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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
35/193

vs悲しき文字、Z

 土下座の姿勢から起き上がり、サイボーグ・ザンマは再度エイジを見やる。

 だがその視線は先程までの敵意が籠ったものではない。


「タイツの人、アンタが良い人だとわかった上で頼みがある!」


 ザンマは背を向け、壁に手を当てた。

 何事かとエイジが見ていると、ザンマは彼の予想を超えた発言をする。


「私の後ろにもZの痕をつけてくれないか!?」

「……」


 ダンボールマンこと御柳エイジがただの焼印屋に成り下がった瞬間だった。

 しかも、ザンマはなぜか瞳をキラキラと輝かせながらこちらを見ているではないか。


「なあ」

「なんだい、タイツの人!?」


 とてもウキウキしている。

 一応捕捉しておくが、彼らは純正アルマガニウムを巡って争う敵同士の関係だ。


「俺、そんな綺麗な文字をつけることできないんだけど」

「心配はいらないぞタイツの人! 至高の文字、Zの化身である私は全身からZの輝きを放つことができる! すなわち、背後からZを解き放ち、タイツの人がそれを弾き返してくれたら私の背中にもZの痕跡が残るのだ!」


 なにが『すなわち』だ。

 エイジは心の底からそう思った。


「ではいくぞ!」


 しかもこっちの返事を聞いちゃいない。

 明らかに面倒くさいタイプの人間だった。


 だが、これは考えようによってはチャンスではないだろうか。

 ザンマの背中が輝くのを見守りつつ、エイジは思う。


 今、ザンマは背中を向けている。しかも光線を撃つのに集中している為か、顔も伏せているではないか。

 つまり、叩くなら今がチャンスである。


「Zビーム!」


 小さなZの輝きがエイジに向けられる。

 が、エイジはそれを軽く回避。真横に避けた後、全力でザンマ目掛けて走り出した。


「あれ?」


 その足音に疑問を抱いたザンマも流石におかしいと感じ、振り返る。

 スコップを掲げ、振り下ろしてくるダンボールマン、御柳エイジが迫ってきていた。


「なにをするか、タイツの人!?」

「喧しい! お前の遊びに付き合ってられるか、Z馬鹿!」


 スコップが縦に一閃された。

 刃先がザンマの脳天に直撃。鈍い金属音を鳴り響かせる。


「あふぅ」


 白目を剥き、ザンマが倒れ込む。

 それを見届けたエイジはスコップを構え直し、警戒しながら徐々に後ずさった。

 これまで戦ってきた新人類ならいざ知らず、相手はサイボーグである。怪力自慢とはいえ、打撃で倒せるか不安だった。

 特にザンマの頭にスコップをぶつけた際、いつも感じる手ごたえが薄かったのが気にかかる。


 まだ倒せていない可能性は、非常に高い。


 同時に、床に空いた穴の中に吸い込まれてしまったカイトや、連れ去られたスバルの行方も気にかかる。

 サイボーグとの戦いは避けられないとはいえ、これ以上足止めを受けるのは避けたかった。


 避けたかったのだが、しかし。


「ウホホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオイ!」

「ああ!?」


 獣の唸り声のような叫びが背後から聞こえた。

 反射的に振り返ると、そこにはエイジの予想通りの物体が、壁を破壊しながら登場している。


「ゴリラぁ!?」


 しかもただのゴリラではない。

 カウボーイハットに革ジャン、挙句の果てにはベルトにガトリング砲まで装着した、ガンマンゴリラ。

 その名もサイボーグGGGである。


「生体反応を見つけて駆けつけてみれば、まさかサイボーグ・ザンマがやられてるとは。いいところに来てしまったようだウホ」

「オメー、喋れるのかよ!」


 とうとう人間からもツッコまれた。

 だがGGGは気にしない。だって姿形がゴリラであることが自分のアイデンティティなのだから。


「メタルガトリング用意」


 ポリスマンとの戦いから使用しているガトリング砲を構えた。

 カウボーイハットのつばの部分からモノクルが出現。GGGの左目にセットされると、早速狙いを定める。


『残り弾数表示』

「ウホ!」

『自動追尾機能、問題なし』

「ファイア!」


 ガトリング砲が火を噴いた。

 それと同時にエイジはスコップを勢いよく振るい始める。


「嘗めるなよゴリラ! そういうのは慣れっこだ!」


 振り回したスコップの刃先がメタルガトリングの弾丸に命中。

 弾丸は弾かれると追尾機能を発揮する前に砕かれてしまい、エイジを貫く前にその役割を終えてしまう。


