vs殺戮ジェット
ブナシメG・アルマゲドンの装甲は反射板で構成されている。
その為、巨大化が終わった瞬間に攻撃を仕掛けたブレイカー達は悉くが反撃を受け、手痛いダメージを受けたのだが、難を逃れた機体もいくつか存在する。
ペルゼニアこと斬撃姫もそのひとりだ。
「まあ。ビームを跳ね返せるのね」
彼女は自室に専用のゲーム機を用意させ、傍らに従者を構えさせながら優雅にプレイしていた。
その表情に焦りの色は一切ない。
「ペルゼニア様。体力が半分を切りましたが……」
「ああ、心配はいらないわゼクティス。残っている機体の殆どはやってくることが大体わかったから」
だから、後は撃墜されないように上手く立ち回る。
幸いにもペルゼニアは相手が銃を構えてから反応するだけの反射神経があった。
同時に、思考もきっちりと張り巡らされている。
「それで、あの反射装甲はどういった特性だったかしら」
問われ、ゼクティスはその場で検索。
手早く詳細を纏めると、簡潔に主君へと伝えた。
「あらゆるエネルギー武器を反射する装甲のようです。ただ、それが機能している間は運動機能が50パーセント低下しますが」
「あら、そう。じゃあ今が狩り時ね」
ペルゼニアの機体にもエネルギー武器は装備されているが、本命はあくまで宿敵が使っていたのと同じ実体剣。
つまり、彼女の機体は反射の影響をほとんど受けない。
「他の機体は標的をブナシメG・アルマゲドンから変えているようです」
「いいと思うわ。勝てない敵を放っておいて、自分が生き残る手段ですもの」
ゆえに否定はしない。
だが、ペルゼニアには自覚がある。
己が支配者であり、淘汰する側であることを、だ。
「じゃあ、あの大きなブレイカーは私が頂くわね」
ペルゼニアが駆るブレイカー、『殺戮ジェット』のデュアルアイが赤く輝いた。
姿はやはり宿敵であるスバルが愛用している獄翼に似せているが、その性能はより尖っている。
獄翼はある程度遠距離の相手にも対応できるよう、銃や盾を準備していた。
それに対し、ペルゼニアはあくまで加速と剣だけで勝負するつもりでいる。
これは様々なブレイカーを動かした結果、彼女が最も相性がいいと判断したからだ。
「気持ちいいのよね。相手をぶち抜いて、叩いて、こてんぱんにしてしまうのは!」
腰を落とし、画面越しに相手を認識。
ドリルが先端についたボス戦艦目掛けて突撃していく。
当然、愚直にまっすぐ突撃したら相手も勘付くものだ。
ブナシメG側もこちらが刀を持っているのを確認したのか、弾幕で応戦。
反射装甲をオフにし、代わりにミサイルを乱射。
「あら、そんなのでいいのかしら」
殺戮ジェット目掛けて飛んでくる弾道は、追尾してきている。
だが、限界まで尖らせた殺戮ジェットの加速力はミサイルの雨嵐の中、迷うことなく突撃していった。
「そういうの、見え見えだから面白くないわ」
命中する直前のミサイルを、ギリギリの距離で回避。
それを何度も繰り返し、殺戮ジェットはブナシメG・アルマゲドンへと向かっていく。
『げええええええええええええ! 弾幕を華麗に避けながらブナシメGに突撃していくブレイカーがいるぞ! てかはっや!』
「ゼクティス。実況の声が五月蠅いからミュートにしてちょうだい」
「かしこまりました」
赤猿の声は無残に消された。
「というか、速いのかしら。これでも安全運転だと思うのだけど」
「コメントを見る限りでも、かなり速いと言われていますね。確かにペルゼニア様の殺戮ジェットは機動力重視ですが」
だが、機動力が高いと言っても限度がある。
スバルも機動力を活かす戦いを好むが、殺戮ジェットのそれはあくまで機動力しかない。
その他のステータスを一切考慮されていないのだ。
また、速度重視すぎるとプレイヤーの意図しない動きを暴発しやすい。
だからこそ速度とバランスの兼ね合いが非常に重要視されるのだが、ペルゼニアは一切無視していた。
「凡人の意見なんてどうでもいいわ。私はただ、私がハッピーになるために機体を組んだのだから」
「それで正しいかと。ペルゼニア様がお望みのままに」
「ありがとうゼクティス」
その言葉に機嫌を良くしたのか、ペルゼニアは鼻歌混じりに操作し始めた。
「じゃあそろそろフィニッシュといきましょう」
誕生日の歌に合わせ、ペルゼニアは歌う。
「アンハッピー、トゥーユー」
ブナシメGと接触。
刀で装甲をめった切りにして、ダメージを与えていく。
「アンハッピー、トゥーユー」
敵の巨大戦艦が火花を散らす。
装甲は切り落とされ、各装甲が爆発した。
この間にも、殺戮ジェットは縦横無尽に動き回り刀で切り刻んでいく。
「アンハッピー、ディア、ボーイ」
気持ちよく、それでいて綺麗なソプラノが奏でられた。
送りたい相手は見ているか知らないけれど、彼を精一杯意識して構築した機体だ。
だから気持ちを込めて、彼に送ろう。
相手は彼ではないけど、この殺意を込めたいのは彼だから。
「アンハッピー……」
ブナシメGの真上へと飛翔。
刀を両手で握りしめ、そのまま急降下!
「キル、ユー」
ブナシメGが縦に一閃された。
巨大なドリルは装甲と共に綺麗に割れ、爆風と共に散っていく。
爆炎の中から飛び出し、殺戮ジェットは刀を握りしめたまま近くの敵を探し始めた。
「ああ、やっぱり大したことがないのね」
「ペルゼニア様。残りは20機を切りました」
「あら」
こうしている間にもうそんなに参加者が減っていたのか。
結果的にブナシメGは倒したが、他の敵が見えていなかったのはあまり宜しくない。
内心で密かな反省をしつつも、ペルゼニアは次の敵を探す。
「確か10機になるまで殺し合うのよね」
「はい」
「ふぅん」
周囲の状況を確認する。
どれもこれも体力ゲージが殆どない。
どうせなら即座に殺せるような雑魚ではなく、体力が余っている奴にしたいものだ。
その方が『遊べる』。
「ああ!」
そうやって観察して、見つけた。
体力が比較的余っているブレイカーを。
「いたわね。それじゃあ、遊びましょう?」
殺戮ジェットのウィングから青白い光の翼が噴出した。
今度は左右に刀を握りしめ、二刀のコンボで襲い掛かっていく。
相手の名前に興味はないので、確認はしない。
ただ、非情にカラフルな機体なので少し目につく程度か。
「シグナル・ザンですか。最初海底で目立った戦いをしていたプレイヤーですね」
「あら、そうなの」
じゃあ少しくらいは楽しめるだろうか。
目標は10機になるまでにシグナル・ザンを撃破する事に定めつつ、ペルゼニアはぼんやりとそう考えた。




