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白の綾  作者: ぺの
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卒業まで

 そのまま、高木と桜井は付き合い続けた。八代は卒業後、地元に就職したが、一度大きい絵の仕事が入ったのを機に会社は辞めてしまった。仕事はそれなりに不満もあり気に入ってもいたが、絵の仕事が入ればそちらを優先するのが八代だった。結局、資料や画材を集めるのに都合がいい大学の近くに一軒家を借り、絵で生計を立てた。一度地元に帰ったことで、高木とも桜井とも関係が切れた。最も、高木の場合は大学という場から離れた相手には連絡なんて取る気はなかったのかもしれない。真相はどちらにしても、こちらからはどちらにも連絡を取らなかったし、どちらからも連絡は来なかった。思えば不思議な話だ。どちらもあれだけ親しかったのに。

 その後、二人がどうなったのか八代は知らなかった。知らなかったが、幸せなのだろうと思った。時々、二人の未来を夢想したことさえあった。

 親しく会う友達もおらず、ひとり自宅にこもって描き続けるうちに、八代の絵からはますます色彩が損なわれていった。様々な色を試し、そのたびに見るに堪えなくなっていく絵を見ながら、八代は二人の生活を考えるようになった。例えば、二人の子供のことなどを。鮮やかな笑顔を浮かべる桜井や、不器用に子供の相手をする高木、その二人の間ではしゃぐ子供。そんな風景を見てみたい気がした。

 ほとんど外に出ないまま、八代は惰性のように絵を描き続けた。鉛筆ですら我慢がならない絵になることもあった。深いスランプに陥ったのだと思った。気づけば買い物と、二か月に一回の散髪以外には外出しなくなった。絵の仕事はすべて断らざるを得なくなった。だというのに、八代は描くことがやめられなかった。筆を止めた瞬間に、何かが壊れてしまうと思った。休息も必要と言い聞かせてはみたが、別のことをしていると恐怖にも似た何かが突き上げた。キャンバスに触れていないとひどく息苦しく、正常な呼吸ができなくなる。その割に、描くことで呼吸が楽になるわけではなかった。気分は落ち込み、激しい恐怖めいたものの反動でか、頭がぼやけてものが考えられない日が続くようになった。

 頭がはっきりしている日は憑りつかれたように絵を描き、憑き物が落ちたように呆け、眠っている時間が長くなった。そんな生活をしていたせいか、八代は体調を崩しやすくなった。熱が出たりすぐ吐いたり、下して寝込んだりした。しかも、絵を描くために身を起こしているときに限ってその症状が激しかった。

 八代と同じ顔を持つ彼が来たのも、そういう日だった。


公募に出したやつにはサブタイトルつけてないので、投稿時に三秒くらい考えてつけてるんですが、あまりにも適当だからあんまりサブタイトルの意味ないですね。

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