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第5部思い出エピソード おどろおどろしい声

ここはひのもと国の大笠原列島の小姑島

きょうはホームステイの最後の日だった。

11歳の緑とエレオノーラは岬の灯台の見下ろせる開けた場所で夜の海を見ていた。

「もう1年たっちゃったね。」とエレオノーラが口を開いた

緑はちょっと不機嫌そうに夜空を見ていた。

そこへ緑の父親が甚兵衛を着てウチワをパタパタさせながらやってきた。

緑の父アルベルト・ブリーフトレーガ氏はドイチェ系メリ合州国人で専業主夫の小説家。能天気な大のひのもと国文化大好き男性。


アル「きょうでみんなが揃ってるのも最後だな。緑、エレちゃん」

緑は不機嫌そうに黙っていた。


「この1年ものすごく楽しかったです。一生分の幸せをこの1年で食べちゃったかも。うふふ」エレオノーラが楽しそうにニコニコしながらそう言った。


緑の父はニコニコしながらちらとエレオノーラを見た。


緑が口を開いた「かーさんはどうしたの?」


アル「きのう一足先にメリ合州国のサナ宇宙基地へ行ったよ。つぎの火星有人計画の責任者を打診されてるらしい。かーさんは自分の参加は断るみたいだが、サナ宇宙基地のオブザーバーなので参加要請されたんだ。おまえらによろしくってさ。」


緑は「ふんっ!」と軽く咳ばらいをした。


エレオノーラは少し真顔になると「そうなんですか。」少し残念そうに言った。


緑は父に買ってもらったばかりの携帯電話の画面を出すと、ネットにつないで人物ウィキを出して「一ノ瀬峰子」と入れた。

すぐに名前と写真が出た。


一ノ瀬峰子

宇宙飛行士、ひのもと国初の女性ノーブル物理学賞受賞者

メリ合州国の火星有人計画の第2回目に計画されたペルセフォネ計画に18歳で国連大学生1回生として参加。亜光速宇宙船ペルセフォネ101に搭乗したが宇宙事故によってペルセフォネ計画は追行不可能となったが、メリ合州国の非常時用緊急カプセルの正常作動により6人のクルーは全員無事ア-スティアラに帰還した。帰還後、東帝都大学からサナ大学に転学し、物理学科を卒業。在学中にアルベルト・ブリーフトレーガと学生結婚。アステロイドにおける宇宙事故をブラックホールの重力場の影響による宇宙の自然ワープ現象と説明し、その事故時に計測された種々の数値を個人で手に入れ計算し続け8年後にミネコ・スィオリーを発表。タキオンの存在をその理論で証明し、スーパータキオン粒子の存在を予言した。未来におけるワープ航法の可能性をその理論で予言している。


緑はウィキを途中まで読んで画面をうんざりした顔で消した。


みんなはその場で緑の父の持ってきた線香花火をしながら楽しく雑談した。

緑はいつのまにかその場で寝落ちして

熟睡していびきをかきはじめた。

緑が草の上でいびきをかいて爆睡しているのを見つめてから

エレオノーラは緑の父に思いつめた様子で話し始めた。


エレ「あの……アルパパ。聞いていただきたいことがあるんです。」


「うん?なんだい?」アルベルトはエレオノーラを見下ろして聞いた。


エレ「ほんとはミネコママにも聞いてほしかったんですけど、いないので仕方ないです」


エレ「以前から、ホントはもっと前からお話ししたかったことがあるんです。それがどんな話でも聞いていただけますか?」


アル「きみはもう、僕らの娘だよ。エレちゃん。……それがたとえどんな話でも、僕は喜んで聞くよ。」


エレ「……ご迷惑だとは思いますが、私、打ち明けられる人がいなくて。ご無理を承知で、聞いてください。アルパパ」


エレ「自分でどうすることもできない運命ってありますよね。アルパパ」


アル「ああ、あるあるだね」


エレ「……私、自分の前世の記憶があって……」


アル「へえ……」


エレ「それが人間じゃなく、宇宙人の記憶なんです……」


アル「そうなんだ」アルベルトは無邪気に楽しそうに返事した。


エレ「……私には……おじい様以外にだれにも知られないようにしてる特殊能力とおじいさまにも秘密にしてる特殊能力があるんです。」エレオノーラはうつむいてどこか遠いとこを眺める瞳で語った。


