第36部
緑は階段を降りて階下の部屋の前に行った。
このドアの向こうに教祖がいる……はずである。
緑は、ドアノブを回して部屋に入った。
そこは体育館くらいの広さの空間だつた。
そのど真ん中に、巨大な石棺が置かれていた。
それ以外、何もない。
緑はその巨大な石棺の傍へ寄ってみた。
それは緑の肩の高さまである石でできた蓋の付いてない棺桶だった。
そこから異様な臭気がする。
中を見ると、その石棺一杯に腐りきった大男の死体が入っていた。
来ている服装は、古代ラ・トカ帝国の神官か王族の様だ。
暫く、緑が臭気を発するその遺体を眺めていると、石棺の陰から、白衣を着た男が現れた。
「ふん おまえが一ノ瀬緑か」
その男は緑を見下すように高慢な態度で言った。
緑は男の顔を知っていた
「あんたの顔は手配書で見たことがあるぞ。
もとエウロパ連邦の貴族だったDrローラン・ガヌロンだな。
国際的な不法臓器売買と細菌兵器の売買で逮捕するっ!
あと、武烈宮武烈の息子 仄を19年前に母親の小川加恋から誘拐したのは
彼女の主治医だったお前だろう」
さらに緑は続けた。
「研修医であった立場を利用してA財団のメディカルセンターに保存されている賢者の石の欠片を盗み出し、何に使ったんだ?」
「知能の低い男だな。とんでもない濡れ衣だね。知性0の世界警察らしい判断だな。そんなカッコいい悪党と思われてるとは光栄だね。ふはははは!」と緑に向かって嘲笑した。
「あいにくだが私がおまえみたいな下等なやつに逮捕されることはない」
「あんたがこのド・テナ教団の教祖プテオ・インビティアなのか?」
「ふん、私はただの医者さ。 聖なる教祖はこの王棺の中におられる」
一ノ瀬緑「三千年まえの王様のただの遺体だろ?」
「私はただA財団のメディカルセンターの賢者の石がつまらない人間を蘇生させるのに
無駄に消費されているので、正しい用途に使っただけさ」
彼はヒステリックに叫んだ。
「私は賢者の石で正しい王プテオ・インビティアを蘇生させたのさ」
「三千年前に死んだ人間を蘇生させられるのか?」
「知能の低い男にしては良い質問だな。あいにく普通は不可能だ。しかしマルム化して死んだ場合は別さ」
ドクターローラン・ガヌロンは高らかに叫んだ。
「火星からやってきた微生物は知的生命体なんだよ。
火星基地の科学者たちが火星に古代文明の遺跡が存在することを
世界の首脳の命令で秘密にしてるのさ。
おまえの母親だとかがな! そっちの方がよほど大罪だ!」
緑「…………」
いきなり、王棺の中の腐った大男の死体がギョロッと眼を剥くと むくっと起き上がった。
緑は飛び上がるほど驚いたーー緑は、ゾンビとかホラーとか恐怖映画はあまり得意ではないーー結構怖がりであるーー
王の衣を纏った腐った大男の死体、三千年前のラ・トカの王プテオ・インビティアは、石棺から出ると、緑に殴りかかった。
緑は飛びのいた、
拳が当たった床石が砕け散った。
王はおどろくほど素早かった。
三メートルはある王の次のパンチは、緑の身体にまともに当たった。
緑はよける暇もなく、弾き飛ばされ石壁に撃突した。
王は素早く緑の前へ来ると右のパンチを繰り出した。
緑はそのまま石の壁にめり込んでしまった。
高い守備力を誇るはずの最新式アーマノイドスーツを着ているのに、緑の口から血が滴った。
「ピピピ 危険! 極小核爆弾 チャージ中! 発射しますか?」
「だめだ!」
緑は、エネルギー型レーザービーム砲を発射した。
それは三メートルはある王の身体の腹部に当たったが、臨界点に達さなかった。
王の腹部でエネルギーレーザーボムは赤く光って消えてしまった。
さらに撃ち込まれた王の左の拳を交すと、緑は王の背後にまわり込んだ
しかし王は緑の動きに素早く反応し直ぐに姿勢を緑に向きなおすと、
さらに右手で殴り掛かった
緑は王の右手を掴むと背負い投げで投げ飛ばした
王は壁の石の中にめり込んだ。
緑は壁石にめり込んだ王の左手を掴むと大外刈りで投げ飛ばした。
王は体育館の広さの石室の向こう側の壁まで吹き飛び、壁に激突した
王の顔が憤怒の表情に変わった
王は信じられないスピードで緑の前に戻ると、すごい勢いでパンチを繰り出し始めた
王のパンチで緑は石壁にめり込んだ、その緑に向かって王はボクサーの様に連続パンチを怒涛のごとく打ち込んだ。
防御の高いアーマノイドスーツを着ている緑の口から血が噴き出した
「げぼっ!」
「ピピピ 緑本体危険! 極小核爆弾 チャージ中! 発射しますか?」
「だめだっ!」
「エネルギー型レーザービーム砲のエネルギーを最大にしろ!」
「ピピピ 新型アーマノイドスーツの装着可能時間が著しく減少します、お薦めできません」
「やれっ!」
緑は最大パワーでエネルギー型レーザービーム砲を充填し、発射した。
王の腹部が赤く光り臨界点に達しエネルギーレーザーボムが赤く輝いた。
王の身体が大爆発し高熱で解けて消えた。
体育館の広さの石室は、まるでガソリンエンジンのピストンルームのように
焦熱地獄となった
熱と煙が収まり、緑は石室の床の上にかろうじて立っていた。
Drローラン・ガヌロンの姿はどこにもなかった。




