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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
29/192

vsいつも元気なビースト君

 時間は少しだけ巻戻る。

 御柳エイジがその場に駆けつけた時、そこは既に地獄絵図のような状態だった。

 一方的に放たれる銃弾。次々とやってくる機械兵士。弾切れを起こしても入れ替わりで銃撃を繰り返し、埋まってしまったカイトに反撃の隙を与えていない。

 ただ、そのカイトも地面に埋まりながら銃弾をすべて爪で弾き飛ばしていた。まったく無傷ではないが、持ち前の再生能力のお陰でぴんぴんしている。


「よく生きてるな、あいつ」


 それがエイジの第一感想だった。

 毎度ながらカイトの生命力の逞しさには感服するしかない。だが、下半身が丸ごと埋まってしまっては反撃の機会は訪れないだろう。

 だからこそ自分に助けを求めてきた。


 少し前なら考えられなかったことだ。

 

 そう考えると、不謹慎ながらにやけてしまう。


「おら、助けに来てやったぞ! 感謝しやがれ馬鹿野郎!」


 口を弾ませながらエイジは叫ぶ。

 彼は力任せに大地を蹴り上げ、四角形の巨大なコンクリートを浮き上がらせた。機械兵士達がエイジに気付くと同時、彼は浮き上がったコンクリートの塊にスコップを振るう。


「お前たちにはダンボールマンからの素敵なプレゼントをくれてやる!」


 機械兵士達に仕組まれたプログラムが一斉に『ダンボールマン』という単語にアクセスした。

 彼の容姿は全身タイツに頭は紙袋で覆われている。

 どこからどう見てもダンボールの要素はない。一時的なエラーが生じ、彼らの動きは止まった。


 それと同時、スコップに砕かれたコンクリートの雨嵐が機械兵士達に襲いかかる。鋼鉄のボディを砕き、何体か爆発した。炎が巻き上がったのを見て、エイジは空いている手を前へと突き出す。


「そのまま燃え尽きろ」


 爆炎がエイジの意思によって渦巻いていく。

 炎は機械兵士達を取り囲むと、容赦なく機械の皮膚を焼き尽くしていった。1階から爆発が起きたのを確認し、エイジはカイトの元へと駆け寄る。


「おい、生きてるか」

「なんとかな」


 真顔で返答したのを見るに、まだまだ余裕そうである。


「急いでここから引き抜いてくれ。あの爆発で建物も崩れかねん」

「俺が言うのもなんだけど、半分はお前のせいだぞ」


 蹴り抜いたビルを指差し、エイジが言う。

 が、カイトが目撃したのは自分が蹴り抜いた穴から降りてくる巨漢だった。


「急げエイジ。誰かがおりてくる」

「サイボーグか!?」

「わからん。だが」


 エイジが急ぎ、カイトを引っ張る。

 自慢の怪力で親友を大根のように抜き取ると、その場で尻餅をついた。


「あいた!?」

「奴はスバルを抱えていた。急いで追うぞ」

「なに、本当か!?」


 穴から抜けて自由になった足で何度かジャンプ。

 下半身に違和感がないことを確認し、エイジに振り返る。


「いくぞ。今度は俺がお前を連れていく」

「オーケー。頼んだ!」


 エントランスから噴き出す爆風を背景に、カイトがエイジの手を取る。

 今、まさにあの中でネルソンがサイボーグGGGと戦っているのだが、そんなことなどお構いなし。

 彼らはビルに突入した連中のことなど気にすることもなく、まっすぐ巨漢へと走り出していた。


「カイトさーん! こっちだ。早く助けて!」


 少年の喚く声が聞こえる。

 判り易い救援を求める叫びを聞き、カイトは叫んだ。


「見つけた!」

「無事か、スバル!?」


 巨漢が降りたった場所に疾風と共にカイトが駆けつけた。

 

「カイトさん! エイジさん!」


 黒ずくめのマスクと紙袋男の登場に喜ぶ少年。

 明らかに不審人物の恰好でしかないのだが、どういうわけか彼らに絶大な信頼を寄せている。

 故に、ジャスティスは考えた。


「少年。君は少し趣味が悪いのではないか?」

「なんで」


 とても失礼なことをいわれ、スバルは真顔で反論する。

 が、そんな彼らのやり取りを気にもせずにカイトとエイジは行動を開始していた。


「む!?」


 彼らが即座に走り出したのを認識し、ジャスティスは目を細める。身体に仕込まれたスーパーコンピュータが彼らの動きを認識するも、それをわかりやすく認識する為の数値が異常だった。


