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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
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vs正しくないやり方

「おい、アイツ潰されたぞ。死んだんじゃねーだろうな」


 転倒した自由の女神の頭部び降り立ち、マーティオは後方を眺めた。

 敵のブレイカー、POJはカイトやエリックたちが足止めしている。お陰でここまでは無事に到着できた。

 だが果敢に挑んだネルソンは頭突きで吹っ飛ばされ、カイトはブレイカーに踏み潰されてしまった始末だ。相棒のエリックは彼等ほどの戦闘力はない。マーティオと違い、彼は盗むスキルにすべてを注いできた。筋力が膨れ上がり、化物じみたサイボーグに握力で勝てる道理はない。

 素直に言えば、戦える人間があっさりとやられてしまい、相方の泥棒が殺されてしまわないか心配だった。


「大丈夫」


 だが、マーティオの懸念はカイトの相方によってあっさりと否定される。


「ブレイカーに踏み潰されても、カイトさんなら生きてるからなんとかなる」

「それで生きてるってのは化物だな」

「そりゃそうだよ。あの人、蹴りでブレイカーのナイフを蹴り砕くんだから」

「アイツ、本当に人間だろうな」


 ジャスティスが悪魔だと呼称しただけあり、相当鍛え上げられた新人類らしい。

 マーティオもかなり鍛錬を積んだと自負していたが、もしかすると中身の化物度では向こうが上かもしれない。


「それより、こっちは早く動かしてあのブレイカーをなんとかしないと」


 自由の女神の頭部に入り込み、コックピットブロックへと入り込む。

 中は通常のブレイカーと同じ仕組みだ。操縦席に座り、レバーを手に取る。


「テメェ、本当に動かせるんだろうな」

「任せてよ。モーションキャプチャならともかく、このタイプならいけるさ」


 愛機の獄翼に比べるとサイズも武器も違うが、ブレイカーズ・オンラインではアーマータイプやアニマルタイプも研究している。操縦に問題はない。


「後は電源を入れ直して、操縦をマニュアルに変更。ついでに武器も確認しとく」

「ついでなのか、そいつは」

「さっきの動き見てたけど、殆ど格闘戦がメインみたいだから」

「できんのか、テメェ」

「マニュアルでバック転できるくらいには訓練したから大丈夫」

「テメェ、新人類か?」

「まさか。これしかやってこなかったガキンチョだよ」


 人間、意外な一面があったりするもんである。

 マーティオは顔をしかめつつも、再びPOJに振り返った。


「ちっ、こっちを捕捉しなおしやがった。後どのくらいでやれる!?」

「さっきまで遠隔操作されてたから、操縦系の調整に少し時間がかかりそうだけど」

「具体的な数字を言いやがれ!」

「3分、いや1分でどうにかする!」

「よし、なんとかしろよ!」


 砲身が向けられたのを察する。

 マーティオにはこの自由の女神が再びアレを防げるかはわからない。だが、今乗り込んだばかりの少年の腕で防げるとはとても思えなかったのも事実だ。

 だから今は自分がなんとかする。


「正義の力の前に、悪は潰える! 自由もまた、新たな正義の前に消えていくのだ。正義を汚す自由など、最初から不要!」

「タコが。自分が正しいなら何やっても許されると思ってるんじゃねーぞ。ガキでも理解できるぜ」


 マーティオは飛翔し、自由の女神の真正面に浮遊。

 POJとの間に割って入ると、そのまま翼を閉じた。


「盾のつもりか! 新人類にしては姑息な手を!」

「うるせぇ。撃つならとっとと撃ちやがれクソ野郎」

「正義的に、君は発言からして汚い!」

「汚くなきゃあ、盗人なんかできんぜオッサン」

「では、汚物は綺麗にしてやろう。正義の洗剤で!」


 砲身から光が漏れる。

 ブレイカー。それもアーマータイプの主力になる武器の威力を防げるか、試したことはない。

 だが、自分の羽は頑丈だ。

 防げるなら儲け。生きていたら幸運。無事ならそのまま攻撃。行き当たりばったりだが、その場の状況で最善策を立てて行動する。

 そう考えていた。


「こんなでっかい洗剤があっても迷惑なだけだろ」


 ところが、エネルギーの砲弾は飛んでこなかった。

 寧ろ右肩に取り付けられていた砲身がパージされ、そのまま落下していく。


「馬鹿な。POJの正義の砲身が崩れ落ちた!?」

「ブレイカーからネジを盗むのは始めてだけど、意外となんとかなるもんだな」


 エリックだ。

 彼はカイトとネルソンがジャスティスの注意を逸らしている間に、素早く盗みを実行していた。

 実際に盗んだのはネジだけではないのだが、そこを説明する気はないので省いておく。

 重要なのは友人が手にかけられる前に、今度は自分が時間を稼ぐことだ。


「正義のオッサンよ。悪魔的なスゲー奴を叩きのめすのに夢中になるのはいいけど、あまり怪盗を舐めない方がいいんじゃない?」

「おのれぇ、エリック・サーファイス!」


 ジャスティスが飛びかかる。

 黒に変色した筋肉が沸騰し、目には怒りの炎が宿っていた。

 足の裏からジェット機のように光を噴射しつつ、ジャスティスはエリックに襲い掛かる。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


