ウィーアー・エネルギー
2500年代のタイムマシーンの破壊に成功した。
不愉快だったイシナリ達の殺害にも成功した。
煩悩寺の変でノブヒコも生還している。
結果だけ言えば、ミツアキの望んだ未来に大きく近づいた状況だ。
後は未来で江戸時代を作り出す要因となるモノを排除すれば、基盤は整う。
「……基盤が整う、筈なのに!」
織田城でひとり、ミツアキは憤慨する。
自身の人格を植え付けたアンドロイドを自爆させたところまではよかった。
だが、タイムパトロール側の戦力をすべて潰すために戦力を投入した筈なのに、逆に全滅させられているではないか。
「これはどういうことか!」
恐竜型ブレイカーが撃墜される前に録画していた映像に指を突きつけ、叫ぶ。
「どうしてポリーンがこんな高出力で戦えるんだ!? おかしいだろう!」
『はい。確かにおかしいです』
律儀にコンピュータが答えてくれた。
他の人間に文句を共有したい気持ちだったので、丁度いい。
ミツアキは腹に貯まっていた感情を機械の音声にぶつけはじめた。
「私が出撃させたのは30世紀の最新ブレイカーだ! 間違いないな?」
『はい。仰る通りです』
「対して向こうは500年前の骨董品。しかも1機だけだ」
『はい。仰る通りです』
「では、なぜこちらが負けるのだ!」
『ポリーンから発せられるエネルギー出力が、モリマル戦に比べ大幅に増大しているのを確認しました』
だからそれが理解できないのだ、と言いかけたところでミツアキはある結論を導き出す。
「待て。待てよ。コンピュータ、確かあのタイムパトロールが連れてきた野蛮人は2000年代の新人類だと言っていたな」
『そのように予想し、情報を提供しました』
「ジェノサイドスコール前後の新人類覚醒期。その時期と言えば、アルマが二ウムがブレイカーの動力源として使われていたそうだが、まさか」
『はい。ポリーンの反応を調査した結果、アルマガニウムエネルギーを感知しました。恐らく、隠し持っていたアルマガニウムを使い、動力を切り替えたのでしょう』
25世紀でもそうだったように、30世紀でもアルマガニウムのエネルギー利用は禁止されている。
頭を抱えつつ、ミツアキは呟いた。
「アルマガニウム……まさかこんな形で持ち込みを許すことになるとは」
『いかがなさいますか』
「当然、破壊しなければならない」
ノブヒコの天下にアルマガニウムなど必要ない。
確かに無限エネルギーは魅力だが、アレを使ってしまっては面倒なことになってしまう。
23世紀で地球に襲い掛かる『大事件』はアルマガニウムを扱ったからこそ起きたのだ。
無限エネルギーで地球が覆われる前に素早く処理せねばならない。
同様に、後々落下してくるアルマガニウムを乗せた隕石も破壊する必要があった。
「ミストラル事件はアルマガニウムエネルギーを食らう宇宙生物を呼び寄せる悪夢だ。23世紀の人類はこれの悪夢からなんとか逃れたそうだが、ノブヒコ様の時代でわざわざ起こす必要はない」
まったく恐ろしい連中だ。
2000年代では知らないとはいえ、恐るべき怪物を呼び寄せる餌をさも当然のように使うとは。
「ポリーンの現在の位置は?」
『こちらにまっすぐ向かってくるようです』
「早期決着をつけるつもりか」
当然か。
向こうはたった1機のブレイカーしか残されていないのだ。
しかも無限エネルギーを手に入れ、そんじょそこいらのブレイカーでは相手にならない。
畳み掛けるならこのタイミングが適切なのだろう。
「望むところだ」
アルマガニムを搭載したブレイカーの力を始めて目の当たりにした。
正直、用意した戦国ブレイカーでは歯が立たないだろう。
エネルギーの質と出力が違うのだ。
だが、将来的にアルマガニウムを排除する為、ある物を用意してある。
「こんなに早く出番が来るとは思わなかったな」
切り札は使える時に使う。
勿体ぶって負けてしまっては笑い話にもならない。
しかしながら、切り札を使うには相応の準備が必要だ。
「コンピュータ。城の者をすべて動力室へ誘導しろ」
『畏まりました』
正面対決、望むところだ。
そちらが無限エネルギーでも、使っているのはあくまでブレイカー。
だったら瞬間的にでも同様の出力を出すことができれば、勝機はある。
その為の人員は、ノブヒコの家来という形で消費しようではないか。
「では、私も参ろう」
当然ながら、ノブヒコの天下を祈るミツアキもその礎になるつもりだ。
寧ろ、家臣を集めただけではどうにもならない。
誰かが実演し、導いてやらねば。
「敵影を発見次第、全戦国ブレイカー発進。できるだけ時間を稼げ」
『了解しました』
席を離れ、ミツアキはエレベーターへ。
地下を移動していくと、家臣が集まるべき動力室へと真っ先に辿り着く。
「ふっ、久々に戦に出る時が来たか」
動きにくい狐の衣を脱ぎ捨て、家臣の数だけ用意された動力変換機を見やる。
眼前に広がるのは無数の動力変換機。
これらすべてが一斉に起動すれば、瞬間的にもアルマガニウムに匹敵するエネルギーを叩きだしてくれる筈だ。
その装置の名は自転車発電。
30世紀の英知が生んだ、スペシャルテクノロジーだ。
走れば走るだけエネルギーは充電されるその仕組みは、まさに人類の努力が結晶となった素晴らしい文明といえよう。
この素晴らしいシステムが格安で入手できたのは最早天命と言えるかもしれない。
「ふふふ」
不敵な笑みを浮かべ、ミツアキは自転車に乗る。
これから織田家全家臣が一斉に漕ぎ、ひとつの敵を撃破すると想像するとワクワクが止まらない。
さあ、早く来い家臣たち。
「共にアルマガニウムからノブヒコ様の天下を守り通そうぞ!」
やけに気合の入ったミツアキの声が、動力室に虚しく響き渡った。




