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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
プリンセスにおしつぶされて
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vsカジキ・ポセイドン

 カジキ・ポセイドンは水中戦において最強だ。

 ゆえに、ランダムステージが機能している状況で海の戦場を引く事が出来れば、それは有利なアドバンテージとなる。


「運はワシにあるっちゅうことじゃい!」


 このバトルロイヤルに参加したカジキ・ポセイドンのパイロット――――登録名『イカロス猟師』もまた、この状況を自身の有利な戦場と認識していた。

 ステージが切り替わるまで1分程度だが、その時間で可能な限りアドバンテージを作る事が出来れば、決勝リーグ進出も可能であると考えている。


 だが、ここで誤算が生じた。

 近くにいたプレイヤーが、こちらのミサイルを切り落としたのである。


「ああ!? なんじゃ、そりゃあ!」


 刀で華麗にミサイルを切断する様は、よく創作物に出てくる『強すぎる侍』を豊富とさせた。

 急ぎ、相手の名前を確認する。

 シグナル・ザン。

 聞いたことがない名前だった。

 少なくとも、有名プレイヤーではなさそうだ。


「信号機みたいなカラフルな配色している割にはやるのぅ! ワシとカジキ・ポセイドンとやりあう力はあるっちゅうことじゃな!」


 ゲームのシステム上、ミサイルを刀で切断することは可能だ。

 だが、そのタイミングは極めてシビアである。

 見たことろ、敵は素早いミラージュタイプ。

 本来なら回避行動をとるのが正解だろうに、わざわざ刀で捌くのを選択したということは、それだけ技量に自信がるということだ。


「お前さんの近くにおったらやばそうじゃな。じゃがのぅ!」


 イカロス猟師の辞書に撤退はない。

 少なくとも、海の中では攻めあるのみだ。


 カジキ・ポセイドンにイカロス猟師の闘志が宿る。


「大物が出て来よったら、即座に仕留めるのがワシの猟師としてのプライドじゃい!」


 カジキ・ポセイドンがシグナル・ザン目掛けて突進する。

 今度はミサイルではなく、頭部先端についている槍だ。


『おおっと、カジキ・ポセイドンが仕掛けた! ミサイルを切り落とした侍ブレイカー目掛けて一直線! 早い段階で仕留めた方がいいと判断したか!?』

「当然じゃ! 全力で行ける時に戦うに限る!」


 赤猿の実況に乗せられ、イカロス猟師は吼える。

 シグナル・ザンは刀を構えたままこちらを睨んでいた。

 どうやら逃げるつもりはないらしい。


「いい覚悟じゃ! じゃがこの攻撃、ただの突進だと思ったらあかんぜ!」


 カジキ・ポセイドンは海中ナンバー1の速度で突進。

 シグナル・ザンの刀に正面からぶつかっていった!


 激突!


 互いの矛が激突し、衝撃がバイブレーションを通じて伝わってくる。


「あん?」


 だが、そこでイカロス猟師は気付く。

 暗い深海ステージなので細かい造形は確認できなかったが、近くでぶつかってみてようやくシグナル・ザンに違和感がある事に気付いた。


「このブレイカー、なにを元に作ってるんじゃ?」


 ブレイカーズ・オンラインはカスタマイズ性の高いゲームだ。

 やろうと思えば装甲をアレンジすることで見た目を誤魔化すことも可能だが、それにしたって解せない。

 なぜなら、


「ミラージュにしては、ちょい大きくないかのぅ!?」


 更に馬力もある。

 機動力が高いミラージュタイプの外見だと思っていたが、この機体は間違いなくパワータイプだ。


「いかん!」


 近づきすぎている。

 それにステージが切り替わる時間が、刻一刻と迫っていた。


 一旦、距離を取る。

 深海ではカジキ・ポセイドンの速度に追いつける者は存在しない。

 一度距離を放してしまえば、こちらのペースだ。


 そう考えて離脱するも、その寸前にシグナル・ザンが行動をとっていた。

 片手で刀を握りしめ、空いた手で腰を叩く。

 装填されていたナイフが飛び出し、カジキ・ポセイドンの装甲に命中!


「おわぁ、なんじゃそりゃ!」


 エネルギー機関銃のような牽制ではない。

 ナイフによる切りつけダメ―ジを受けた。

 しかも格闘動作無し。

 実体剣によるダメージは弾丸のそれと比べると、手痛い。

 これを最小限の動作で決めてきた。


 想定外のダメージを受けたカジキ・ポセイドンが怯む。

 海底における超速度を出す前に受けたダメージは尾を引きずり、体勢を整える前にシグナル・ザンは動いた。


 片手に握った刀による激しい乱舞が繰り出される。


 一撃。

 二撃。

 三撃。

 そしてコンボの絞めに蹴りを放つ!