 拳が突きだされた。

 慌てたエリックは反射的に新人類として磨かげた力を使い、その一撃をいなす。


「む!?」


 ジャスティスが突きだした一撃が、空を切る。

 エリックは即座に懐へと潜り込むと、ジャスティスの腹部になにかを張り付けた。


「貴様、なにをした!?」


 腕を薙ぎ、エリックを弾く。今度は命中したが、腹にこびり付いた違和感を感じて眺める。


「爆弾!?」

「どかん」


 にやりと笑った怪盗。

 直後、ジャスティスが爆発した。ブレイカーの肩の上で巻き上がった爆風を感じ、エリックはゆっくりと起き上がる。


「……流石に、死なないよな」


 爆風から巨体の影が見えた。

 愕然と肩を落とすも、エリックは頬を叩いて己に気合を入れ直す。


「なぜだ、エリック・サーファイス!」


 次の攻撃をいなさんと構えているエリックだが、攻撃は巨体からではなく、口から飛んできた。

 爆風から姿が見えたジャスティスが、怪盗に問いかける。


「なぜマックス・サーファイスのような偉大な男の親族でありながら、お前は新人類に生まれたのだ!?」

「さあな」


 疑問に対し、エリックはあっさりと、それでいて冷たくあしらった。


「そもそも、どんな生き物になりたいかだなんて、生まれる前に決めれることじゃねぇだろ? だったらそんな疑問は考えるのがおかしいし、どの生き物が凄いなんて言い合うのもナンセンスだと思うわけだ」

「しかし、現に新人類は我々と敵対している!」

「マックス兄ちゃんも似たようなこと言ってたよ」


 自嘲気味に笑い、エリックは過去を思い返す。

 

「ガキの頃はさ。尊敬してたんだぜ。勉強もできるし、スポーツ万能。年の離れた従兄弟だったが、よく遊び相手になってくれたもんだ」


 だから将来はマックスにも誇れる職業に就こうと考えた。

 勉強も頑張ったし、次に会ったら自慢できるような弟でありたいと思った。マックスがどう考えていたかは知らない。だが、エリックにとって、マックス・サーファイスは本当の兄のように親しく、尊敬する人物だった。


 マックスが政治家になり、エリックを害虫のような目つきで見るまでは。


「俺が新人類だとわかったのは、マックス兄ちゃんが政治家になってからさ。知らせを聞いて、すぐにすっ飛んできたよ。俺を国外追放する為にな」


 理由は何度も聞いた。

 納得できる理由を、エリックは何度も求めた。


「アンタと同じ理由さ。新人類は、人類の敵。侵略者だからだって」


 ショックだった。外見は何時もと変わらないのに、自分が新人類だと分かった途端にこの扱い。

 それでもこの国に残っていたのは、きっとマックスとの思い出があったからだと思う。


「俺はそんなつもりはないよ。旧人類の上に立ちたいなんて思わない。ましてや、マックス兄ちゃんより自分が優秀だとは思ってなかった。だから、影ながらマックス兄ちゃんの手伝いが出来ればよかったと思った」


 ゆえに、エリックはアメリカの裏で活躍しだした。

 マックスには見えず、それでいて大胆に動くため、国のスパイとして活動した。


「けど、マックス兄ちゃんは変わってくれなかった。最後までお前と同じ思想だったさ」


 任期を終えた後、マックスは旧人類側の戦犯として大いに民衆から叩かれた。

 彼の思想は武力による平和解決。その武力で新人類王国に勝てなかったのだ。批判は、思想の中心にいたマックスに集まる。

 次第に耐えきれなくなったのだろう。

 マックスは、自宅で毒を飲んだ。


「だから俺はさ。マックス兄ちゃんの代わりにこの国を――――いや、可能なら世界をよくしたいと思ってるよ。マックス兄ちゃんがやり方を間違えたなら、俺は別の方法でやる。アンタはマックス兄ちゃんと同じ過ちを犯そうとしてる。だから、俺は戦うさ」


 エリックから確かな闘志が伝わってくる。

 それを肌で感じたのか、ジャスティスは思わず数歩後ずさった。


「XXXのような戦闘訓練を積んでいないお前が、正義に勝つというのか!?」

「でも、その正義も少しは揺らいだろ?」


 純正アルマガニウムは少年がいまだに保持。

 切り札として出してきたブレイカーも、自由の女神を始めとした抵抗にあって思うように動かせていない。


「俺は圧倒的な正義じゃなくていいのさ。正しくなくてもいい。ちょっとずつ揺らして、のらりくらりと立ち回って、最後には地味に勝ってやる」

「私の正義は、お前のようなコソ泥の前では揺らがない!」

「俺はアンタのような分からず屋を揺らす為に、技を磨いてきた! 泥棒のスキルを嘗めるなよ!」


 エリックとジャスティスが同時に走り出す。

 遠くからそれを見たマーティオは、舌打ちしながらもスバルに向けて言い放つ。


「おいクソガキ! オレが先に仕掛ける。後に続け!」

『え!?』


 了承を得る前にマーティオは突進。

 空を切り、エリックの救援へと向かった。

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