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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
50/192

vs挫けぬ心

 ジャスティスが飛んでくる。

 全身に高濃度のアルマガニウムエネルギーを纏いながら、スーパーマンのように飛行。そのままスバルが動かす自由の女神に突撃してくる。


『……くっ』


 高濃度のアルマガニウムをその身に帯びて身体が朽ち果てないのか、と突っ込む気力はない。

 寧ろその威力の方が問題だ。

 以前、彼はアキハバラで同じような高濃度のエネルギーを放出しまくる大迷惑野郎と戦い、大いに苦しめられた記憶がある。

 獄翼と自由の女神では機体性能が違うが、どちらでもまともに受けたらコックピットなど一瞬で吹っ飛んでしまうだろう。多分、痛みなど感じる間もなく。


 だったら選択肢はひとつだけだ。

 腕に装着している聖書の盾を構えつつも、女神は飛来してくるジャスティスから目を離さない。


「そんなシールドで防げると思うな! 正義のツインアルマガニウムシステム、そのスーパーパワーを受けて見よ!」


 笑いながらジャスティスが突進。

 接触する直前、スバルは素早くレバーを回す。自由の女神が瞬時にステップし、ジャスティスを躱した。


「なに!?」

『残念だったな。俺、避けるのは超得意なんだぜ!』


 なにせブレイカーズ・オンラインにおいては一度でもダメージを受けたら殆ど即死になるようなカスタマイズまで施してきたのだ。

 回避なら図体が大きい女神でも、それなりに動かす自信がある。ましてや相手が直線的に動いて来るなら、なおさら避けやすい。


「まだだ!」

『え』

「正義のUターン!」


 そのままどこかへ飛んで消えさることを期待していたのだが、淡い希望だった。

 通り過ぎた光のジャスティスはそのまま大きく弧を描きながら方向転換。今度は後方から自由の女神に狙いを定めた。


『アンタ、方向転換とかできるの!?』

「正義の力はただ叩きつければいいわけではない! それに、空を飛ぶのは男の子のロマンだ!」


 納得できちゃうのが悔しい。


『くそっ! なにかないのか!?』


 再度、回避をとりつつもスバルは懸命に他の装備を探す。

 が、一度探した後なのもあり、目新しい発見はない。敵のアルマガニウムの発生を無力化できる不思議機能がないかと期待してみたが、流石のアメリカ秘密兵器もそこまで万能ではなかった。


