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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
未来からの侵略者
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ジュラシック・ブレイカー

 タイムマシーンから飛びだし、即座に敵の位置を確認する。

 モニターに表示された地図を見ると、赤い点滅が3つほどあった。1つはここから遠く離れ、残りは接近してきている。

 しかもかなりの速度だ。


「アニマルタイプで速度重視……!」

「珍しいの?」

「一芸に秀でた機体が多いから、そこまで珍しいわけじゃないかな。問題なのは、俺が相手の性能を知ってるとは限らないことだけど」


 スバルの強みはブレイカーオタクであることだ。趣味で集めた知識が通用しない未来のブレイカーが相手となると、自然と勝てる算段は薄くなってしまう。

 そもそも計算する元の数値さえも知らないのだから当然だ。


「ただ、どんな武器を持ってるのかは知りたいけど」

『そろそろ肉眼でも見えてくる頃です』


 コンピュータが知らせると同時、モニターの映像に敵影が映し出される。

 翼を伸ばし、鉤爪のような足と巨大なクチバシを構えた飛行型ブレイカーの姿だった。

 以前、アキハバラで見たエスパー・イーグルの類かと思ったが、頭部の形状が異なる。


『モデルはプテラノドンかと思われます』

「戦国時代にどうして恐竜をセレクトしたんだよ!」


 自然と出た文句も虚しく響き渡るだけだった。

 プテラノドン型のブレイカーが突進してきたからだ。


「正面から突っ込んでくる!」

「捕まってて!」

『あい、あかりもうした!』


 スピーカーを通じて外から声が聞こえた。

 猛烈に嫌な予感がする。

 嫌々カメラをポリーンの胸部に向けると、そこには笑顔のまましがみついているアガキチの姿があった。


「アンタそんなところでなにしてるの!?」

『天狗様のご雄姿を見たいがゆえ、このアガキチはあんよにしがみ付いたままでございますとも!』

「ああ、もう! これだから何時の時代もアーガス家は!」


 アーガス・ダートシルヴィー。

 まだ生まれる前なのにも関わらずにディスられた瞬間だった。


「来てる! 来てるから!」


 そんなやり取りをしている間にも、プテラノドンは突撃してくる。

 両翼からそれぞれガトリング砲が出現し、こちらに向かって発砲してきた。

 スバルは頭を抱えるも、操縦桿を強く握りしめながら叫んだ。


「マニュアルだ! 荒っぽいから振り落とされるなよ!」

『御意!』


 マニュアルの単語を理解しているのかは怪しいが、アガキチはそのまましがみ付いている気だった。

 そうとなれば遠慮はいらない。

 人生の大半を費やして養ってきたテクニックと、最近叩き込まれた超人達の感性を頼りにこの場を切り抜けるだけだ。


 最大速度。最大火力。

 必要な物は揃っている。

 後は自分が何時もの力を発揮できれば、なんてことはない筈だ。


「未来のブレイカーが相手だから、どうした!」


 絶対に負けないとは言い切れない。

 だが、名前負けしてては駄目だ。その時点で負けを認めてしまう。


「こちとら2000年代の最強の人間を目の当たりにしてるんだ!」


 機体を回転させる。

 後部座席に陣取ったミズキが放り出されそうになるのをなんとか堪えるのがわかるが、気にしている余裕などない。


「本当に荒っぽいね、君」

「そういう風に調整してもらった機体だからね!」

「タイムパトロールではこんな操縦は習わないけど!?」

「自己流なんで勘弁!」


 言いつつもポリーンの軌道を僅かに下に逸らす。

 この間、ガトリングの弾は致命傷になっていない。命中したのは、精々装甲を掠めた程度だ。

 接触ギリギリのところでプテラノドンの真下へと潜り込み、そのまま回転の勢いを利用して鞘から刀を抜いた。

 モリマルから奪った装備だった。


「ぜぇい!」


 すれ違いざまにプテラノドンの胴体を切断。

 縦に割れた機械の翼竜はしばし宙に放り出され、放電しながら爆発。飛び散る装甲を気にしないまま、ポリーンは刀を握りしめる。

 加速を止めぬまま、2機目の機体に狙いを定めた。

 プテラノドンから僅かに遅れて突っ込んでくるのは、


「今度はトリケラトプスか!」


 盾にも似た巨大な頭部が目立つ4本脚の鋼の獣が猛スピードで突進してくる。

 角からは膨大なエネルギーが発せられており、それが本体を包み込んでいた。


『エネルギーフィールドを張っています。先程の機体とは違い、まともに体当たりしては確実に破壊されます』

「だったら!」


 恐らくプテラノドンの方は機動力を奪い為に突撃してきたのだろう。

 続けて突進してくるということはつまり、1機目はフェイクであることが定番だ。本命は次に控えるのが定石だとスバルは捉えている。

 その考えが未来でも通用するのであれば、既にその手は破っていた。

 1機目を機動力を落とすことなく倒しているのだ。スバルはそれを前提で動く。


「教えてやる! 未来で封じられたっていう、パワーをな」


 刀を振りかざす。

 背中の飛行ユニットから青白い光が噴出され、当時に刀身からも同色の輝きが灯った。


