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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
43/192

vs正義の力、自由のなんとか

 タイツの人の主張はこうである。


『今からお前の攻撃を全力で受け止めるから、俺が生きてたら俺を好きになってくれ!』


 恐ろしい。

 全身タイツに紙袋を被った男による全力告白だった。

 ザンマは思う。もしも耐えられてしまったら私は本当にタイツの人と交際しなきゃいけないのか、と。


 否。

 断じて否。

 なにがあってもNOだ。


 タイツの人が良い人なのか悪い人なのか以前に、今の彼が纏うオーラが怖い。

 顔は見えないけど、怖すぎる。このまま抱きしめられ、無理やり唇を奪われるのかとさえ思った。

 その光景を想像した瞬間、身震いする。

 助けてパパ、と叫びそうにすらなった。

 だが、パパはいない。

 信じられるのはパパから授かったZという希望の文字だけである。


「Zとはすなわち、希望の文字!」


 ザンマは放つ閃光に己の力をすべて注いでいた。

 敵はタイツの人だけではない。ポリスマンと名乗る奇妙な男もいた。

 しかし、ザンマは後のことなど考えない。ここでタイツの人を消し飛ばす。残りの敵は他の同志に任せる。


「消えろ!」


 ザンマは吼える。

 全身から放たれた閃光と熱量が、タイツの人を完全に飲み込んだ。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 あの男の悲鳴にも似た絶叫が聞こえる。

 ザンマは知っている。あの声は痛みを堪えている証だ。自分も手術を受けた時に似たような叫びをあげたから覚えがある。

 

「来るな! 来るな来るな! 消えてしまえ!」


 必死に、どこか祈るような気持ちを込めて叫んだ。

 閃光から僅かに影が見える。まだタイツの人は倒れていない。だから理解してしまう。まだ脅威が近づいてきている、と。


「私に近寄るな! 怯えろ! Zの文字の偉大さの前に倒れろ!」


 影がぐんぐん近づいてくる。

 一歩一歩、確実に。途中で遅くなりはするものの、止まる気配はない。


「なんで進んで来れる!? どうしてZに恐れない!」

「偉大な文字なんだろう、Zってのはよ。それなら恐れる理由はないぜ!」


 光から手が伸びる。

 おれがザンマの肩を掴んだ瞬間、彼女の戦慄は臨界点を突破した。


「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 恐怖と拒絶の叫びだった。

 彼女は咄嗟に手を出すと、光の照射を止める。

 代わりに繰り出したのはビンタだった。

 間近まで迫っていた黒焦げの大男の頬に直撃したかと思うと、そのまま何セットも繰り返し。どんどん膨れている頬などお構いなしに、ザンマは最後のグーパンチをタイツの人――――御柳エイジの顔面にお見舞いする。


「げふぅ!?」

「私に触るな!」


 結局のところ、エイジ渾身の告白に対する答えがコレである。

 彼は撃沈したのだ。

 明確な拒絶を受けて。


「な、なんでやねん……」


 悶絶し、エイジが崩れ落ちる。

 なんとか腕を伸ばして抵抗の意を示そうとするも、ザンマはその行為にすら恐怖を抱いていた。

 自分の心を示す為に我慢して突進したエイジであるが、ザンマにとっては倒れずに突撃し続け、最後には自分の身体を掴んでくるという行為が恐怖を加速させてしまったのである。

