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第33部

なぜか渚と緑は長老に恋人同士と勘違いされた。


……一応、自分と渚が世界警察の国際特捜官であることはハルと長老に話したのだが……


ーーなので、一家族と認定されてーー横穴を一つ頂いた。


アマナが気を聞かせて、自分の家の横穴から余っているカーテンと敷物を持ってきてくれた。

そして器用にチョイチョイとカーテンを吊るして敷物を敷いてくれた。


「ありがとね、アマナちゃん」


「仲良くするんだよ。じゃあね」とアマナは知った顔でウインクして笑顔で自分の横穴に帰った。


「丁度疲れてたところだ。少し休むよ」と緑は、渚と緑にあてがわれた横穴の敷物の上に横になると、たちどころに鼾をかき出した。


「ぐーぐー」


爆睡している。


「あ そうだ、アーマノイドスーツに直接連絡機能もセットで付いてるわ」と渚は思い出して言ってみた。


しかし兄は爆睡中である。


「仕方ないな。起きたら言おう」


渚は兄の横に横になってみた。


しかし寝付けない。

周りを見回すと、奥に、さらに小さな横穴がある。ようやくスリムな女性が一人通れそうな横穴である。


渚はその穴に入ってみた。奥は深くてどこまで続いているのか分からない。

暇なので、渚は、試しにどこまで続くのか確かめてみることにした。

細い横穴は延々と続く。

どこまでもどこまでも続きそうな横穴を、渚は黙々と進んだ。

そうしてようやく、開けた場所に出た。

そこはあまり空気が良くない感じで、空気が重く澱んでいる感じがした。へんな硫黄臭い匂いもする。

ーー「火山の地殻の近くに行ったのかな?」--


なんだかひどく息苦しい。喘ぎながらも渚が進んでいくと、向こうに数人の人影が見えた。


聞き取り易い言葉で話している。

「ヴィシヌ博士。ミオダーク博士、そちらの地殻の調査をお願いします」

ーーどこかで聞いた懐かしい声だったーー




そしてなんと、いきなり、眼の前に一ノ瀬渚の……母の顔が現れた……

「ママ?!」「あら……だれか簡易宇宙服も着ずにこんな場所に来てるわ……」


渚は「ママ!」と叫んだ。

「……まさか、幻影かしら?……あなたは、アースティアラにいるはずの渚じゃない? ありえない?……」


ヴィシヌ博士とミオダーク博士が駆け付けた。

「……ありえない。きみは確かアースティアラにいるはずの一ノ瀬峰子博士の娘さん……」

「おーい、どうかしたのかい?」と懐かしい間延びした呑気な声が聞こえた。

「おーい、アルベルト君、きみのお子さんの渚さんがここにいるんじゃよ」とミオダーク博士。

「あっはっは、きょうは四月一日でしたっけ?」と笑いながらやって来たアルベルトは息を呑んだ。

「おまえ、渚、どこから来たんだ? まだ次の連絡宇宙船が来るには半年あるのに?」


渚は呼吸が苦しくてたまらなくなりアーマノイドスーツが暫く宇宙でも過ごせることを思い出し、アーマノイドスーツを着用しようとしたが、意識が飛んだ。その場に崩れて倒れてしまった。


気が付いたとき、渚は、火星基地の医務室に寝かされていた。少し体が動かすのが苦しかったので、眼を開けずにそのまま動かずにいると、

ドクターエルメスが聞いた。

「彼女は、どこから来たんですかねえ? 

