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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
襲撃! 超団長ロボ、ブナシメG!
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俺たちは正義のミカタ

 獄翼のコックピットが開かれる。どこから顔を覗かせ、外に出てきたのは隻腕の男だ。彼はなぜか某地獄の軍団の仮装マスクを被っており、堂々とした足取りで胸部へと君臨する。


『なんだ、てめぇ』


 ご丁寧にスピーカーを通じて外に声を響かせる団長。

 これを聞き、男は――――カイトは姿なき敵が近くにいることを察した。後の問題はどの方角から攻撃が飛んでくるかなのだが、そこは頼りになる仲間たちとのチームワークで乗り切ろうと思う。

 我ながら随分と丸くなったな、と思いながらもカイトは苦笑。


『おい、なにを笑ってやがる!』

「ああ、悪い。ちょっと考え事をしてただけだ」

『なんだと、てめぇ。随分余裕そうじゃねぇか。状況がわかってるのか?』

「貴様こそ、状況がわかっていないと見るな」

『なに?』


 言うと同時、カイトは左手で顔面を覆う。まるで自身の顔を覆い隠すような仕草を見て、獄翼内のシデンは『あ、中学生が好きそうなポーズだ』とぼやく。


「俺たちを相手にして葬られた悪党は数知れず。貴様が一番星かなにかは知らんが、悪党ならば同じこと。俺たちが刻んでくれるのみよ」

『なぁにぃ!? 貴様、どこの誰だ!』

「俺の名はスター★ハゲタカ! この前アキハバラに舞い降りた黒い翼だ!」


 よく通る声で主張された自己紹介を聞き、コックピットの中でスバルはずっこけた。


「あの人はなんであの設定を受け入れたんだよ! しかも、設定できたの本当にこの前だろ!」

「よし、いいぞ。あいつがこっち側に来てくれたら心強い」


 横で紙袋を被ったエイジがガッツポーズ。声だけで分かる。とても嬉しそうだった。何時の間にやら正義の味方集団の巣窟となっていた獄翼の胸部で、スター★ハゲタカは高らかに宣言する。


「やい悪党!」

『俺を小者のように言うんじゃねぇ! 親しみとビックさを強調し、団長と呼びやがれ!』

『おじさん、また拘ってるアル』

『黙れエリンギ! 俺のことは団長と呼べと言ってるだろうが』

『ヒロシのくせに』

『馬鹿野郎! 勝手に人の本名を公開するな!』

「わかった。おい、ヒロシ」

『オメーも気安くヒロシっていうんじゃねぇよ!』


 敵の情報のやり取りを聞き、カイトは思う。

 向こうも連絡のやり取りをしている。敵は複数だ。そして愉快だ。


「貴様、俺たちの家を捕るといったな」

『家?』

「そうだ。貴様はキャンピングカーで生活する人間が、車の盗難にあったらなにを盗まれたと思う。河原の近く、ダンボールハウスで暮している奴がダンボールを取り上げられたらどうなる」


 それは立派な家の強盗である。

 ゆえに、正義の味方なりたてのスター★ハゲタカは宣言する。


「俺は我が家を守る! 貴様らの陰湿で、ありがちなヒロシの名前ごと俺の正義の拳で砕いてやろう!」

『別に俺の本名はいいだろう!』


 このやり取りを見ていた獄翼のコックピット。操縦席でスバルは半目でカイトを眺めていた。


「あの人、こんなセリフ回しどこで覚えたんだ?」

「今日、俺のマンガ読んで時間潰してたぞ」

「片手だけなのに?」

「ページめくるだけならなんとかなるもんだ」


 恐るべしアキハバラの漫画。あのコミュニケーションが下手すぎる男をここまで『正義の味方』っぽくさせるとは。しかも心なしか当初の目的である『挑発』も成し遂げているように見える。


