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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
未来からの侵略者
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ウィーキャント・バックホーム

 炎上するタイムマシーン。

 木端微塵に吹き飛ぶタイムマシーン。

 どう見ても修復不能なタイムマシーン。


 目の前の光景を目の当たりにし、ミズキは混乱していた。

 

「あれ、タイムマシーン?」

「だね」


 きょとんとした様子で尋ねてくるので、スバルは不安そうに答える。


「あの、大丈夫?」

「あれ、私のタイムマシーン?」

「そうだけど」


 心なしか声に生気がない。


「壊れたのが私のタイムマシーン。ここは戦国時代。直せるわけがないし、新しいのを購入できるわけがない。じゃあつまり、帰れない」


 ぼそぼそと呟き始めた。

 面倒な気配を感じ取りつつも、スバルは恐る恐る尋ねる。


「あの。生きてれば、いいこと、あると、思うよ?」


 その発言はなんの慰めにもならないと自覚しているので、自然と遠慮がちになってしまう。

 だが、そもそもにして彼の言葉はミズキに届いていなかった。

 彼女は無言のまま気を失い、コックピットで倒れ込む。かなりショックだったらしい。


「敵のを奪えば帰れると思うんだけど」

『数々のアクシデントが重なり、ミズキの脳が事態を把握できなくなってしまったのでしょう。ここは一度落ち着かせるべきだと思われます』


 未来のコンピュータは冷静だった。


『それよりも、あの場に残っていたイシナリたちが気になります』

「どうして爆発したのかはわかる?」

『一瞬、内部で高エネルギー反応がありました。恐らく、こちらがブレイカーに専念している間、爆弾を持った何かに潜り込まれたのでしょう』


 レーダーの索敵を使い、周囲の生体反応を拾い上げる。

 タイムマシーンからほんの少し離れたところに人のマークが表示された。


「いた!」


 ポリーンを滑らせ、向かう。

 マークが点滅している場所には、木々に背を預けたエレノアがいた。


「エレノアさん!」

『ああ、スバル君。そっちは片付けたんだね』


 はにかみ、あっけらかんと答える人形女。

 

『いやぁ、やられたよ。こっちの身を守るのが精一杯だった』

「なにがあったのさ。カイトさんやイシナリたちは?」

『私が無事なんだからカイト君も無事だよ。今は考え事がしたいって言って引っ込んでるけどね。ただ、イシナリ達まで手を回すことができなかった』


 生き延びたノブヒコの歴史を止める者がいなくなってしまった。

 今後、上塗りされた時代の流れを修正しても、登場人物に欠員ができてしまう。


『敵の正体は知れたけど、ちょっと状況としてはあまり宜しくないかな。本拠地もやられたし』

「大丈夫さ。家ならここにある」


 ポリーンを指差す。

 獄翼で暮らした経験があるスバルとしては、生活面の心配はまったくなかった。


『私が言いたいのは、そのポリーンが壊れた時のことなんだけど? いかに私が優秀でも、ブレイカーは専門外なの知ってる?』

「そこを事件解決まで壊さないようにするのが俺の仕事でしょ?」

『……そう言われると、不安かな』

「どうして!?」


 これまで獄翼がボロボロになっていく姿は何度も見ているので、容易に想像できてしまうのが悲しかった。

 本人は自覚がないようだが、いかんせん実力がある分、無茶もしやすい。


『ともかく、この後どうするかが課題かな』

「今すぐ仕掛けるんじゃないの?」

『ノブヒコと敵がどこにいるのか、君にはわかっているのかい?』

「そんなもん、自分の城にいるんじゃないの」

『どうしてそう思うのさ』

「だって自分の家なわけだし。未来の奴がノブヒコに協力的なら、そこにいるのが一番自然なんじゃないの?」


 安直な意見であると思う。

 先の戦いでカイトの再生能力に異変が生じている手前、行動はなるべく慎重にいきたいというのがエレノアの本音だ。


『なるほど。参るのですね、天狗殿! 愚礼戸・織田・機矢洲瑠に!』


 ずっとポリーンにしがみついていたアガキチが興奮気味に語る。

 これまでかなりの加速で飛んでいたにも関わらずに無事だったことも驚きだが、スバルたちが注目するのは彼が口にしたよくわからない単語だった。


「グレート、オーダ、キャッスル?」

『そうです!』

「織田城じゃなくて?」

『あの狐めが来る前まではそうでした。しかし、奴はノブヒコ殿にもっと相応しいという名目で城を作ったのです』

「場所はわかる?」

『ご案内はできますぞ』

「よし」


 スバルは判断する。

 これは速攻勝負だ、と。

 ポリーンはアルマガニウムを取り込み、決戦用として機能している。

 ならば相手が体勢を整える前にすべてを終わらせるべきだ。

 幸いにも、未来ではアルマガニウムが使用されていない。生身の戦いになってもカイトとエレノアがいれば、まず負ける筈がないだろう。


「行こう。愚礼戸・織田・機矢洲瑠に!」


 結論を下した少年に、エレノアは渋い顔をする。

 だが彼女はその意図を口にすることは無かった。







 口は閉ざし、肉体を共有した男に問う。


 ――――君がダメだと言えば、彼は止める筈だよ。


 短い付き合いだが、蛍石スバルは勢いがある少年であることをエレノアは理解していた。

 だが同時に、勢いがありすぎるがゆえに、暴走してしまうこともある。

 誰かがうまくかじ取りをしてあげた方が、きっと彼の為だ。

 今、この過去の時代でそれができるのは他ならぬカイトしかいない。


『いや、それでいい』

『いいって君』


 神鷹カイトは再生能力が大きく低下している。

 現に爆発を至近距離で受け、さっきまでまともに喋れなかったのだ。自分と交代していなければ、もしかしたら死んでいたかもしれない。


『あいつが言う事にも一理ある。こちらはもう、今あるもので戦うしかない。変に時間をかけたら、ミツアキの思う壺だ』

『でも、君は』

『俺はいい。他の連中が上手く動くために無茶をするのが俺の仕事だ』


 20年以上の時間をかけて培ったスタイルだ。

 今更変えるつもりはない。


『それに、こちらがアルマガニウムを使ったのも向こうは知った筈だ。それに対抗する時間を与えるわけにはいかない』

『……あまり君に負担をかけたくないけど』

『一番負担をかけてる癖になにを言う』


 ミズキの話から察するに、アルマガニウムは未来では使えないらしい。

 どんな事情でそうなったのかは知らないが、これに頼るしか大量のブレイカーを単騎で倒す手段はない。


『その城とやらに向かって、ノブヒコとミツアキを潰す。とっとと始末をつけて、もとの時代に帰ればいい話だ』


 幸いにも速攻は得意分野だ。

 カイトも、スバルも。

 だからこちらに分があるとカイトは判断している。


『パツキンの先祖が場所を知ってるなら好都合だ。一気に攻めて、終わらせてやる』


 

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