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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
28/193

vs忍者シリトリ君

 縛り付けられたスバルは真下から鳴り響く地響きと、外から聞こえる銃声に汗を流していた。

 なにせ先程、同居人であるカイトが文字通りここを貫いたばかりなのだ。この場所がどういうところなのかはよく理解していないのだが、戦いが始まったのは理解できる。

 自惚れでなければ、自分が呑み込んでしまった物体を巡ってヘンテコ軍団とトンデモーズの戦いが始まってしまったのだ。今はまだ戦いの火種がここまで飛んできていないが、もしもこの場で戦われたら命がいくつあっても足りない。なんといってもスバルは椅子に固定されているのだ。逃げようにも逃げれないし、外の様子も詳細がわからない。


「やあ、少年。正義の戦いが始まったぞ!」


 そんなスバルに向けて、やたらと暑苦しい声がかけられた。ジャスティスと名乗る、サイボーグ集団のボスらしき人物だ。彼はにこやかな笑顔でスバルに挨拶をすると、カイトによってぶち抜かれた床をまじまじと見ながら続ける。


「君も察したかもしれんが、純正アルマガニウムを奪いにやってきた連中と我がジャスティスの精鋭が戦っている」

「奪ったのはそっちでしょうが」

「最終的に今はこちらにあるから、向こうが奪いに来たことになるのだよ」


 これが正義のいうことか。

 スバルは半目でジャスティスを眺めつつも、問う。


「で? 俺になんか用事?」

「勿論だ。敵の戦闘力はこちらの予想を上回っている。どうやら何人か仲間を引きつれているようだ」


 言われ、スバルは考える。

 XXXがオールスターで駆けつけてくれたのだろうか、と。もしそうだとしたら心強いが、ビルごと自分も崩壊してしまわないかと不安になる。


「特に、エントランスが非情に危険だ。このビルも崩れてしまうかもしれない」

「寧ろよく今まで崩れなかったと思うよ」


 カイトがぶち抜いた天井と床を見ながら呟く。

 ジャスティスはにかっ、と笑いながらも逞しい二の腕を晒し、スバルごと椅子を持ち上げた。


「それだけ我々の技術力が高いということだ。正義的に考えても敗れることはないとは思うが、君の安全は確保しなければならない。悪いが、シェルターまできてもらおう」

「その前に、お宝を渡してもらえるかい?」


 聞き慣れない若者の声が後ろから聞こえた。

 ジャスティスが振り返る。仮面をつけた青年が腕を組み、ドアに背中を預けた状態から一歩前へと踏み出してきた。


「お前は」

「アンタ等にまんまとお宝を盗まれた怪盗さんだよ。あーっと……サイボーグの大将?」

「ジャスティスと呼んでくれ」

「悪いけど、俺は自分のことを躊躇いなく正義とか語っちゃう奴ってあまり好きじゃないんだよね。胡散臭く思えるし、アンタの場合はやってることも悪質だ」

「コソ泥に言われる筋合いは――――」

「あるとも。コソ泥が悪質だと思うくらいだから、一般人からすればもっと悪質だろ」


 一理あるかもしれない。

 スバルはジャスティスに抱えられながらもそう思う。


 一方、喋りたいことを喋った怪盗シェルは腕を解き、姿勢を低く構えた。


「盗みに特化された新人類をあまりなめるなよ。そこにお宝があるんだったら、俺は絶対に盗める自信があるぜ。どんなに大きなお宝だろうとな」

「彼ごと盗むつもりか?」

「約束だからな」


 カイト達と一時休戦し、お互いの目的を達する為には純正アルマガニウムと蛍石スバルのふたつの奪還を果たさなければならない。

 だから怪盗シェルは『お宝』に蛍石スバルを含んで宣言する。


「建物も悲鳴をあげてるし、さっさと済まさせてもらえると助かるんだけどね」

「それはできない相談だ。正義的に考えても、君にアルマガニウムを渡すことはできない」


 それに、


「君はここで死ぬ」

「なに?」


 直後、真上から影が出現した。

 影は真下にいる怪盗に落下してくる。


「ん!?」


 気配を感じ、シェルは後ずさる。

 が、影から突き出された刃物が仮面に直撃。ひびが入り、怪盗シェルの仮面が砕かれてしまう。

 露わになったシェルの素顔――――エリックの顔を見ると、ジャスティスは驚いた表情で口を開けた。


「なんと。コソ泥の正体がエリック・サーファイス議員だったとは。アメリカを守るべき議員がこんなことをしてるとは、世も末だ」

「喧しい!」


 今にも飛びかからんとするエリックだったが、彼の前に先程の影が立ち塞がる。


「どけよ」

「どかんでゴザル」

「ござる?」

「ゴザル」


 今時珍しい口癖の奴が出てきた。

 よく見ると、出で立ちも不思議だ。青い頭巾を被り、全身も真っ青。片手には小さな刀を握りしめているソイツの恰好は、漫画で見たことがある『忍者』のイメージにぴったりと当て嵌まった。


