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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
未来からの侵略者
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戦国無礼華亜、モリマル

 タイムパトロールのブレイカーを一旦動かしてみたスバルの感想としては、『悪くない』の一言に尽きた。

 逆に言えば、獄翼のような特化した何かがあるわけではない。

 故に、この機体に評価を付けるとすれば、可もなく不可もなく、なのだ。

 もちろん技術者や組織のコストパフォーマンスの意図だってある。


 しかし、長い間獄翼という超性能の機体を乗りこなしてきたスバルとしては物足りなさを感じてしまう。

 実際、操縦桿を握りしめ、寺に陣取るブレイカーをモニターで眺めながらも思う。

 もしもこの機体がいつも使っていた愛機ならば、と。


 だが、その愛機はもういない。

 ないものねだりをしたところで、愛機がやってくるはずもない。


「ふぅ」


 一旦深呼吸。

 こうして未来の機体を動かせているのも奇跡のようなものだ。

 自分の操縦テクニックはあくまでこの機体が生まれる500年近く前のものなのだから。それが通用している時点で、ある種の感動すら覚える。

 だから、ここは誠意を込めてこう語りかけておこう。


「短い間だけどよろしくね」


 モニターに映る敵影を眺める。向こうもこちらを補足したのだろう。腕に取り付けられた弓のようなものをこちらに向けていた。


「ぱっと見た感じ、ここに来る前に見た量産機みたいだけど、動かし方から察するに誰かいるっぽいかな」


 久しぶりに乗るブレイカーだからか、独り言が止まらない。

 これから戦い合う興奮によるものなのか。単純にブレイカーに乗れて嬉しいだけなのか。

 どっちかは分からないが、熱が冷めないのはいいことだ。

 おかげでこうやって、まだ役に立つことができる。


 武装の一覧をモニターから選択。エネルギーピストルの名前を選択すると、白と青の一つ目巨人はピストルを手に取り、赤の敵影――――モリマルに狙いを定める。


 モリマルもまたこちらが武器を取ったのを理解したのだろう。

 弓の先端に光を募らせ、ビームを発射する構えに入った。


 しかし長い間ハイスピードバトルを得意とし、自分の領域よりも高速な世界を体験している身としては、その動作ですらスローモーションに見えた。


「遅い!」


 モリマルが矢を発射するよりも前に、スバルは引き金を引いている。

 銃口から発射された光の弾丸はモリマルの腕に命中。小さな爆発を起こし、腕に装填されていた弓を砕いた。


「よし!」


 上々の立ち上がり。

 先手で攻撃を成功させた喜びで、心の中でガッツポーズをとる。


『うぐ!』


 対するモリマルは揺らいでいた。

 破壊された弓はそのまま。攻撃を受けた腕だけがぶらりと垂れ下がってしまっている。


『おのれ、イシナリの手の者か!?』


 モリマルは吼えるようにして叫ぶも、すぐさま自身で訂正した。


『いや、イシナリは無礼華亜ブレイカーを知らぬはず……しかし、ノブヒコ様はこの場を私に預けてくださると仰った』


 ならば、この場に新たに現れたあの一つ目無礼華亜はやはり敵である。

 すでに攻撃は交わされ、 向こうもこちらを敵と認識しているのであれば、躊躇う理由はない。


『モリマル、参る!』


 損傷した腕を使い、腰の鞘から刀を抜く。

 刀の刃先に光が灯ると同時、モリマルの背中から赤い光が吹き出した。飛行ユニットが起動したのだ。


「うっ!」


 猛烈な勢いで飛びかかってくる赤い機体を前にして、スバル思わず怯む。

 とっさにエネルギーピストルの銃口を向け直し、モリマルに狙いを定めて弾丸を撃ち込んだ。 


『はっ』


 上空から刀を振り下ろし、モリマルは飛来。

 エネルギーピストルが襲いかかってくるも、それらは刃先から溢れ出る赤い光によってことごとく弾かれてしまった。


「嘘ぉ!?」


 これまで刀で弾く、という恐ろしい真似をしてあげたやつは結構いた。

 だが、モリマルが行なったそれは、少し違う。

 明らかに刀自体が盾の役割も兼任していた。あれがあるからこそ、躊躇いなしに突っ込んでいけたのだろう。


『せああっ!』


 気迫のこもった一撃が襲いかかる。

 ピストルは役に立たないと判断し、スバルを素早く武器を切り替えた。ピストルを投げ捨て、一つ目巨人はエネルギーソードを手に取る。


「この!」


 上から迫る光の斬撃を、エネルギーソードで受け止める。

 両者の光の刃がぶつかった途端、白と赤の激しい水しぶきが飛び散った。


『押し通る』


 モリマルの背中から伸びる光が勢いを増す。

 加速力で勢いをつけ、押しつぶして来るつもりだ。


「そうはいくか」


 ハイスピードバトルはスバルの得意分野だ。

 もちろん自分自身がハイスピードならいうことはないが、相手がハイスピードでもある程度の戦い方は会得している。

 エネルギーソードを持つ手はそのまま。もう片方の腕を掲げ、そこに装填してあったエネルギーシールドをその場で展開した。ちょうどモリマルの手前で光の傘がさされたような光景だった。