『GGG、敵もどうやら新人類です。しかもスコップはアルマガニウム製であると判断します』

「今日の侵入者は揃いも揃って気が狂ってるウホ」


 しかもふたりとも変な格好をしている。

 片方は変身して、もう片方はタイツに紙袋。今時、こういうのが流行っているのだろうか。


「オシャレ度なら俺の方が上手ウホ」

『GGG、冗談を言う暇はありませんよ』


 コンピュータがとても冷静に突っ込んでくれた。

 だが彼の発言はエイジとしても黙ってはいられない。


「おいおい、ふざけるなよゴリラ野郎。どう見てもこのダンボールマンの方がイカしてるだろうが!」


 自慢の紙袋を親指で指差しつつ、堂々と宣言する。

 コンピュータは彼の発言を分析した。

 GGGのゴリラカウボーイスタイルとダンボールマンの全身タイツ紙袋スタイル。どちらが優れたファッションであるのかを、だ。


 ややあった後、エラーが生じた。


「コンピュータ、どうしたウホ」

『なんでもありません。GGG、攻撃目標はまだ健在です。メタルガトリングでは倒せない以上、体内ミサイルでの使用を推奨します』


 ポリスマンを葬った必殺の一撃だ。

 メタルガトリングが通用しないのなら、至近距離から超火力をぶち込んで吹っ飛ばすしかない。

 幸いにも握力には自信がある。

 なんたってゴリラであることがアイデンティティなのだから。


 ガトリングを捨て、GGGは両拳を突き合わせる。

 それが力勝負の合図なのだと受け取ったエイジは、紙袋の中で不敵に微笑んだ。


「面白れぇ、この俺とパワーで勝負するってわけだな! 受けて立ってやる!」


 両者が走り出す。

 だが、その影は重なる事は無かった。

 双方の間に割って入るようにしてZの閃光が飛び込んできたからだ。


「うお!?」

「ウホーイ!?」


 飛び退くエイジとGGG。

 そんな彼らを睨みつけるのは、エイジに殴り倒されていたサイボーグ・ザンマその人だった。

 自慢のZ型の頭部は完全にひび割れており、わなわなと震えている。明らかに怒り心頭だった。


「酷い! 酷いじゃないか、タイツの人!」


 エイジを指差し、ザンマは非難する。


「後ろから殴るなんて卑怯だし、命よりも大切なZの頭もこの有様。結局、お前は私ではなく、私の至高の文字であるZが目当てか!?」

「いや、そんなもん欲しくないんだけど……」


 いかんせん頭にかぶせる物は間に合っているので、特に欲しいとは思わないのが本音だった。


「折角分かり合えると思ったのに! お友達になれると思ったのに! なんて嫌な奴なんだ!」


 そっちが勝手に勘違いしただけなんじゃないかな、と突っ込むことはできなかった。

 ザンマに満ち溢れる気迫が、エイジの言葉を押し留めたのだ。無言の気迫、というものだった。


「お友達になれない悲しい宿命ならば、Zの文字に誓ってお前を討つしかない!」


 全身を使ってZの構えを取る。

 それと同時、ザンマの頭に被さっていたZ型の兜のような被り物が崩れ落ちた。


「あ」


 がちゃん、と音が鳴りながらも被り物は砕け散る。

 だがそれよりもエイジとGGGが驚愕したのは、ザンマの素顔だった。


 被り物のなかに収まっていた、艶のある長い黒髪。

 怒りに歪むが青の綺麗な瞳。

 そして整った美しい顔立ち。


「Zの構えを取れ!」


 更に決め手は、被り物が崩れたことによって露わになった地声。

 今まで気付かなかったが、サイボーグ・ザンマは女性だった。


「えええええええええええええええええええええええええええええ!? うそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


 てっきりアーガスやサイキネルのような残念な男なのだと思っていたのだが、まったく別の方向で攻めてこられた。

 しかも、エイジにとって最大の誤算なのが、


「い、意外と可愛い……!」


 ザンマは彼のストライクゾーンだった。

 Zの構えが間抜けだが、どういうわけか今となってはそれもチャームポイントに見えてくる。

 この超現象にツッコミを入れてくれる者は、誰もいなかった。


「……悲しいZの宿命、か。確かにそうかもしれねぇな」


 ふっ、と自嘲するエイジ。

 ザンマの全身が輝き、Zの閃光が放たれる瞬間、彼はスコップを手放した。


「なんのつもりウホ!」


 GGGが叫ぶ。


「馬鹿野郎! ダンボールマンがカワイ子ちゃんの顔をスコップで殴れるかよ!」


 力強く叫ぶと、エイジは突進。

 GGGなど目もくれず、ザンマ目掛けて走り出した。

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