「それはすごいな」アルベルトは嬉しそうに言った。


エレ「私は他人に気づかれずに他人の記憶や経験を自由に自分にダウンロードしコピーする能力があるんです。この能力はおじいさまも知っています。

他に自分の遺伝子を変換して姿を変える能力、これはおじいさまは知りません。

あと、なぜこんな能力があるのかわかりませんが、1回だけ自分の時間を逆転させ死から生き返る能力です。」


アルベルトは息をのんだ「すごいなあ」

ウチワをパタパタさせた。

エレオノーラは思いつめて緊張してた糸が切れたように、しくしくと泣き出した。彼女は、まだ11歳の少女である。


アル「あれ、泣かないで。エレちゃん」

アルベルトはじぶんの来ている甚兵衛の袖でエレの流れ落ちる涙をそっとぬぐった。


アル「何故なくの?」


エレ「祖父が私の能力でお金儲けすることしか考えてないので……ときどき辛いです」


アル「まあ、それもきみのじいさんなりの愛じゃないかな?僕はそう思うよ」


エレ「そうですね」


エレ「こんな能力があることをだれにも秘密にしてること自体がつらかったんです。でも祖父に……愛してくれてることはわかっててもこれ以上の能力のことは知られたくない。私にはまともな父と母はいないので……聞いていただけてスッキリしました。アルパパありがとう」