 しかしスバルの狙いは目くらましではない。

 彼はシールドを展開したまま、それを切り離した。


『なに!?』


 目くらましか盾を出したと思っていたモリマルは完全に不意を打たれた。

 切り離されたエネルギーシールドは光を消滅させぬまま、真正面にいるモリマルの胴体に接触。

 そのままモリマルの巨体を弾き飛ばす。


『うおおおお!?』


  思いもよらぬ衝撃を受け、モリマルはそのまま落下。

 森の中に倒れこむも、即座に受け身を取った。


「え?」


 その動作を見たスバルは驚く。

 巨大なブレイカーが受身を取る。それ自体はまだいい。

 できることはスバルだって知っている。

 だが求められる技量がものすごく高いのだ。

 スバルだって、カイトたちを取り込み、彼らの動きをトレースしたことがあるからこそ実現できる。


 しかし、モリマルは違う。

 明らかに違うのだ。

 さっき矢を破壊した反応を思いだし、確信に至る。


「コイツ、モーショントレースか!?」


 少なくともスバルのように操縦桿を握って、丁寧に動かしてるわけではないだろう。

 何かしらの裏技を使っているはずだ。


『何を言っているのかは知らぬが、まだ勝負はついていない』


 受身を取ったモリマルが起き上がり、再び一つ目巨人に襲いかかる。

 切り離したシールドは木々の中に落ちたままだ。拾い上げて、再び腕に装着させるような時間はない。

 同時に、速度のスペックはモリマルの方が上だ。


 正面から切りかかられては、さすがに分が悪い。

 そして最悪の事態はもう一つ。


『バッテリー低下』

「へ?」


 聞きなれないアナウンスがスバルの耳に届く。

 みればモニターの右端で、電池のようなマークが表示されていた。赤く点滅するそれをよく見ると、残り残量がほんのわずかになっている。


『出力を抑えて戦うことを提案します』

「え? え?」


 モリマルが迫る中、スバルは理解する。

 この未来からやってきた一つ目巨人。まさかバッテリーで動いているというのか。500年後の機体なのに。どうして自分たちがいる時代と同じようにアルマガニウムで動いていないのだ。

 いつもの調子でお構いなしに動かしまくった結果、ものすごく早い段階で警告が出てしまっている。

 

「敵が迫ってる時に、バッテリーの充電なんかできるかよ!」

『俺を使え。バッテリーもいらないからお特だぞ』


 すると、そんなスバルに助けの声が響いた。

 何度も聞いたことがある、頼れる相方の声である。


「カイトさん!」

『嫌な予感が変な形で的中したな』

「俺はどうすればいい!?」

『そのままソードを構えていればいい。あとは俺が仕留める』


 言ったと同時、モリマルが激突。

 再び刀とソードの刃が交差する。


「ぐぅ!」


 コックピットが揺れる。やはりパワーは向こうの方が上だ。

 まともにぶつかってしまえば、この貧弱バッテリーでは歯が立たない。悔しげに唇を噛み締めるが、その事実を受け止めた上でスバルは叫んだ。


「いけるよ!」

『上出来だ』


 瞬間、一陣の風が吹いた。

 風は一つ目巨人の巨体を一気に登り、そのまま腕を伝ってモリマルの腕へ。


『なに!?』


 信じられないものを見たリアクションを露呈したモリマル。

 そりゃそうだ。スバルだって最初見た時はとても驚いた。ある程度慣れた今だって、ギャグ漫画を読んでるような心境でなければ、とても受け止められたとは思えない。

 なにせ人間がブレイカーの巨体を一気に駆け抜け、そのまま敵機に乗り移ったのだ。

 しかも武器を構えているにも関わらず、平然とした顔でモリマルの顔面へと向かっているのだから恐ろしい。


『貴様、何者!?』

『山――――ああ、いや。好きに呼んでくれ』


 さっきからコイツはなにを口籠っているのだろう。

 そう思っているスバルだったが、決着はあっさりとついた。


 モリマルの頭部をカイトの爪が引き裂く。

 まるでバターをスライスするようにして切り落とされたモリマルは、悲鳴のひとつを叫ぶことなく機能を停止させた。

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