第15部エレオノーラはビッチ・・・・
緑の横にはリケトニアのシャガール公子がいた。
さっきまでエレオノーラの家で緑の焼いたたこやきをふうふう言いながら食べていた19歳の男だ。
リケトニア公の息子であり王太子だがエレオノーラのまたいとこだそうで、ごくまれに遊びに来る。
エレオノーラと二人っきりで、緑がたこ焼きを焼いて二人で食べていたのに、いつのまにか来ていっしょに食べ始めやがった。
ーーーー空気読めねえ クソガキめ!ーーーーー
緑にとって嫌だったのは、先週まで特捜官の仕事で要人警護で、このシャガール公子の警護を2週間仕事として公私にわたってしていたからである。
「なんで!?」・・・・うざかった。この19歳の少年の警護はたいへんだったのだ。
ひどい気まぐれのわがままだったからだ。
リケトニア公国警護隊があるのに、なんで世界警察機構の特捜官が、警護せにゃならない。
上司ブリオシュ長官の命令だから仕方がない。こういう仕事もあるのだ。
2時間前に
緑が自分の安アパートからタコ焼き機を持ち出した。
途中で必要な材料も買った。
夕食の約束の時間にエレオノーラの家へ行くと、エレオノーラは待っていた。
彼女の部屋で緑はたこ焼きを焼いた。
エレオノーラも笑顔で絶賛してくれた。
とてもいい雰囲気だった。
二人で楽しくたこ焼きを食べていたのに、エレオノーラが口火を切った。
「きみはぜんぜん、女性と遊ばないんだね。」
緑は思った(女みたいなもん、お前ひとりで手一杯だわぃ!)
いきなり思ってもいない話だっので、たこ焼きがオール4個はのどにつかえて慌てて水を飲んだ。
「私が自由にプレイガールしてるのに、あなたも女性と遊ばないんだったらずるいよ。約束違うじゃん。」と非難がましい言い方をした。
緑「そんなの俺の自由だろ。互いに結ばれるとき、ほかの異性と遊ぶのは自由って決めたんだ。遊ばないのも自由だろ!」
エレオノーラは黙ってしまった。
そのときお邪魔虫がやってきた。
シャガール公子だった。リケトニア公が年老いてできた息子である。
「やあ、エレ、またいとこの僕が遊びに来たよ。」
エレ「あら、シャガールいらっしゃい。」
ジャガール「うまそうな匂いがするな。僕も食べていい?」
エレ「どうぞ。緑が焼いてくれてるの。とてもおいしいわ。東の庶民料理よ」
シャガール「うまいなーふはふは」
しばらく、もくもくと食べ続けていた3人だが、いらんこと言いのシャガールが言った。
「エレと緑くんのペアって、着てる服の格差がめちゃひどくない? 見てて笑えるほどに」
それは真実だった。
エレオノーラはティファールのミス・ココのまた新しいビーズ地のえんじ色のスリムなパンタロンスーツを着ていた。これも数千万円するオーダメイドである。
それにレースの手編みのシルクブラウスとエナメルのエルメの深緑色のハイヒール。高価な数百万円のしろものばかりである。
かたや
緑は アパートで着替えてきた新品のジャケットは襟に緑が外し忘れた赤い値札がはためいていた。バーゲン¥1380
緑が自分で手洗いで丁寧に洗ってるお気に入りのすりきれたジーパンはところどころほつれて敗れていた。
3枚1000円の白い半袖Tシャツにお気に入りのワゴン売りの学生用紐靴¥980
ジャケット以外に値札はついてないけれど、
シャガールはエレオノーラに言った。
「これっていくら結婚してなくても、パートナーへの虐待じゃねえ?!」
エレオノーラは答えた。
「私たちは互いに自由だからそんなことには口出ししないのよ。」
シャガール「僕だったら緑くんの着てる服はとても着る気にならないな。要人警護の警護官としてきたときだって、なんだ!こいつの服!とおもったよ。2週間ずっとそう思ってた、だってほかの特捜官みたいにカッコいいスーツ着てないんだもん。大爆笑だよ。」
エレ「税金でなんでも買えるきみが言っていいセリフじゃあないわよ。」
シャガール公子は黙ってしまった。
緑がエレオノーラに言った。
「ごめん。きょうはこの後 仕事だから出かけないと。」
エレ「ウフ、いってらっしゃい」
エレオノーラの自宅は超高層ビルの最上階にある。
外へ出るには玄関からターミナルエレベータでVIP専用駐車場まで降りなければならない。
ここは超高層ビルの周りにある芝生の公園のようになっている隣のビルとの間のあそび地みたいなとこである。
