 まさかの人間を発掘してしまったトシツネは動揺を抑えきれず、源土一族の家訓を繰り返す事で心を安定させようとした。


「大丈夫だ。落ち着けば大丈夫。それが家の家訓。源土一族の家訓」


 そうして、源土トシツネは自分の人生を大きく変えてしまう異世界から転生した男を発掘した。稀代の激情を放つ、覇王になるべく存在していた男と出会ってしまったのである。

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