「おおう!?」

『海底のカジキ・ポセイドンに先制を入れたは侍ブレイカー、シグナル・ザン! 信じられねぇ、しかも格闘戦だぜ!』


 体力ゲージが大きく削られる。

 水中戦に拘ってきたイカロス猟師にとって、受け入れがたい状況だ。


 だが、認めなければ勝てない。


「ワシの想像以上の大物のようじゃのぅ! こりゃあ海の上に陣取った甲斐ありじゃ!」


 今更だが捕捉しよう。

 イカロス猟師は今、船の上で大会に参加していた。

 高性能無線機を用いて、海の上から参戦していたのである。

 しかもただの船ではない。

 長年使いこんできた、自身の漁船だった。


 彼は本物の猟師である。


 なんでそんなことをして参戦したのかというと、


「ワシは海が大好きじゃ! そしてブレイカーズ・オンラインも大好きじゃ! だったら海でプレイしたい! 海ってのはすごいんじゃ。陸では絶対に起こらないようなトラブルが起こる。だからどんな時でも平常心が大事なんじゃい」


 こうして独り言をぼやくのも己の平常心を保つため。

 心の中でしまい込むより、大声で叫ぶ方がすっきりして頭が気持ちよくなる。

 少なくともこの猟師はこう考えていた。


「ワシのベストプレイは、海の上でこそ起こる」


 猟師の目つきが変わった。

 海底ステージがそろそろ終わる。

 これからは激しい猛攻に晒されることになるだろう。


 だが、自身の身と心は常に海とあり。

 人間は小さなプライドさえあればいくらでも戦えるのだ。

 

『海底ステージが切り替わる! カジキ・ポセイドンは大丈夫なのか!?』

「もちのろんじゃい!」


 背景が切り替わっていく。

 海底の暗い青から、快晴の青空へ。


『さあ、海での戦いはできるだけ避けてきた参加者も多い筈! ここからが本当の戦いか!?』


 現在の状況を確認する。

 参加者100人の内、脱落者はまだいない。

 赤猿の言うように、海の中では無理をしないで時間を潰す作戦に出た者が多かったのだろう。


『そしてカジキ・ポセイドンは得意の海底ステージでアドバンテージを作ることはできなかった! なんとか切り返すことはできるか!?』


 海の世界が終わる。

 次に広がったのは、広大な砂漠と青空のステージだ。


『今度のステージは砂漠地帯。障害物は少ない代わりにレーダーの範囲が狭いぞ! 周りの状況を何時もよりしっかり確認する必要があるな!』


 苦手な海から解放されたブレイカー達が、一斉に動き出した。

 赤猿がステージの解説を進める間、ステージには激しい爆発音が響き渡る。

 まさしく戦場が始まったのだ。


「お祭り騒ぎじゃのぅ」


 周囲が元気になったのを見て、イカロス猟師は不敵に笑う。

 眼前にはいまだにシグナル・ザン。

 どうやらこのままこちらを撃破するつもりのようだが、そうはいかない。


「まだゲームは始まったばかりじゃい。こんな序盤にくたばってられん!」


 ゆえに、ここでとるのは逃走。

 海の上では漁をする身だが、時としては自分自身が捕食される側に回ることがある。

 まさに今の状況にぴったりだ。


「あばよぅ! 生き残っとったらまた戦おうなぁ!」


 カジキ・ポセイドンが地面に体当たりする。

 全力で行われたそれは、地面の中を抉り、その機影の姿を完全に眩ませてしまった。


『おおっと、カジキ・ポセイドン! この砂漠ステージでは自身の得意である海がないからか、地中の中に身を隠したって、そんなことできんのかぁ!?』


 これができるのだ。

 地面の中にも、空洞を意識したのか活動スペースはある。

 ただし、この地中の世界で生きていけるのは限られた武装を装備しているブレイカーだけだ。

 しかもある程度小さくないと胴体から上は飛びだしてしまう。


 人型ではない、カジキ・ポセイドンだからこその抜け道だった。


「悪いのぅ。じゃがこれも勝負じゃ」


 とはいえ、これも砂漠ステージが続いている間だからこそできる荒業だ。

 次のステージになったら必ず攻めに転じて見せる。


 今はその為に、こっそり見学タイムと行こう。

 イカロス猟師は船の上で、豪快に笑い始めた。

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