「逃げても無駄だ!」


 そんなスバルに追い打ちをかけるように、ジャスティスは宣言した。


「正義の塊となったツインアルマガニウムの力を得た今なら、お前がなにをしても追いかけ続けることができる! 散々正義を嘗めた屈辱、存分に晴らしてくれるわ!」

『別に嘗めてるわけじゃないんだけど!』


 襲い掛かるジャスティス。

 避け続ける自由の女神。

 際どいタイミングでも避け続ける技術はかなりのものだ。少年が得た技術は確かな物なのだろうと感心してしまう。


「……こりゃ、やべぇな」


 傍から見ていたエリックとマーティオは同じ感想を抱いた。

 蛍石スバルの意外な活躍は嬉しい誤算だったが、こうなってしまってはジャスティスが有利である。

 なにせ向こうはサイボーグだ。元々飛行も可能だし、そこにアルマガニウムのエネルギーも加わっている。

 対し、スバルは常に全神経を集中させて回避に専念しなければならない。巨大な自由の女神を動かし、機敏な回避運動を実現しているのはかなりの労力を割いている筈だ。


「このままだと命中するぞ。おい、マーティオ。奴を止める手段はねぇのか?」

「ねぇな。困ったことに」


 手段を探す為に観察をしていたわけだが、今のジャスティスを止める方法が思い浮かばない。

 力任せにマーティオが突撃しても、無駄死にになるだけだ。エリックで盗めるような代物でもない。


「出力を弱めれたらオレでもなんとかなるだろうが、問題はその発生源をアイツ自身が纏ってることだな」

「くそっ、どうすることもできないのかよ!」


 縦横無尽に駆け巡る光の弾丸。

 これらを避けているスバルも、そろそろ限界が近い。


『はぁ……はぁ……』

「息切れが聞こえるぞ、少年! せめてスピーカーは切っておくべきだったな!」


 真上から突撃してくる。

 スバルはそれを見上げ、避けようとするも、途中で思考が遮った。


『これは純正アルマガニウム。ブレイカーの爆発よりも何倍も強力な威力が込められていると思え』


 もしも今、ここで自分がやられたらどうなる。

 スバルの腹の中にはいまだに純正アルマガニウムがあった。

 ジャスティスは完全に逆上して忘れているようだが、ここで純正アルマガニウムが壊れたら、それこそどれだけの被害が出るかわからない。

 瞬間、結論を変えた。


 スバルは聖書の盾を天へと掲げ、ジャスティスの飛来に備える。


「受け止める気か!?」

「無茶だ!」


 怪盗たちもわかっている。

 純正アルマガニウムを壊されたら、どんな被害が出るのか想像もつかない。

 ただ、この状況だとどう足掻いてもスバルたちに勝ち目がないのだ。


「死ねぇ! 正義の前に!」


 聖書からエネルギーの盾が展開された。

 スバルは素早く出力をコントロールし、盾に全エネルギーを投入する。


 青白い盾が大きく広がった。


「そんな盾、粉々に砕いてくれる!」


 ジャスティスが盾とぶつかった。

 激しい稲妻のような光が発生し、街を光が包んでいく。


「うわ!」

「ぐ!」


 同時に、強力なエネルギーの突風が吹いた。

 怪盗たちは羽ごと吹っ飛ばされてしまいながらも、状況を必死に確認する。


「見ろ、意外と持ちこたえているぞ!」

「出来過ぎだ! 聖書の方がもたねぇぞ!」


 非情だが、マーティオの予想は当たっていた。

 コックピットには五月蠅い警戒音が鳴り響き、危険を示す赤いシグナルが点滅している。


『まだだ! 止まれ、止まれ、止まれ!』

「正義は止まらぬ! 正義は突き進むのみ!」


 コックピットからでも伝わる熱と圧迫感。

 押し負けようとしていることをひしひしと感じ、スバルは俯く。


「ばかやろう」


 すると、どこからか声が届く。

 通信ではない。周囲をきょろきょろと見渡すと、自由の女神の後頭部のカメラがソイツの姿を映しだしていた。


『カイトさん!』

「なに!?」


 声に反応し、ジャスティスも見やる。

 自由の女神の背後に、ぽつんと突っ立っている男がいた。

 POJに踏み潰された神鷹カイトだった。


「貴様、確かに正義の前に潰えた筈!」

「あんな重さじゃ俺は死なん。それよりも、だ」


 ぎろり、と自由の女神を睨む。


「バカが。お前だけでどうにかできない時は、俺たちを呼べばいいだろう。なにを情けない顔してやがる」

『え、なんでアンタこっちの顔見れるの』

「どうせそういう顔してるんだろう。どんだけお前の後ろに座ってきたと思ってる」


 悲しいことに、同居人はお見通しだった。


『だったら急いでコイツをなんとかしてよ!』

「呼べといっただろう」


 カイトも理解している。

 この恐るべき破壊の光を完全に無力化し、ジャスティスをするには自分の力を加えただけでは不可能だ、と。


「あのバカども、まだ寝てるようだからな。お前の腹のそれで起こしてやれ」

『起こしてやれって……』

「VRなんちゃらから俺を呼び出したのはお前だ」


 ゆえに、カイトは提案する。