しかも火星由来の微生物に感染していますね。

われわれが配布されているワクチンを投与しておいたので、すぐに治癒するでしょう」


「ありがとうございます」と母の声。


「一ノ瀬峰子さん、あなたはこのテラホーミング計画の責任者ですのよ。

仕事もせずに昨日から、娘さんのそばにつきっきりで、いらっしゃいますわね。

本来片すべき日課の研究を放置してらっやるわよ。

それでリーダの勤めを果たしていらっしゃるおつもりなの?」

とヒステリックな声が聞こえる。


「ああ、すいません」母のすまなさそうな声


「おい、おまえ、峰子さんがご心配なさるのは最もだろうが」


「あなたは、黙ってなさいっ」



なんだか、とんでもないことになった渚である。


渚はうっすらと眼を開けた。

「やあ、気が付いたかい」と金髪の40歳位のイケメンがドクターエルメス。

さっき聞いた、キィキィ声のヒステリックな声はバイオレット技師の様だ。母から写真で紹介されたことがある。

彼女の夫で落ち着いた白髪の紳士のバルカン技師。夫婦とも40代くらい。

ここがもし本当に火星基地なら、一流の学者や技師ばかり……全員40代位の人たちである。


火星ではテラホーミング計画が実施されてからすでに25年経つ。火星の大気は、かなりアースティアラに近づいているが、まだまだではある。ただ数分くらいなら、簡易宇宙服がなくても、即死することはなくなったようだ。 そのおかげで、渚は、ここが火星だと気づくのに、かなり時間がかかり、アーマノイドスーツを着用するのが遅れて、意識を失った。

「こういうのは、きみの専門じゃろうが」とミオダーク博士が言ったので、一ノ瀬峰子は答えて

「一兆分の一のそのまた一兆分の一のそのまた一兆分の一位の確立で、自然ワープ現象が起こる可能性があります。おそらくアースティアラのどこかにそのワープホールが開き、あの、ビーナスの丘の洞窟と繋がっていたのでしょう。これは画期的な事件です。これはこれで、専門のチームを作って調査研究の必要と価値はありますね」しかし、と峰子は続けた「渚は幸い、このテラホーミングが進んだ火星上に出現しましたが、自然のワープホールはどこへ出現するかはわかりません。そのため非常に危険です。つまり、宇宙空間やブラックホールの中へだって繋がることがあるのですから」


バイオレット技師が峰子に言った。

「あなたが、ノーブル賞欲しさに、あんなミネコ・スィオリーなどという理論を発表したからこういう出来事がおきるんですわ」ときつく言ったが、峰子は笑っている。

父のアルベルトはどこかに行っているようだ。姿が見えない。


だれかがフライパンを打ち鳴らしている。

「さあー食事ができたよー」と明るい父の声が聞こえた。

「渚、あなたも、お食べなさい」と母が渚に言った。


渚もおずおずと簡易ベッドから起き上がり、重力の少ない不慣れな感じを味わいつつ、100人以上いる火星基地の、大きな大食堂の食事のテーブルに参加することになった。

父がいきなり、渚を見つけると走ってきて、渚をハグしてほっぺたにキスした。

「僕のプリンセスさん、お目覚めかい?」と小さい頃、いつも朝に言ってくれた言葉をかけてくれた。

とりあえず、渚は、この火星基地のビュッフェ式の朝ごはんに舌鼓を打った。


「わぁ、美味しいっ♪」


父と母がピッタリ渚の横に張り付いていて、二人はとても嬉しそうだ。



いきなり唐突に火星まで来てしまったので、一ノ瀬渚は当分アースティアラには帰れないようだ


火星基地→→月面基地→→アースティアラのサナ宇宙基地を結んで、亜光速宇宙船が定期的に飛ばされているが、年に1便であり、いくら最新の亜光速船でも全行程の航行に半年はかかる。


「ここへ来た場所でもう一度通ったワープホールを捜してで帰ろうか?」と言ったら、ママに「いけません、危険過ぎます」と言われて禁止されてしまった。






一ノ瀬渚のいない間の東野順平は


 一ノ瀬渚の『飼い犬』として不良放置犬化している恋人の東野順平はーー無職でだらしない軽い男だがーー渚が仕事で帰れないため、預かっていた生活費もその日のうちにパチンコで1時間で擦ってしまい、餓死しかけてエレオノーラの家へ無心に行ったが、ごついボディガードに追い払われて、泣く泣く、自分の父親の家に帰った。

 順平の父親はひのもと国屈指の大富豪であり世界的な大画家で、エロ爺として知られる80歳においても意気軒昂な東野駄衛門画伯である。彼は順平が一人息子であるにも関わらず、息子に無関心で自分のエロと創作にしか関心がない非常に自己中な人である。

 順平を育てたのは、順平が産まれる前に、東野画伯の付き人になった塩野獣しおのけものという65歳の外国傭兵上がりの数奇な過去を持つゴツイ男性であるが、東野画伯の秘書、執事、お抱え運転手を務めている彼が順平を育てたのであるが。

 彼の順平への扱いは何事も軍隊調であるため、順平は『塩獣爺しおけじい』と呼ぶ彼が苦手であり、実家ですっかり軍隊調の健康な強制生活をさせられている順平である。


ーートホホ! 渚ぁ~早く帰って来てくれよぉ~!--


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