「サイボーグN。ソイツに相手は任せたぞ」

「ジャスティス、セッシャは忍者シリトリ君でゴザル。そのような呼び名は捨てていただきたいでゴザル」


 胡散臭い名前だ。

 スバルとエリックは同時に思った。

 上司であるジャスティスも同じことを考えていたので、こう切り返す。


「せめてニンジャで固定はできないのか?」

「だめでゴザル! セッシャ、忍者シリトリ君。どーも、よろしくオネガイシマス!」


 両手で印を結び、ぺこりとお辞儀をするシリトリ君。

 なんともコミカルなサイボーグだった。というか、本当にサイボーグなのだろうか。エリックとスバルの目から見て、彼は普通の人間のように見える。


「っと。悪いけど、アンタとシリトリをする暇はないぜ」


 インパクトに圧倒されつつあったが、エリックはシリトリ君に目もくれずにジャスティスへと駆けだしていく。

 忍者服の横を通り過ぎた途端、印を結んだままのシリトリ君は吼えた。


「ニンポー! ブンシン・アーツ!」


 直後、シリトリ君の身体が分離した。

 比喩ではない。文字通り、頭や両腕、胴体や両足が一斉にバラバラになり、エリックを取り囲む。

 それらは宙に浮きつつ、エリック目掛けて攻撃を仕掛けた。


「カトン・アーツ!」


 分離したシリトリ君のパーツが一斉に火炎を噴き出した。

 それを見たエリック。驚きの表情を隠さぬまま叫んだ。


「それ、忍法じゃないぞ絶対!」


 姿勢を屈め、シリトリ君のパーツの真下を掻い潜る。直後、先程までエリックがいた場所に火柱が立ち昇った。


「あつ!」

「おおっと。急いでここから去った方がよさそうだ」


 熱を浴び、悶えるスバル。

 それを察し、ジャスティスはカイトがぶち抜いた床を見る。


「ではシリトリ君。彼の処理は頼んだよ」

「セッシャにお任せでゴザル!」


 分離されたパーツが集まり、再び印を結んだ状態のシリトリ君が構築されていく。

 一風、忍者の恰好をしたインチキ外国人のようだが、中身は完全なサイボーグだった。


「待て! そいつを置いて行け!」

「進みたければセッシャに勝利してからにするでゴザル!」

「くそ! 悪役みたいな台詞を吐くんじゃねぇ!」


 足止めされたエリックを尻目に、ジャスティスはスバルを担いだまま穴にジャンプ。


「うわあああああああああああああああああああああああああああっ!?」


 高層ビルからの大ジャンプに喚くスバル。

 が、ジャスティスはそれに動じることなく着地。衝撃でスバルは身体に痛みを覚えるも、これまでカイト達に何度も振り回されて慣れてしまったのか、死ぬほど痛いと思えるわけではなかった。


「ん?」


 いや、むしろ痛みが凄い勢いで退いている気さえする。

 自分の肉体に起きた違和感に気味の悪さを覚えるも、ジャスティスはお構いなしに歩きはじめる。


「銃声が聞こえるな。さっきのコソ泥はまっすぐ向かってきたようだが、まだここで戦っている奴がいるようだ」

「カイトさん!」

「それが彼の名前かね?」


 ジャスティスは考える。

 彼らの処理はドクトルに任せているが、既にアクシデントが破壊されているのが現状だ。

 正義的に考えて、これ以上の犠牲は出したくない。


 だがドクトルは任せてほしいと言ってきている。

 どういうつもりなのかは知らないが、彼女はジャスティスにとって大事な仲間だ。彼女無しではサイボーグは存在していないし、自分も力を手に入れてなかった。


「カイトさーん! こっちだ。早く助けて!」


 少年が喚く。

 が、今更叫んだところでどうしようもない。

 いかにビルをぶち抜くような超人でも、まだ戦闘は続行中だ。すぐにシェルターに連れ込んでしまえば彼を探し出すことは困難だろう。

 後は時間を有効に使って、純正アルマガニウムを取り出す。


 そんなことを悠長に考えていると、銃声がぴたりと止んだ。

 大きく響き渡る破砕音が鳴り響いたかと思うと、視界の奥から物凄い勢いでふたりの男が突っ込んできた。

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