 なんでもやりすぎはよくないのだ。


「死ね! 死ね、タイツの人!」


 げしげしと足で蹴り始める。

 その光景を目の当たりにしたポリスマンは止めに入るべきと考えるも、ザンマが涙目で訴えているので『これってもしかしてダンボールマンが悪い奴なのかな』と考え始めた。

 炊きつけた張本人なのだが、女の涙の前では無力な存在だった。


 だが、ザンマの蹴りはここで止まる。

 何故なら、床をぶち抜いて爪が伸びた腕が飛びだしてきたからだ。


「ひえ!?」


 唐突に現われた物騒なロケットパンチを目の当たりにし、怖気づくザンマ。

 しかもその恐怖を加速させたのが真下から響く報告だった。


「無事か、エイジ。こっちは倒してスバルも回収した。今からそっちに向かうぞ」


 カイトの声だ。

 しかも、ホワイトを倒したのだという。また新しい変態がやってくるのかと思うと、ザンマは耐えきれなかった。


「来るな! 来るなよ、もう! もういやだあああああああああああああああああああ!」


 サイボーグ・ザンマ。力強い筈のZの文字を引っさげたサイボーグ戦士は、涙の撤退を選んだのである。

 彼女が走り去った後、床からよじ登って生還したカイトが顔を覗かせる。彼の背中にしがみ付いていたスバルも同様だ。


「あ、エイジさん!」

「黒焦げだが、敵の姿はないな。倒したのか?」


 よじ登り、ザンマの姿が見えないことに不審がるカイトだが、倒れているエイジに近寄る。


「おいエイジ。無事か」

「俺はもうだめだ」


 はっきりとそう答えられた。

 割と元気そうである。


「見た目ほどダメージは深く無さそうだが」

「いや、俺は今。過去最大級の打撃を受けた」

「マジで」

「ああ。もう俺は立てない。先にいってくれ」

「そうはいかん。俺たちにはお前の力が必要だ」

「そうだよ。傷ならマリリスが治療してくれるし」


 励まそうとする仲間たちだが、エイジの力は戻らない。

 代わりに彼の気持ちを代弁する為に近づいてきたのはポリスマンだった。


「よせ。今のソイツは激しすぎるダメージを負ってしまった。時間が回復してくれるのを待つしかない」

「誰アンタ」


 全身フル装備のポリスマンを始めてみたカイト達は真顔で問う。

 が、ポリスマンは答えることなく淡々と語り続けた。


「俺の時、メアリーがOK出してくれてよかった……」

「何の話だ」


 まったくついていけないのだが、いつまでもここに居続けるわけにもいかない。


「ともかく、早く脱出しよう。人質は取り返してるが、外ではまだ戦闘が終わってない可能性がある」

「む、そうか! なら俺がコイツを運ぼう」

「お前、サイボーグじゃないのか」

「俺は正義の味方だ! 仲間を助けるのは当然のことだろう!」


 びしっ、と効果音を鳴らしながらポリスマンが親指を上げる。

 これを見たカイトとスバルは思った。

 こいつは面倒くさそうなオッサンだなぁ、と。


「ん?」


 床が揺れる。

 真下から激しい振動が地下空間を揺らすのを感じ、スバルは咄嗟に言葉を出した。


「爆発!?」

「いや」


 確かに地下で暴れはしたが、起爆するようなことはしていない。

 ならば揺れの原因はなにか。明確な答えは、思考よりも前に現実がつきつけてきた。


 床が崩れる。

 ザンマに焼かれた天井すら突き破りながら出現したそれの姿を、スバルは明確に叫ぶ。


「ブレイカー!?」


 愛機、獄翼と同じ漆黒の巨人が地下から地上へと昇っていく。施設のことなどお構いなしで出現したそれを目の当たりにし、カイトとポリスマンは一斉に行動する。


「スバル、掴まれ。瓦礫を伝って地上に出る!」

「できるの!?」

「俺を誰だと思っている。そっちは任せて大丈夫なんだな!?」

「ああ、任せておけ!」


 言い終えると、カイトとポリスマンは跳躍。

 大きな瓦礫を足場にし、次々と上へと昇っていく。

 外へと脱出した時、ブレイカーは既に上半身が剥き出しになっていた。


「離れろ! 機関銃の射程範囲内だ!」


 即座に移動しつつも、スバルはブレイカーの観察も忘れない。

 大きさは恐らく、念動神と互角。獄翼よりも大きなアーマータイプだ。顔や胴体をフットボール選手が装着する防具のような物で覆っており、防御よりの性能なのが伺える。

 だが、なによりも目を疑いたくなるのは右肩に装填している巨大な銃身だ。

 あのブレイカーが40メートル前後の巨体だとすれば、肩の銃身は30メートル近くあるのではないだろうか。見るからにバランスを崩しそうだ。ほんの少し衝撃を与えたら、ぽっきりと折れてしまいそうな華奢ささえ感じる。