「ひとりひとり同調してたらキリがない。全員で一斉にかかるぞ」

『でも、俺呼び出す方法なんて……』

「考えて理解できないんなら、腹の奥から叫びながらやってみろ。必死になれ」


 好き勝手にいってくれる。

 こっちだって十分必至だ。

 今だって、こうして食い止められているのが奇跡みたいなものなのに。


『う、わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!』


 だったら叫んでやろうじゃないか。

 全身からありったけの力を振り絞って。


「そうだ。必死になって呼べ。多分、そうでもしないと意識がない連中は来てくれないぞ」


 スバルの腹部が光り出す。

 それは凝縮していくと、やがてひとつの輝きとなって彼の肉体から飛びだしていった。

 コックピットからも抜けていき、外へと進出。


「これは!」


 ジャスティスが光を目撃する。

 その奥に存在する、ビー玉のような小さな結晶も視認した。


「純正アルマガニム! やはり正義の元にこそあるべき代物なのだ!」


 この時、ジャスティスは純正アルマガニウムがスバルの腹から自分の元へと都合よく移動してきたのだと解釈していた。

 だが、小さなエネルギーの結晶は別の願いを届けるために飛びだしてきたに過ぎない。


「待っていろ。今すぐ、その力を有効に利用して、あの連中を叩き潰す」


 言葉を発した瞬間、純正アルマガニウムが強く輝く。

 直後、ジャスティスの身体が見えない力によって強く弾かれた。


「おお!?」


 押し潰す勢いで降下した筈なのに、『押し戻された』。

 

「そんな筈はない! ツインアルマガニウムシステムの力は絶対だ! あんなふざけた盾に押し戻されることなど、ありえん!」


 自由の女神を睨む。

 既に聖書の盾はボロボロで、エネルギーも噴出しきれていない。

 あと一息で完全に破壊できたところだ。


 それを邪魔したのは、間違いなくあの輝き。

 純正アルマガニウムから発せられる、不思議な光の力に他ならない。


「まさか。正義よりも、そんな嘗め腐ったガキの味方をするというのか!? 純正アルマガニウムの崇高な力を、こんな形で!」


 純正アルマガニウムが虹色に輝く。

 虹色の輝きは別れていき、やがて5つの光となって散った。

 ひとつは自由の女神へ。

 他の4つはその周辺へと降り注ぎ、手足を伸ばして『巨人』の形へと具現化していく。


「これは!」

「いい!?」

「ウソだろ……」


 ジャスティスと怪盗は驚愕する。

 自由の女神が光と共に小さくなっていき、やがて漆黒へと染まっていく。

 背中から突起物が生え、腰には刀を携えた黒の巨人――――獄翼へと変化した。

 そして、周囲の4つの光もまた、持った武器はそれぞれ違うがまったく同じ姿の黒い巨人へと変貌する。


 ひとつは両手から爪を伸ばし、

 ひとつは脚部から6つの銃口を向け、

 ひとつは巨大なスコップを振り回し、

 ひとつは背中から光の羽を羽ばたかせながらも、スバルの獄翼の元へと集っていく。


『皆!』


 周囲に並ぶ獄翼を見つめ、スバルは歓喜の笑みを浮かべた。

 右にも獄翼。左にも獄翼。

 同じ機体に見えるが、それぞれに誰がいるのかなんて既にわかりきっている。

 自分が望み、純正アルマガニウムが具現化させたのだから。


『え、あの! これ、なんですか!?』


 羽が生えた獄翼マリリスが戸惑いながら言う。


『スバル君の声が聞こえたんだけど……』

『俺もだ。てか、獄翼ってこんなに開発されてたのか?』


 銃の獄翼シデンとスコップの獄翼エイジが、首を傾げる。


『話は後だ』


 理解しきれない超展開なのは重々承知した上で、爪を伸ばした獄翼カイトが一歩前に出る。

 既に一度呼び出された経験がある彼は、目標をひとつに絞り、他の仲間たちに道標を差し向けた。


『かいつまんで説明するぞ。俺たちは最初で最後に並んで戦う。敵はあの筋肉ピカピカ野郎』

『なるほど。スバルやマリリスとこういう形で共闘するわけか』

『それは確かに最初で最後だね。楽しく行こうか』


 XXXのメンバーはなんとなく事情を察してくれたらしい。

 が、理解力が低いマリリスはいまだにきょろきょろと周りを見ては戸惑っていた。


『あの! あの! 私も、戦うんでしょうか!?』

『マリリスは鱗粉を散らしてくれ! アイツのパワーを下げてくれたら、後は俺たちがなんとかする!』


 スバルの獄翼が刀を抜く。

 マリリスを庇うようにして4機が前に出ると、少女は息を飲んだ。


『……わかりました。よくわかりませんけど、みなさんの指示に従えばいいんですね!?』

『安心しろ。わけわかんねぇのは俺たちも一緒だけど、こういうのも偶にはいいだろ!』


 一斉に光の羽が噴出する。

 マリリスが蝶のような羽を大きく広げたと同時、カイトが号令をかけた。


『いくぞ!』

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