『馬鹿が! こっちにはライフルがあるのを忘れたか!?』

「試してみるか? どの方角から来ても構わんぞ」


 手を大きく広げ、まるで迎え入れるように挑発する。

 エイジとシデンはゆっくりと立ち上がると、スバルの肩を小さく叩いた。


「んじゃ、俺たちはそろそろ行くわ」

「スバル君、観察お願いね」

「了解!」


 コックピットからふたりの『正義の味方』が飛びだすと同時、スバルはモニターと睨めっこ。上下左右、周囲360度に至るすべてに己の視線を送り込む。


「準備はできてるぜ、スター★ハゲタカ!」

「ボクらの力を合わせれば、どんな奴でもイチコロさ!」


 そしてスター★ハゲタカの隣に君臨する全身タイツの紙袋男とメイド服を着た少女(22歳、男)。

 コックピットから新たに登場したふたりを目の当たりにし、団長は憤慨する。


『おい、なんだそいつらは!』

「自己紹介が必要か?」


 ならば、と言わんばかりにスター★ハゲタカは紙袋男の肩を掴む。


「こいつはアキハバラを守る正義の味方、ダンボールマン!」

『どこにもダンボール使ってねぇぞおい!』


 団長のツッコミなどお構いなしに、今度はメイド服の頭を撫でる。


「そしてコイツもアキハバラの平和を守るヒロイン、ジャッカルクィーン!」

『アキハバラってどこだよ!』

『団長、日本じゃ有名ですよ』

『世間を知らないって、世界征服を目指しておきながらありえないアル』

『カステラうめぇ』

『うるせぇ! どっちにしたってあんなふざけた連中に言われたままでたまるか!』


 獄翼が捕捉される。

 コックピットからそれを認知すると同時、スバルは叫んだ。


「くるよ!」


 少年が叫ぶと同時、団長も叫んだ。


『野郎ども、全員でとりかこめ! 攻撃だ!』

「囲んでくるか」

「複数に取り囲まれてるね」

「構わん。全部叩き落とせばいい話だ。スバル!」


 怒声にも近いカイトの声が聞こえる。

 だがそれが耳に届くよりも前に、少年は結論を導いていた。結果を伝える。


「シデンさんは背後。扇状に三発来るから全部防いで!」

「OK!」


 一番多くの弾はシデンに任せる。


「エイジさんは正面。コックピットにそのままくる!」

「任せろ! かっとばしてやる!」


 正面の本命らしき弾丸は力自慢のエイジに一任した。


「カイトさんは真上。頭部を狙ってるのを弾いて!」

「いいだろう」


 敵がどうやってその場所から弾を打ってくるか、という疑問は頭の中にはあった。

 だが三人の超戦士達は今自分たちがやるべきことをしっかりと理解している。同時に、あの少年がここまで詳細な弾丸の軌道を予測できたのなら、信頼に値する結果だろう。彼の武器は身体を動かして、躱すことではない。

 ゆえに、彼ができないことは自分たちがやろう。


 シデンが素早く飛行ユニットによじ登る。エイジは自身の武器であるスコップを掲げ、カイトは獄翼の頭部へと跳躍した。


『な……!』


 彼らの動きを見て、団長は驚愕する。

 背後を狙った三発の電磁ライフルはメイドが放った氷の壁に阻まれ霧散した。正面のコックピットを狙った本命はタイツ野郎のスコップで撃ち返される。

 挙句の果てに、頭部を狙った真上からの一撃はマスク野郎が蹴り飛ばしている始末である。比喩ではない。文字通り、こいつはブレイカーによる電磁ライフルの一撃を蹴り飛ばしたのだ。まるでサッカーマンガンガのオーバーヘッドキックのように。


『団長、全弾叩き落とされました!』

『嘘だろ!?』

『本当アル。あいつら頭おかしいアル』


 団長一行が騒然とするが、彼らの反撃は止まらない。

 電磁ライフルの弾丸をすべてを防ぎ終えた後、スバルは叫んだ。


「反撃開始だ! みんな、戻って!」

「了解!」


 正義の味方(自称)が全員コックピットへと戻っていく。自分たちの指定席へと座ると、彼らは少年の出した結論を問いただす。


「で、結果は?」

「正体がはわかった。対策もOK」

「マジかよ」


 エイジが感心したように腕を組む。先程の出来事だけで団長達が仕掛けた攻撃を見極め、しかもその正体すら見当がついたという。やはり、ブレイカーについてはこの少年に任せた方が良さそうだ。


「それで、敵?」

「狙撃するのが1体。弾丸を弾く役目をするミラーボードを装着しているブレイカーが5体いる」

「ミラーボード?」

「電磁ライフルを反射する盾だよ」


 最初から気にはなっていたのだ。今時、エネルギーライフルがブレイカーの主軸装備だ。電磁ライフルは一昔前の装備である。最初は賊のブレイカー故に、あまり大した武器が用意できなかったのではないかと考えていたのだが、違う。


「あいつらは最初から電磁ライフルを反射させる為にブレイカーを配置してるんだ」

「じゃあなにか? 連中はライフルで味方を当てて、それで軌道を変えてるってのか!?」

「その通り!」


 スバルが不敵に笑う。


「そもそも、電磁ライフルが武器の主流じゃなくなったのは、弾を反射するミラーボードが出回ったからなんだ」

「ミラーボードってどんなの?」

「エネルギーシールドの物理版だと思ってくれていいよ」


 その形状はまさに盾。表面に鏡のような反射板を取り付けており、そこにうまく電磁ライフルの弾を命中させれば弾丸を反射できる仕組みだ。


「ミラーボードは今の主流になってるエネルギーライフルを弾けない。次第に盾もエネルギー系が主流になり始めたから、ミラーボードも廃れていくってわけだよ」

「でも、ステルスオーラを展開しながら使えるものなのか?」

「それが使えるんだよ。獄翼だって刀を持ったままステルスオーラを展開して、向こうが勝手に突っ込んでくれたら自動的に相手を貫けるだろ?」


 ミラーボードはエネルギーシールドとは違い、実体の盾だ。

 だから盾を構えたままブレイカーを停止させていれば、ステルスオーラは使用できる。後は構えられた盾に電磁ライフルを当てるだけだ。


「と、なると狙撃主がいることになるな」

「それに、ステルスオーラで移動はできるんだよね。だったら、移動された後にまた盾を構えられたら……」


 敵はこちらのステルスオーラを見破っている。

 正体がわかり、反撃の狼煙をあげるのはいいのだが、いかにして反撃するというのだろうか。


「大丈夫。ここ最近の俺のスキルアップっぷりを舐めないでよね」


 意外にも、少年は自信満々だった。長年、彼の面倒を見ていたカイトもこんな表情は始めて見たかもしれない。


「なにか手があるのか?」

「少なくとも、負けることはないさ。相手が死角から撃ってくるだけなら、どうってことはないよ」


 なぜならば、


「だってこっちには撃たれてもどうってことない連中がいるんだぜ。勝ちは確定した様なもんさ」

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