『新人類共! よぅく目を凝らして見るといい。これぞ諸君を滅ぼす正義のブレイカー、POJだ!』

「ぴーおーじぇい?」

『パワー・オブ・ジャスティスの略だ!』


 ブレイカーからスピーカーを通じ、ジャスティスの叫び声が響き渡る。

 どうやら彼が操作しているらしい。


『正義的に認めたくはないが、諸君らの力を見誤ってしまったようだ。既にサイボーグの大半は破壊され、残る戦力も僅か』


 ゆえに、切り札を出す。

 最後の切り札だ。正面からの勝負で勝てないのなら、切り札を使った全力勝負で勝利を収める。

 どちらにせよ勝利すれば純正アルマガニウムも手に入るのだ。至高のエネルギーを確保できればなにも問題はない。


『ならば、このジャスティスが本当の正義を見せてやろう。このPOJならば、真なる正義をお前たちに見せてやれる!』


 POJが宙へと飛びだした。

 ビルが倒壊し、突風が巻き上がる。激しい風で目を守りつつ、カイトはスバルへ尋ねた。


「獄翼は出せるか!?」

「出せるけど、ここまでくるのに時間がかかるよ!」

「俺に任せろぉ!」


 困り果てた顔のスバルに、ポリスマンが力強い声をかけた。

 無駄にでかい声量だった。


「こんなこともあろうかと切り札を用意しておいた! 奴の相手は俺に任せろ」

「どうするつもりだ」

「奴がピーオージェイなら、こちらはエフビーアイを使う!」

「FBI!?」


 FBIといえば、あれか。

 アメリカで厄介な事件を解決する為に動く、エリート集団か。

 スバルは映画等の影響で偏ってしまった知識をフル回転させ、FBIがPOJに立ち向かう姿を想像する。


 アメリカ屈指の秘密ブレイカー搭乗の予感がした。

 興奮し、スバルは歓喜の笑みを浮かべながら問う。


「つまり、ブレイカー戦に持ち込むんだね!」

「そのとおり! 今、申請を出した!」

「いつの間に」

「ポリスマンのボディには俺の筋肉と根性と正義の心、そして通信メカニズムが搭載されているからな!」


 最後のだけでいいんじゃないかなぁ、とカイトは心の底から思った。

 だが、今の彼は正義の味方『スター★ハゲタカ』。野暮なことは言わないでおく。


「来い、エフビーアイ! 奴を倒すのだ!」

「いや、アンタまだ乗ってないし」


 冷静に突っ込むスバルだが、ややあってから気付く。

 POJの背後に、こちらに向かって走ってくる巨大な物体があることに。

 さながら走者のような綺麗なフォームで走ってくるソレの名を、スバルはよく知っていた。

 ニューヨークに君臨する自由の象徴、自由の女神である。

 だが、なぜそれが動いているのだろう。

 というか、なぜ走ってきているのだろう。


「ねぇカイトさん」

「どうした」

「なんか自由の女神が走ってきてるの気のせい?」

「奇遇だな。俺にも同じものが見えるぞ」


 真顔でやり取りするふたり。

 彼らは無言のままポリスマンをジト目で見ると、彼はやはり親指を立てて説明しだした。


「ふははははは! 驚いたか。あれこそ我がアメリカ警察が誇る平和の使徒、FVI! フリーダムビーナス・いざ戦うの略だ!」

「もしかして、アンタがその名前を考えたの?」

「いや、大統領だ」


 ウソだろ大統領。

 想像を遥かに超えた自由なブレイカーの参上を目撃し、スバルはげんなりと項垂れるのだった。


「俺の期待を返せ……」


 尚、彼の横でカイトは『あれで星喰いと戦うのかなぁ』などとぼやいていたが、それが実現したかはまた別の話である。

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