「なんだこれは」


 混乱する頭を抱えつつ、辛うじてそう呟けた。

 彼らが叩きだした数値はサイボーグ。あるいは新人類王国での『特化され過ぎた人間』のそれである。

 なるほど、ドクトルが彼らを倒す為に拘るのも理解した。

 彼女の性格ならば、こんな強者を見つけたら自分の『最強の人間』をぶつけたくなるだろう。


 ならば、今はその気持ちを尊重せねば。

 ジャスティスはドクトルが放っていたサイボーグに無線で連絡を入れる。


「ザンマ、ホワイト、ビースト。稼働していたらすぐにくるのだ。正義的に、君たちでないと倒せない新人類が私の目の前にいる」


 口にしたと同時、カイトとエイジが左右から襲い掛かってきた。

 カイトは爪を伸ばして。エイジはスバルを取り戻すために腕へと手を伸ばしてくる。


「むん!」


 が、それらの攻撃がジャスティスに届くことはない。

 腹筋が膨張したと同時、ジャスティスの身体が宙に浮いたのだ。足から噴き出た突風に押し出され、カイト達は僅かに吹き飛ばされる。


「くそっ!」

「いい反射神経だ。ただデカイだけじゃなさそうだぞ」

「当然だ。正義的に考えて、大きいだけではなくて凄いのだよ!」


 無論、ジャスティスとてドクトルの手術を受けたサイボーグのひとりだ。

 彼女の作品として、彼らに負けるつもりはない。

 だがドクトルが敢えて自分に依頼しなかったということは、それだけ拘っている証拠だ。

 組織を纏める者として、部下の気持ちも尊重しなければならない場面はなるべく尊重するのも大事である。


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

「きたか!」


 早速その為のサイボーグがやってきた。

 調整をしているとはいっていたが、流石に仕事が速い。


「なに!? なに!?」


 どこからか響いてきた獣のような叫び声を聞いて、スバルが慌てふためく。


「落ち着きたまえ。私の傍にいるかぎり、君に害はない。ただ、離れたら保証はできない」

「それはアンタが正義だから?」

「残念だが正義だからといってすべてが解決できるわけではない。どうしようもないことだってあるんだ。正義的に」


 どういうことだろう。

 スバルが半目でジャスティスを見やるが、その答えはすぐにわかった。


「ふたりとも、後ろだ!」


 カイト達の後方からなにかが迫ってくる。

 四本足で迫るそれは最初、獣かなにかかと思ったのだが、よく目を凝らしてみれば違った。


「なんだあいつは」


 振り返って敵の姿を認識したカイト達も思わず呟く。

 涎を垂らし、手を足を使って迫ってくるそいつはどう見ても人間だった。人間の姿をした凶暴な犬である。


「アイツもサイボーグなのか?」

「その通り。彼のコードネームはビースト」


 ジャスティスが得意げにいう。


「さあ、ビースト。そこのふたりが君の相手だ。もしも倒すことができたなら」


 一旦間を置き、ジャスティスは宣言する。


「君の為に、麗しいライオンのメスを与えようではないか!」

「は?」


 なにをいってるんだ、とその場にいた全員が思った。

 だがジャスティスの言葉を聞き、ビーストは明らかに興奮している。


「はぁ、はぁ、はぁ! ライオン! ライオンの女子! いいのか!? いいのかい、ジャスティス!? そなのくれた日には、僕は! ぼくぁ!」


 目の焦点が合っていない。

 ぐるぐると渦巻きながら涎を垂らし、筋肉を膨張させながら突進してくる男を目にしてカイトは嫌そうなトーンで呟いた。


「いかん。あれはパツキン以上に危ない奴だ」

「じゃあ、お前に任せた」


 エイジは踵を返し、ジャスティスへと走り出す。

 そんなエイジの肩を掴み、カイトは真剣な口調で語りかけた。


「待て。なぜ俺がアイツの相手をすることになっている」

「ああいうヘンタイの相手はお前の専門だろ」

「馬鹿をいうな。いつから俺が担当することになった」

「アンタ等、喧嘩してるけどもう来るよ!」


 上空からスバルが叫ぶ。

 振り返り、カイトとエイジはお互いにしぶりながらもいった。


「ふたりでコイツを倒してスバルを助けるぞ!」

「すぐに片づけるぞ! なるべく涎がかからないようにしないと俺のダンボールヘッドに染みができるからな!」


 アンタが被ってるのって紙袋じゃん。

 スバルはそう思ったが、本人たちがやる気に満ちていたので突っ込むことを放棄した。

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