そのとき、緑が、目をこすって起きだした。

「むにゃ……そろそろ家にかえろうよ。おやじぃ」

アルベルドが何かエレオノーラに答えようとしたとき

岬から見える南の海の上に夜空から隕石が落ちてきたように見えた


アル「お!隕石か?」

ところがそれは海の上でひょいと上昇し、小姑島の無人灯台のある人の住んでない区域の森のほうにふわりと浮かび、そのままストンと森の中に着陸した。


アル「おお、あれはUFOか!?これはすごい!僕は様子を見てくるから、あぶないからきみらはここにいなさい。」

と子供たちに言ったつもりだったが、周りにはもう誰もいなかった。

緑はエレオノーラの手をつかんで走り出していた。


緑「すげえぇ!!絶対に写真とるぞ!」

彼は興奮していた。ちょうどきのうテレビでUFO特番を観たばかりだった。エレオノーラは緑に手を引っ張られて転ばないように走っていたが顔は無表情だった。


アル「おーい、お前ら危険だから帰れ!」


緑「勝手なこと言うな!くそおやじっ!」

おっとり刀で、追いついたアルベルトは、自分らが光る何かの度真ん前に来ているのに気が付いた。150メートルくらい離れていた。

緑は携帯電話で光を放っているものをパシャパシャ写真を撮っていた。

エレオノーラは無表情で光る何かを見つめていた。

エレオノーラは何かを感じたようにくるっと振り返ると、そこにいた写真を撮るのに夢中の緑を、おもいっきり横の崖下へ突き落した。

不意をつかれて、声を出す暇もなく緑はまともに下に転げ落ちて行った。


光からぎりぎりぎりぎりと音が出始めて、アルベルトの頭に何かおどろおどろしい声のようなものが響いた。


おどろおどろしい声「イチノセミドリはどこだ? その男を殺しに来た!やつは光体の制御者だ。やつを殺す!それが私の役目だ!」


アル「えええええ!!」アルベルトは体が動かなかった・・・・


エレオノーラが無表情にアルベルトの横に立っていた。

光るものは丸い頭の金色の仁王像みたいな姿のモザイクの様な表面の3メートルくらいの形になった。


おどろおどろしい声「オス2匹か?どちらだ?若いほうか?」

丸い頭の金色の仁王像はムチの様なものをシュッと出した。その瞬間にエレオノーラの服が一瞬で粉みじんになり、エレオノーラは裸になった。


なんとエレオノーラの裸は男の子……だった。

「私がイチノセミドリだ」エレオノーラはそう叫んだ。


グギギギギギギギギ

金色の丸い頭の仁王像は エレオノーラに向かって恐ろしい炎と光を放った。エレオノーラの身体は一瞬で丸焦げになった。


「ニンム カンリョウ!」おどろおどろしい声はそういうとそのまま、垂直に夜空に上昇し一瞬で見えなくなった。

なんと、エレオノーラの焦げた身体がじわりじわりとフィルムの逆回しの様に元へ戻り、やがて元のエレオノーラに戻った。

アルベルトの金縛りがようやく解けた。

そのとき、緑が怒って崖下からようやくよじ登ってきた。

擦り傷だらけで左足は捻挫していた。

が二人の様子がただ事でないことに気が付いた。


緑「何があったんだ?」

彼はエレオノーラを見たが、疲れ切った顔で呆然としてるエレオノーラは丸裸だった!

しかもなんと、彼女には、おちんちんがあった!


緑は「?!?!」


アルベルトは自分の甚平の上を脱いで即エレオノーラに着せた。

脱力した顔のエレオノーラは

「……いま体を元に戻しました……女の子に」


アルベルトはさっき聞いたばかりのエレオノーラの特殊能力を思い出した。

そっとささやいた。「きみは自分の性別を変えれるのか?」


「はい そうです」エレオノーラはそっとささやき返した。


アル「あいつらは何故おれの息子の命をねらったんだ?」

また囁いた「緑の命をきみが自己犠牲して救ってくれたのか……」

エレオノーラは答えなかった。

3人は無言でそのまま家に帰ったが、緑は危険な現場を見なかったのでよく事情がわからなかった。

ただ、緑はエレオノーラが、体が男の子心が女の子という『お釜』ととんでもない勘違いしてしまった……


このおそろしい前の夜に起こった出来事は何だったのだろうか?

アルベルトにはとても現実とは思えなかった。

しかし、アルベルトは過去にこれとは違うが似たような体験をしていたのだった……


きょうはホームスティが終わる日

一ノ瀬家でささやかな解散式があり

一ノ瀬源太郎、小夜子夫婦の音頭で、みんなでジュースで乾杯した。

「峰子がおらんのは残念だが、また会いましょう」源太郎が言うと

桜(長女中学生)、緑(長男小学5年11歳)、渚(次女小学3年9歳)、はエレオノーラと父親を港に送っていった。

小姑島のひなびた漁港には、場違いな大きな豪華なヨットが入港していた。

中から老人の大男が現れた。

世界的な大富豪ヨハネス・アレクサンドロス氏だった。

彼はすでに一ノ瀬家に行って、ていねいに孫娘が世話になったお礼を言い、源太郎小夜子夫婦に頭を下げてきていた。


ヨハネス「やあ。アルベルト、きみの小説の新作のイメージは沸いたのか?」


アルベルト「いや、まだなんです。」アルベルトはぽりぽり頭をかいた。


ヨハネス「ヨットレースが舞台なんだろ?」


アルベルト「はい、いちおうモチーフはヨットなんで」


ヨハネス「そのために、わざわざ わし自身がこのエメラルド号で来てやったんだ。わしはあんたの小説の大ファンだからまた新作を送ってくれよ」


アルベルト「はい、ありがとうございます」


アルベルト「渚、おまえおじいちゃんばあちゃんちに残るのか?」

(9歳の)渚「うん、ここのほうがいいもん」

アルベルトはこの世の終わりみたいな顔をした。


エレオノーラが緑に「また、メール送るね」と言ったが

緑は聞こえないふりをした。

アルベルトは奇妙に思った。彼は息子の勘違いにまだ気づいていない。

エレオノーラはあれだけ親しかった緑の露骨な態度の変化を、不審に思っていた。

ーーーーまあいいか、こういうお年頃なんだなーーーー


桜が長女らしく仕切った

「じゃあ、おとうさん、ママと仲良くね。渚の世話はまかせてください。」


アルベルト「ああ じゃあな」

エレオノーラとアルベルトが乗船し


ヨハネス・アレクサンドロスが叫んだ。

「出航だー!!」

船員たちがテキパキと走り回り、美しい帆船は、そのまま

大海原へと快適に走り出した。



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