戦国城塞NO・ブ
城塞、NO・ブから放たれたビーム砲は無数に散っていた。
ポリーンはそれを刀で弾くことに成功したが、いまだに危機は終わっていない。
「まだ来るぞ!」
「味方まで落とすつもりかよ!」
愚痴りながらも操縦桿を握り、回避運動に徹する。
NO・ブのエネルギー砲は家紋から無数に発射されていた。
その軌道は見境なしに思える。
当然、周囲に飛ぶ味方機も撃墜されてしまうと予想するが、
「いや!」
後部座席からカイトは見る。
敵の戦国ブレイカーが自らエネルギー砲に向かっていくのを。
装甲に着弾した瞬間、エネルギーの矢は弾かれ、ポリーンへと向かっていく。
「アイツら、城のエネルギー砲を反射するぞ!」
「なに!?」
仰天し、周囲に目を配る。
回避した筈のエネルギーは戦国ブレイカーが自らぶつかり、反射することで残ったまま。
それらは消えることなく、ポリーンを追い続けている。
「こっちだけ追い続ける殺人マシンかよ」
「ずるい!」
「よくわかりませんが、けしからんですな!」
ミズキやアガキチが憤慨するも、スバルとカイトは文句を口にするよりも前に、対処法を思考。
どうすればこの状況を掻い潜れるかと、頭を働かせた。
「スバル、速度はこちらが優位でいいな?」
「勿論。絶対に追いつかせないさ」
「よし」
頷き、カイトは続ける。
「反射する装甲、城もついてると思うか?」
「自分が出した攻撃だから、ついていてもおかしくないと思う」
「よし」
再度頷いたところで、カイトは最後の問いを投げた。
「奴に効きそうな武装は残ってるか?」
「刀とカイトさんがある!」
「いい解答だ。悪くない」
自分も使える武器だと認識されているのに気を良くしたのか、彼はやや上機嫌に結論を出す。
「ぶちかましてやれ。全速前進。他は目もくれるな」
「かしこまった!」
逃走の姿勢から一転。
ポリーンは旋回し、エネルギー砲と戦国ブレイカーへと突っ込んでいく。
「わざわざ体当たりしに行く必要はないでしょう!?」
「ある。それしか手がない」
悲しいが、今の有効打はすべて接近戦に限られている。
獄翼の時から続く、最悪の状況だ。
ただ、なんの因果かは知らないがスバルとカイトはこういう状況に慣れている。
「心配するな。最初から勝ちの目はこれしかない。だったら他を無視するのが手っ取り早いだろう」
「そのまま放っておいてくれる敵がいたらとても優しいですがね!」
皮肉を込めて言うも、スバルとカイトは不敵な笑みを崩さない。
「放っておくしかないんだ。速度はこっちが上なんだからな」
「フルパワーでいくぞ!」
直後、ポリーンから光の翼が広がった。
巨大な青白い発光は翼を象り、背部に爆発的な加速を生じさせる。
『うお!』
城で自転車を漕ぎながらポリーンを見ていた狐も、この加速には目を疑った。
一瞬で戦国ブレイカー達を素通りし、しかもそのまま置いて行っている。
元々、速度では適わなかった。
だがこうも易々と追い抜かれてしまうものなのか。
エネルギー砲を反射させようにも、間に合わない。
『ならばその刀、受け止めるまで!』
アルマガニウムの恩恵を受けたポリーンを素早さでやり過ごすことはできない。
図体はNO・ブが数倍上だ。
ならば馬力で勝負するしかない。
『皆の者、ノブヒコ様の居城を守るのだ! 足に力を入れよ!』
『応!』
戦国時代の家臣たちが一斉に吼える。
老人や若人も混じったそれは汗を流しながらも力の限り漕ぎ、NO・ブへと力を注いでいった。
『飛べぇ!』
戦国の城塞が跳躍する。
文字通り、地面を踏み、宙へと舞ったのだ。
「跳んだ!?」