公園のようになっていてところどころにベンチがあり小高い灌木が植えられ小川があり、花壇や小さな果樹園もあってとてもきれいなとこだった。
緑はこれからエウロパ・リニアモータカーラインで一つ駅むこうの世界警察機構の本部ビルのあるリパ市駅へ出勤するとこだった。
エレオノーラの住んでる超高層ビルの1階2階がエウロパ・リニアモータカーラインの巨大な駅なのだ。
数万人の人が常時うごめいている。リニアラインでエウロパ連邦の他の駅へ乗り換える人たち。超高層ビルの上の階にあるアレクサンドロス本社、何百万世帯のマンション、あらゆる学校、教会、ホテル、スタジアム、遊園地、巨大ショッピングセンターなどへ行く人たち。
リケトニアの巨大地下街の遊興街へ行く人たち。すぐ隣にあるリケトニア空港へは地下街から行くのが一番近い最短距離。ビルの外のあそび地の公園へのんびり行く人たち。
シャガール公子がのんびりしてるのにつられて外のあそび地の公園にうっかり出てしまったけれど、
緑は出勤しなければならないので、外からリニアモータラインの駅にいけるかまわりを見渡した。
どうやらVIP専用エレベータにもどってビル内からリニアモータ・ラインの駅構内に出ないとすごい遠回りだった。(緑くんは決して最短距離だからと花壇内に入ってそこを横断したりはしない)
そこへエレオノーラの弟が出てきた。
この弟はエレオノーラより5歳位下だろうか? (普段エレオノーラの家が広すぎて余り出会うことはないが)
リュシス・アレクサンドロス。
今はアレクサンドロスファミリーの一員としてエレオノーラのコンツエルンの経営陣の重役をになう人物だ。
いまは亡きヨハネスⅡ・アレクサンドロス氏が家出した女子学生だった少女売春婦を行きずりで買って、その結果生まれた男子で、産んだ少女は既に亡くなっている。死んだ父親も認知してないし、祖父のヨハネス1世・アレクサンドロス氏も認めていないが、エレの行ったDNA鑑定で弟と判明し、エレオノーラが孤児院から引き取った少年である。
エレオノーラはこの弟を溺愛している。
たった一人の弟だからだ当然だろう。
弟についてエレオノーラものんびり珍しくビル外の公園に出てきた。
弟と二人で談笑している。
エレオノーラの前に公園のレンガ道があり、その道はとなりの超高層ビルへと続いている。
隣の超高層ビルはリケトニア公国の民放テレビの『リケトニア民放』のビルだった。
そのテレビ番組に出演していたらしい有名人がビルからでてきてレンガ道をリニアラインの駅にむかって歩いていた。周りにはおおぜいの若い女性がキャーキャー言いながら取り巻いていた。
往年の天才サッカー選手として高名なロド・ゴンザレス氏だった。53歳だが独身で大変なプレイボーイとして有名だった。
エレオノーラと弟のリュシスの前を歩いていく。
エレオノーラはないことにサッカーボールを左足で蹴っていた。
みごとなボールさばきである。エナメルのハイヒール履いてるのに・・・・
トーントーントーンと高く蹴った後、やにわに空中でボールを飛び上がってキックした。
ボールはまっすぐ、前方のロド・ゴンザレスに向かって飛んでいき、彼の後頭部に激突した。
つんのめって膝を着くロド・ゴンザレスに、やにわにエレオノーラが
「きゃ~~~~すいません~~~」
と聞いたこともないような、甘ったるい声を出して、ロド・ゴンザレスに駆け寄った。
「ごめんなさい~~~ぜんぜんサッカーなんかしたことないのに、弟のサッカーボールをちょっと蹴ったら、いきなりへんなとこへ飛んでって。お怪我がありませんか?」
ロド・ゴンザレスは
「大丈夫ですよ。美しいレディー」
と、エレオノーラに駆け寄られて、逆にうれしそう・・・・
エレ「あの~~お詫びがしたいですぅ~~~」
ロド・ゴンザレス「では、僕のおごるワインでも付き合ってくれるのがお詫びということで、いかがですか?素敵なレディー」
エレ「きゃ~~~♪ほんとですか?あなたのような魅力的な男性におごっていただけるなんて光栄ですぅ」
二人は、そのまま、リケトニアの巨大な地下街へ消えていった。
弟のリュシスは「ふっ」というとそのまま、VIP専用エレベータで最上階のエレオノーラの家に帰っていった。
一ノ瀬緑とシャガール公子は目が点になって、あんぐり口をあけて、その場に固まっていた。




