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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
51/193

vsみんなで

 BK-M-99223。通称、獄翼。


 開発者の日本人が『新人類軍め、地獄へ送られな!』と皮肉を口にしたことがその名の由来なのだが、開発者の独り言などいちいち記録しているわけでもないので、別に咎められているわけではない。

 このブレイカーは特殊だ。

 『SYSTEM X』と呼ばれる最新の同調装置を備えた貴重品で、開発コストも高い。

 ゆえに、日本では1機しか作成されなかった。


 それが今、ニューヨークの大地に降臨している。

 しかも5機。

 もし、開発者がこの光景を見たらあまりの光景に卒倒していたことだろう。


「純正アルマガニウムが力を解放したとでもいうのか!」


 相対するは、宙に浮くジャスティス。

 彼はツインアルマガニウムシステムから引き継いだ超高出力エネルギーを身に纏い、突撃してきた獄翼たちを迎撃しにかかる。

 だが、彼が纏うエネルギーのオーラは徐々に弱まってきていた。


「む!?」


 明らかに身体に集まるパワーが、さっきと比べて弱まっている。

 純正アルマガニウムの力かとジャスティスは予想するが、実際は違う。

 相対している5機の獄翼。その最後尾にいる蝶の羽を具現化させたマシンから放たれた鱗粉を身に受ける度、こちらのパワーが弱まっているのだ。


「なんだ、これは!?」

『教えてやんない!』


 意地悪な回答で迫る爪の獄翼。

 それに続き、スコップと刀のマシンも続く。銃と蝶の羽はあくまで後衛のようだ。


「ならば、正義の力でお前たちを一気に薙ぎ払う!」


 向こうがどんなチームワークでかかってこようが関係ない。

 なぜなら、正義は常に絶対的でなければならない。

 だったら勝利するのは自分だ。

 ジャスティスこそが勝者でなければならないのだ!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 自身に蓄積されたエネルギーを放出し、左右の腕を振るう。

 同時に、ジャスティスのオーラから巨大な腕が伸びた。


「例えそれがアルマガニウムの力を借りて生み出されたブレイカーだとしても、正義の力を以てすれば破壊も可能な筈!」


 ならばまとめて薙ぎ払う。

 正面から突撃してくる3機も、後ろで控えた2機も、全部まとめて。


「破壊だ!」


 左右から巨大な腕が迫った。

 瞬間、スバルとエイジはお互いを向き合い、無言で頷く。

 スコップと刀の獄翼が左右に移動した。互いに武器を構え、エネルギーで構築された巨大な腕に立ち向かう。


 直後、日本刀が右腕を。

 スコップが左腕を食い止めた。


「あ――――」


 驚きつつも、ジャスティスは見る。

 自身に迫る爪の獄翼を。まるでナイフでえぐりに来るかのようにして、正面から爪を突き付けてきた。


 避けるか、防御だ。

 2択を迫られる。

 より確実に防げる方を選ばなければ。

 だったら無傷で躱せる方だ。


 瞬時にそう判断し、ジャスティスは後退する。

 が、その背後に跳躍し、着地してきたのは銃を持つ獄翼だった。


『いいね。飛べるってのは』


 シデンが呟くと同時、獄翼は引き金を引いた。

 氷の弾丸だ。だが、生身のジャスティスからしてみればそれはあまりにも巨大な氷塊だった。

 それが無数に襲い掛かってくる。連射しているのだ。


「そんなもの、正義の前では砕ける! 壊れる! 無力!」


 振り返り、次々と飛来してくる氷塊を素手で破壊していく。

 だが、その瞬間にも真後ろからカイトが迫ってきている。エネルギーも蝶の羽の鱗粉を受けてダウンしていた。

 状況は明らかに不利。


「来い、新人類共!」


 しかしあくまでジャスティスは戦いの姿勢を崩さない。

 同時に、自分の勝利を信じていた。

 負ける可能性など、脳の片隅にも置いていない。


「勝負!」

『いつまでもお前に付き合ってられるか』


 呆れたように呟くと同時、カイトの獄翼が爪を突き出す。

 ジャスティスは全てのエネルギーを放出して爪に接触。


「おふぅ!」


 激しい衝撃が肉体を襲った。

 ツインアルマガニウムの強力なエネルギーにも耐える肉体が、悲鳴を上げていた。筋肉を切り裂かんばかりの勢いで襲い掛かる巨大な刃を受け止め、身体中の血管が浮き出ている。


