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魔王と私  作者: 乱舞
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夜会への想い

「こちらをサタンへ渡して欲しい」


ドレスを持ってきたルシファーは、冷たい瞳だった。

ルシファーが臣下も連れずに、1人で訪ねてくるなど、ノエルがこの屋敷に来てからは初めてのことだった。


普段は従者のエルか、使い魔の黒豹ルキが訪ねてくる。


どうしてドレスを直接渡さないのか、ルシファーとアンジュは一体どういうつもりなのか…ノエルはルシファーを問いただしたい気持ちにかられるが、サタンがそれを望まないことも十分に理解しているのでぐっと堪える。


ルシファーの纏う魔力は冷たさは感じなかったものの、『無』その言葉がルシファーにはピッタリではないかと思う。

そんなルシファーが学校ではアンジュを寵愛している。

目の前の人物と本当に同じなのかと思いノエルは戸惑ってしまう。


ドレスを受け取りしばらくルシファーの顔をじっと見つめていたらしく、ルシファーの深い紫色の瞳と視線がぶつかる。

ノエルもドキリとしてしまうほど、整った顔立ちは美しい。


思い起こせば、ルシファーが通れば誰もが立ち止まり振り返っていた。

女子生徒達から絶大な人気があり、サタンを大事にしていたからこそ、誰も近づいて来なかっただけでこの人は相当モテてていたのではないかと、サタンと共に学校に通っていながら、全く興味もなく、ルシファー=サタンの構図しか考えていなかった自分が情けない。

アンジュのような女の子があらわれることなど、ノエル自身も全く考えていなかったのだ。


ノエルは一度だけ、優しくサタンを見つめるルシファーの姿を見たことがある。

いつもクールなルシファーがこんな優しい顔をするのだと思った。

あれを一言で表現するなら、恋する乙女。


「サタン様なら、もうすぐお帰りになられると思いますが…」


慌てて視線をずらして、時計を見る。

これぐらいなら良いだろうと思いきって言葉にしてみる。


「優秀な方にレッスンを受けているようですので、サタン様の魔力があの方よりも劣るなど、ありませんよ」


そう言って、にっこりと微笑む。


「あぁ…稽古で疲れているだろうから、今日は帰るよ。明日は、夜会の前にルキをこちらに」


そして、これも渡してくれと、ノエル箱を手渡しルシファーは帰っていった。

誰かに教えてもらってる事など百も承知なんだろうか、少しは動揺するのかと思って言ってみたけれど、ルシファーの表情は一切変わることがなかった…とノエルは思い出しながらため息をつく。

冷酷無比の時期魔王…

それならそれを貫けば良いのに、アンジュを自由にさせておくことがノエルには許せない。


ドレスをサタンの部屋に運ぼうと使用人達が玄関ホールに集まる。

ノエルの指示は的確だ。

屋敷の扉が開き、サタンが帰ってくる。

ノエルは素早く、扉の前へ行きサタンを出迎える。


ルシファーからの贈り物が届いてることを伝えると、サタンの顔が一気に曇るのが目に見えてわかる。


「明日は、ルキが夜会の前に迎えに来るそうですよ」


「そう…」


せめて嫌でも迎えには来てくれるだろうと思っていたが、ルシファーはアンジュの所へでも行くのだろう。


「しばらく、ルキに会っていなかったから、ルキの顔が見れるのは嬉しいわ。ルキに会ったのは、この前仕立て屋に行った時だわ」


今思えば、今日の贈り物のドレスのサイズを合わせる為に、ルキはサタンを案内しに来たのだ。

その時ですら、ルシファー本人は来ずに使い魔のルキだった。

サタンはルキと一緒に行動するのが好きだ。

金色の鋭い眼光の奥の優しい目を見ているといつまでも背中を撫でていたくなる。

言葉は話さないけれど、自分を護衛してくれようとしているのが伝わってくる。


ルシファーと2人で出かける事も話す事も、アンジュが来てから一度もなく、考えれば考えるほど、落ち込んでいく。

もう、慣れたはずだったルシファーの態度も言葉も、思い知らされる程、刺さってくる。


「ノエルは夜会どうするの?」

「私はサタン様にお仕えしている身ですので」

「お父様もお母様もあなたを侍女になんて望んでいないのだから、いい加減夜会デビューすればいいのに。ノエルなら良い方と巡り合えると思うわ」


夜会なんて…結局値段の付け合いではないかとノエルは思う。

自分の父のように、容姿だけで女を物のように扱う奴らばかりなのではないかという気さえしてくる。

所詮夜会なんて、価値のある女性だけが優位に立てるのではないかと思うと、どうしても夜会に顔を出す気にはなれない。

それでもサタンの事を思うと、夜会でルシファーが他の人と踊っている間中、側にいてあげたいとも思う。


「来年こそはご一緒しますね」

「ありがとう。でも、あなたがそういう場所が苦手なのはわかっているから…無理しないでね」


明日は休日だ。

雨音の夜会に間に合うように、午後から夜会の準備に入る。

時期魔王の許婚なのだから、あんな女に負けないように、サタンが輝いていられるように、準備しなくてはと、ノエルは気合を入れるのだった。


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