第4話
チュンチュン。
「ん、はあー。」
雀の鳴き声とともに、僕はベッドから起きた。昨日はいろいろあって、家に帰ってからの記憶はないが、自分の服装が、パジャマ姿だったし、どうやら、ちゃんと風呂には入ったようだ。
(しかし、昨日は本当にいろいろあったなー。)
そんなことを思いながら、冷蔵庫から、缶ジュースを取り出し、ふるたぶを開けた。プシュッというふるたぶが開く音とともに、
僕は一気に飲みほした。
ピロリン。
ソファーに座って、ニュースを見ようと思ったところで、メールがきた。宛先は、富山さんからだった。
(なになに、「見せたいものがあるから、今日の9時に妖怪探偵社に来い」か一体何だろうか?まあ、行けば分かるか。)
僕は、すぐに私服に着替えて、軽く朝食を取ってから、妖怪探偵社に向かった。妖怪探偵社に続く路地裏は、能力者ならどこでもいいらしく、近くの路地裏に入るとすぐに竜のいる場所に抜けられた。
そこからは、歩いて数分で、目的の探偵社についた。
あまりにも早くたどり着いたことに不思議に思いながら、僕は、妖怪探偵社に入っていった
(本当に、昨日の妖怪探偵社か?)
入ってすぐに、昨日はなかったはずの奥の部屋で30人くらいの人たちが、電話の応答をしながら空いた手で、パソコンを打つ姿が目に映り、ふと、そんなことを思った。
「お、時間ぴったし。さすがは元サラリーマンだね。」
しばらくして、富山さんが出迎えてくれた。
「あのー、彼らは一体?」
ふと、疑問に思ったことを聞くと、富山さんは笑顔で答えた。
「ああ、彼らかい。彼らは、命令メールを送る、探偵社の受付員たちだよ。」
と、富山さんは笑顔で答えてくれた。
「じゃあ、彼らが、僕達に命令を送っているんですね。」
「そういうことだよ。」
プルル、プルルル。プル、プルル
「おっと、失礼。」
そう言って富山さんは、電話を取った。
「はい、もしもし富山です。あ!佐々木さん。はい、はいはい。え、あいつの武器、復元できたんですか。あ、はい。ありがとうございます。」
ピッ!
そう言って、富山さんは、電話を切った
「今の電話って、なんだったんですか?」
電話を切って、しばらくして、僕は聞いた。
「ああ、今の電話は、僕の友人が使っていた、武器の複製が、今日できたことの連絡だよ。さて、ここにいるのも、受付の邪魔になるし、そろそろ、目的の場所に向かうよ。」
僕の質問に、富山さんは答えた後、富山さんは僕を連れて、階段で、2階に上がった。
2階は、仕切られた部屋は一つもなく、ホール会場のように、大きくひらけていた。そして、いたるところに、ガラスケースに入った多種多様の武器が、壁中に展示されていた。その光景に、口を開けて、驚くことしかできなかった。
「驚くのはまだ早いよ。」
そう言って、富山さんは、自分のポケットから、リモコンを取り出して、押した。
ピッ!
リモコンを押す音が聞こえたと同時に、ゴゴゴという音とともに、床から、ガラスケースに保管された武器がつぎつぎと、でてきた。ひらけていた2階は、数分ののちに、周りが武器しか見えない光景に、変わってしまった。
「一体何種類の武器が保管されているんですか?」
ふと、この光景に対してこの疑問が思い浮かんだ。
「まあ、ざっと二千種類かな。」
富山さんは、そう答えた。
「見てのとおり、君に見せたかったのは、この武器庫だ。そして、君に見に来てもらったのは、ここの中からひとつ、気に入った武器をもっていってもらいたかったからだ。」
「ええー!」
そう付け加えられた時には、ただ驚くことしかできなかった。
「本当に、武器をひとつもらっていいんですか?」
僕は、確認のつもりでもう一度聞いた。
「ああ、持っていってくれ。それに、戦うような場面に陥った場合に、武器無しで、一方的に殺される方が困る。」
富山さんは、笑いながら、そう答えた。
(うわー、この職場、生死を争う場合が、あるのかよ。)
話を聞いている途中で、そんなことを思ったのは、内緒にしておこう。というか………
「そもそも、どうやって選べばいいんですか?」
そもそも、まわりが武器だらけの中、どうやって、武器を選べばいいかなんて、はっきり言ってわからない。
「どれも、素晴らしい武器だし。適当に目を閉じて、直感で選ぶのは、どうかな?」
(なんて、適当な。)
ふと、そんなことを思ってしまった。でも、確かにそうかもしれない。こんなにたくさんある武器の中から、たったひとつを選ぶのは、大変だ。だったら、自分の武器を、運に任せた方がいいかも知れない。
(結局、楽なほうに、逃げてるだけかもしれないな。)
そう思いながら、僕は、目を閉じて適当に指さした。指さした方向には、まがまがしく、見るものを圧倒させるような黒と紫で、造形された剣があった。
「あの剣をください。」
「了解。」
少し、不気味さは、あったものの、僕は黒と紫で造形された剣を選んだ。富山さんも、笑いながら、その剣をケースから、開けてそのまま僕に渡した。
「その剣はなんて名前にどうするんだい?」
剣を渡す時、ふと、聞いてきた。どうやら、名前を付けなければならないようだ。
(名前か。全然考えてなかったな。まあ、運に任せて手に入れた剣だしなー。あっそうだ。)
「運命の剣って意味の、ディスティニーソードっていうのはどうでしょうか?」
そう答えた時、富山さんは笑いながら、
「僕もいい名前だと、思うよ。」
一言そう言った。
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