「ふんぬ!」


 そのまま力任せに投げ飛ばし、爪の獄翼を宙へと放り投げた。


「ふははっ、見たか! 正義の力は折れぬ!」

『まだまだ元気だな』


 マリリスの鱗粉を受けて尚、この力。

 カイトは溜息をつきつつも、体勢を整えながら訴えた。


『悪い。仕留め損ねた』

『まだまだ終わってねぇよ!』

『その通り!』


 背後から更にふたつの巨大な鋼の巨人が接近してくる。

 ジャスティスは目先の敵にばかり気を取られていたが、エイジとスバルは隙だらけのこの状況を見逃していない。


『今度は』

『2つ同時だ!』


 スコップと日本刀が同時に突き出された。

 ジャスティスは瞬間、青ざめながらも力に任せてこれらを受けとめる。


『ほんっとうに元気だな!』

『その元気、もうちょっと世の中の為に使ってくれよ!』

「正義のために使っているので、問題なし!」


 だが、巨大なアルマガニウムの凶器を受け止めている腕は悲鳴をあげていた。

 出力はどんどん弱くなり、カイトを素手で受け止めたことでかなりの疲労が蓄積している。


「耐えろ、頑張れ! 正義の力は無限だ!」

『いい加減に、』


 背後から怒気を含めたカイトの声が響く。

 爪を伸ばし、スコップと刀を受け止めているジャスティスの脳天に叩きつけるつもりだった。


『しろ!』


 しかしジャスティスの予測は大きく外れる。

 カイトはなにを考えたのか、自身の爪を引っ込めたのだ。よって、ジャスティスの頭部には刃物ではなく、巨大なチョップがお見舞いされる。


「おぶ!?」


 当然、命中したら痛い。普通なら潰れていてもおかしくないだろう。

 しかし、そこはサイボーグ。ジャスティスは無事なミンチにならず、そのまま地面に激突してしまった。

 彼の身体からアルマガニウムの輝きが消えていく。


『やったのか?』

『光が抜けていく。恐らく、マリリスの鱗粉でアルマガニウムのエネルギーが抜けきったんだろう』


 だが、それにしたってタフすぎる。

 たったひとりで獄翼を4機も相手にしていたのだ。マリリスの援護がなければ、もっと苦戦していただろう。まともに相手をしていらと考えると、疲労を感じて仕方がない。


『本当にとんでもない野郎だったぜ。カイトの爪を受け止めて、俺たちのも生身で受け止めるんだしな』

『普通に戦ってたら、本当にまずかったかもね』


 エイジとシデンも同様の感想を抱いたようだ。

 この奇跡の瞬間がなければ、負けていたかもしれない。口だけではなく、力も確かに準備し、扱ってきた凄い奴だった。


『……こんな形でさえ、なければなぁ』


 スバルは溜息をつく。

 打倒新人類。ジャスティスは最後まで拘っていた。その為に非道なこともしたし、サイボーグたちも犯罪に手を出してしまった。

 もっと早く出会っていれば、味方になっていたのだろうか。

 自身の隣に立つ、XXXの新人類達と同じように。


『あまり同情はしない方がいい』


 すると、カイトは釘を刺すようにぼやく。


『前にも話したが、俺も、こいつ等も、全員ろくでなしだ。やってしまった事実は変わらない』

『でも、アンタは変わろうとした』

『こいつはそうじゃなかった』


 だからこの話はこれで終わりだ。

 スバルの手前、無残なやり方は避けたが、もしもこの少年がいなかったらきっとカイトはあのままジャスティスを真っ二つにしていただろう。

 自覚があるがゆえに、彼は強く言う。


『お前が応援したい奴を、素直に応援しろ。そうじゃなければ、あまり期待を抱かせ過ぎない方がいい。変な使命感を持つと、爆走する奴がいるからな。コイツみたいに』

『あの。ちょっとよろしいでしょうか』

『なんだ』


 真面目な会話をしているとき、マリリスがおどおどと挙手した。


『私たち、ずっとこのままなんでしょうか?』


 獄翼が5機、ずらりと並んでいるこの光景。

 半ば投げやりにやってみたものの、どうやって元に戻るかまでは一切考えていなかった。


『あれ、もしかしてみんなの獄翼って……コックピットないの!?』

『だって俺たちが動く時って、お前が動かす時だろ!』

『スバル君が解除してくれないと、こっちから解除できないよ!』

『スバルさん! 私、ずっとこのまま機械なんですか!? オイルって美味しいんですかね!?』

『知らねぇよ! 飲んだことないんだから!』


 勝った筈なのに、5機の獄翼は仲間割れのように騒ぎ出した。

 尚、純正アルマガニウムの輝きが再び灯り、彼らを元の姿に戻したのは、偶然にもSYSTEM Xと同じく5分後のことだった。

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