「なにこれ!? こんな機能、あの刀にあったの!?」

「つけてもらったんだよ!」

「いつ!?」

「カイトさんからもらった爪は2本。1個はコイツで、1個は刀の動力に組み込んでもらった!」

「ウソでしょ!?」

「俺がいた昔の時代では、これが案外強くて、そこらじゅうのヤバい連中が当然のように使ってくるんでね!」


 慣れたもんだった。

 だからこの後の動作も、躊躇いなく行える。


「パワー勝負、受けて立つ!」

「まともに当たったら破壊されるって解説されたのに!」

「機体同士ならね!」


 相手はアニマルタイプでも装甲とバリアを纏っている。

 ポリーンでまともにぶつかったら破壊されるのは、誰の目から見ても明らかだ。

 しかし今回はモリマル戦とは違い、極上の凶器を持っている。


 切っ先を突撃してくるトリケラトプスに向け、迎え撃つ。


「避けて!」

「大丈夫だから!」

「どうして言い切れるの!?」

「だってあの人の爪を貰ったんだから、負けるはずないでしょうが」

「その妙な信頼関係が怖いんだけど!」


 五月蠅い未来人だった。

 少しは下半身にしがみ付いたままくねくねしているアガキチを見習えと言いたい。

 彼に至ってはトリケラトプスの突進をまったく気にした様子はなく、ただポリーンの顔面だけをうっとりとした顔で眺めていた。


『おお、天狗様……なんと美しいお肌なのだ』

「ミズキさん、アガキチを見習ったら?」

「アレのどこに見習う要素があるの!?」

「少なくとも強心臓だと思う」


 言い終えた瞬間、切っ先とトリケラトプスが纏っているバリアが激突。

 刀の切っ先はバリアを突き破り、そのまま頭部を刺し貫いた。


「せぇりゃ!」


 刀身を切り替えし、そのまま縦に真っ二つ。

 離脱してからややあった後、トリケラトプスも爆発。


「後1機!」

『エネルギーレベル上昇を確認』

「なんですって!?」


 ミズキが狼狽えている間に、スバルはモニターで最後の機体を確認する。

 かなり突進した為か、このこの機体もモニターで表示できる位置にいた。


「こいつ」


 外見はティラノサウルスそのものだが、こちらは既に攻撃態勢に移っていた。

 大きな口を開き、その中からエネルギーランチャーを展開している。充電は、もう始まっていた。


「避けれるよね!?」


 ミズキが問う。

 回避の不可で言えば、勿論可能だ。相手が撃つ前に射線上から退けばいい。

 だが、


「ダメだ。タイムマシーンが射線上にある!」

「ええ!?」


 今、タイムマシーンを起動させる手はない。

 寧ろ、あそこには人間がいる。


「ぶっ放させるわけには!」

「どうするつもり!?」


 撃たせたらタイムマシーンが壊される。

 避けても壊される。先に壊そうにも、チャージが止まらない。

 だったら手段はひとつ。


「防いでから壊す!」


 射線の間まで加速し、着地。

 その場で刀を突き刺し、敵の攻撃に備えた。


「え、なにこれ」

「見てわからない?」


 ティラノサウルスの口から巨大なエネルギーが放出された。

 ポリーンは立ったまま、出撃前に取って行ったロングライフルを構える。


「避けようとしたらタイムマシーンにあたる。他の敵を倒してるんなら、後はアイツだけだ」


 だったら、


「確実に防いで、ぶち抜く!」

「刀でランチャーを防げて堪るかあああああああああああああああああああああああ!」


 未来のタイムパトロール隊員の切実な悲鳴が響き渡る。

 既に発射された光の渦が迫る中、早く逃げろと後ろからシートを揺らしまくってきた。

 だがスバルは動じない。

 狙うはティラノサウルスの口部のみ。

 ロングライフルの銃口の狙う先は光で見えない。


「死ぬ! 死ぬうううううううううううううううう!」


 刀の刃先に光が命中する。

 凶暴な光の流れは刃によって切り裂かれ、ポリーンの左右へと飛んでいく。


 同時に、光の勢いは弱まった。

 相手の口部が照準に見える。


「生きてる!? 私、生きてるの!?」

『落ち着いてください。我々は生存中です』

「ついでに戦闘中ですよっと!」


 と、のタイミングでトリガーを引く。

 巨大な銃身から放たれた弾丸がティラノサウルスの口部に命中。

 備え付けられたエネルギーランチャーが大破し、そのままティラノサウルスを巻き込んで大爆発を引き起こす。


「どんなもんだい!」


 一通り、襲撃してきた敵を倒してVサイン。

 得意げなスバルに対し、真後ろから観察していたミズキは汗だくだった。


「き、君もさ。結構化物?」


 少なくともタイムパトロールでもマニュアルでここまで戦える人間がいるなど聞いたことがない。

 彼らがいた時代は、ただの少年でさえここまで戦えるようになるほど過酷だというのか。

 恐るべし2000年代。


 圧倒的な機体パワーと、それを使いこなす少年を目の当たりにして腰を抜かすミズキだったが、この数秒後、彼女は今度こそ気絶することになる。


 何故ならば、戦闘が終わった後。

 外から攻撃が行われたわけでもないのに、彼女のタイムマシーンが大破したからである。

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