第34部
一ノ瀬緑は目覚めた。
渚の姿が見えなかったが、どこかの横穴で何か、情報収集でもしているのだろうと思った。
彼は、ふと自分が大事なことを忘れていたことに気が付いた。
「アーマノイドスーツを装備したらエレと通信できる機能が付いてたな」と独り言。
即、アーマノイドスーツを装着した。
「エレ! いるかい?」
「緑、報告遅かったわね。ああ、大変よ。渚ちゃんが火星に行っちゃったって」
「え? 火星? いや、何の話?」
「まあ、いいわ。またその話はあとね。 要件をお願い」
「携帯電話を無くした。 あと携帯食料も無くなった。 あと、マルム化しちまった。 あとマルム化した人々がここに100人近くいる」
「マルム化? ああ、ラジリア国の言葉で、俗に言うゾンビね」とエレ
「OK。ワクチンがこちらのメディカルセンターにあるわ。100人分位ならストックがあるから、すぐ送れるわ。 あなたの必要な物と医療スタッフを送りたいけど、いま、あなたどこにいるの?」
エレオノーラは「こっちのGPSで地図上に表示されてるあなたの居る場所は、荒野のど真ん中で、人の待機できるような場所じゃないわ」
「ちょっと、ここのリーダのハトさんに聞いて見るよ」と緑
「そこに地下水脈かなにかある?」
「ああ、地下水脈があって魚が沢山いる。その先に地底湖もある」
「わかったわ。ラ・トカ村周辺の地殻の立体地図で、あなたの居場所が特定できたわ。
すぐに地下水脈の入り口から、傭兵部隊の医療チームを派遣するわ。
ラ・トカ村の近くの山頂湖の湖底にその地下水脈への入り口があるわ」
「わかった、待ってる」
「OK。必要な手配をしたわ。 医療部隊を今そちらに向かわせたわ。あともっと詳しく説明をするわ」
「そちらでマルムという病気のバクテリアは火星由来の微生物で、
養分として食べた人間とかの死体の細胞の遺伝子を食べることで読み取ってコピーする。
コピーした遺伝子でその死体の外貌を模倣して、死者の生前の姿のダミーとなる。
そうやって人間のような姿になって移動し攻撃するのよ」
エレは続けた
「これがいわゆるラジリアのゾンビね。素早くて人間より怪力だそうだわ。
おそらく、古代に火星から来た隕石に付着していたと考えられてるのよ」
「じゃあ、なぜド・テナ教の呪術師はそのゾンビを意思道理に動かせるんだ?」
「へえ、それはこちらの情報にないわ。そうなの? それは興味ある話ね。
こちらで関連資料を調査してみるわ」
そこへハトが話しかけてきた。
「一ノ瀬緑さん、アーマノイドスーツとかいうものをまた装備しておられるようですが、
どうされたのですか?」
「ああ、いま、僕の嫁と話してますが、嫁がこちらに医療スタッフを派遣したそうなので、
このマルム化は、すぐに治療できますよ。村人全員が」
「そうですか、ありがとうございます」
「妹の渚さんは見かけないですが、どうされましたか?」
「いま、火星にいるそうです」とエレオノーラ
ハトと緑も「?」であるが、緑もエレオノーラが何か冗談を言っていると思って、こんなときに! と思い無視した。
暫くして、旧式の茶色のアーマノイドスーツを着たセントバーナド警備保障社の傭兵部隊の医療スタッフが20人、激しい水流の流れる地下水脈から、次々に現れた。
医療スタッフは、このマルム化していた人々全員と緑にワクチンを投与して治療し、全員が、長年の呪われた『マルムの呪い』から解き放たれて、健康な体になった。
「なんとお礼を言ったらいいのか」とハトが緑に深々と頭を下げた。
「国際特捜官の一ノ瀬緑さん、ありがとね」と子供たちがお礼を言った。
「村長さんと村人のみなさんもこれでラ・トカ村へ帰れますね。
もう軍隊がマルム化を理由に駆除しに来る理由はないでしょう」と緑。
「いや、そうもいかないのです」とハト村長
ラ・トカ村の人々は、ラ・トカの遺跡を不法占拠しているド・テナ教の信者たちのことも非常に恐れていた。ラ・トカ村がゾンビに襲われてマルム化させられたのも彼らの仕業だと言う。
「世界警察がド・テナ教を壊滅させるまでは、もう暫く、この古代の洞窟に住み続けますよ」とハトは緑に告げた。