「それがどうした」
「こっちだって飛んでるぞ!」
「なにせ天狗殿ですからな!」
城は跳躍するが、こちらは飛翔できる。
そのままのしかかろうと言うのなら、真下から刀でぶった切ってやろうではないか。
「そのまま真っ二つになりやがれ!」
切っ先を向け、ポリーンは跳躍したNO・ブへと突撃。
すると、手足を生やした城塞がその場で蠢いた。
「なに!?」
足が伸びる。
こちらに急接近したそれに怯みつつも、スバルは反射的に刀を足へと突き刺した。
「どうだ」
そのまま刀を握り、切り抜こうとした瞬間。
左右同時に影が迫る。
「離れて!」
ミズキが叫ぶ。
だがポリーンがその行動をとるよりも前に、こちらを追いかけてきた戦国ブレイカーが取り押さえてきた。
「がっ!」
コックピットに衝撃が走る。
激しい揺れで頭をぶつも、スバルは意識を保ったまま戦国ブレイカーを睨んだ。
「こいつ等!」
『30世紀から持ってきたブレイカーを甘く見ないでもらおうか。そちらが一瞬でも動きを止めたら、それだけで追いつくことができる。アルマガニウムなどに頼らなくとも、随一の性能を誇っているのだ!』
「だったら教えてやろうか」
笑みは崩さぬまま、コックピットのハッチを開ける。
「え!?」
「なにをする気なの!?」
唐突に解放され、ミズキとアガキチは戦慄する。
背後から羽交い絞めにされたこの状況下で自分たちの姿を外に晒すなど、自殺行為でしかない。
危機感に支配されたふたりだがしかし、押し退けて前へと出た超人がひとり。
「ここまでくれば、登れるよね!?」
「当然だ」
「よし、最終兵器投入だ」
外へと出たカイトは自信満々な表情でNO・ブを見上げる。
爪先から鋭利な刃を出現させ、彼はその場で走り出した。
「カイトさん、GO!」
腕を伝い、刀が食い込んでるNO・ブの足の裏へと爪を向ける。
直後、戦国城塞の足の裏がくり抜かれた。
大きな穴を作り上げ、カイトは振り返ることなく内部へと侵入していった。
『ああ! あの化物、どうしてまだ――!』
「教えてやるよ。10世紀前の人間の諦めの悪さを!」
生きていることに疑問など抱かない。
彼は神鷹・カイトだ。
20世紀代の最強の人間なのだ。
彼に不可能などない。
あってたまるか。
同時に、彼の信頼を得た自分だって、やってやれない筈がない。
「俺の自慢を教えてやろうか。カイトさんと戦って、勝ったことさ!」
ブレイカー戦に限るが、立派な自慢だと思う。
だから未来のマシンが相手でも、気持ちで負けることはない。
ポリーンが刀を抜き、フルパワーで地面へと飛んでいく。
しがみついた戦国ブレイカーを地面へと叩きつけ、起き上がりに顔面へ拳をお見舞いしてやった。
「来いよ。お前ら全員怖くなんかないさ」
これまで戦ってきた強敵を思い浮かべ、眼前に想像する。
軽くおしっこを漏らしそうになった。
だが想像から除外すると、なんてことはない。
「お前らの大将が俺たちの最終兵器にやられる前に、全員潰してやる。かかってきなさい!」
後ろから見たミズキは思う。
彼はやけになっている、と。
明らかに目の焦点が定まっていない。
アドレナリンが高まりすぎているのか、変なスイッチが入っているようにさえ感じた。
「あ、あの。君、少し落ち着いて」
「大丈夫。俺は今、超クール!」
「とてもそうは見えないけど!?」
「天狗殿、クールとはどういう意味ですかな?」
「強くてカッコいい!」
「なるほど。では天狗殿はくーる、ですな!」
「ありがとう!」
もうダメかもしれない。
ミズキは心の中で涙し、静かに諦めの境地へと達した。




