vsサイボーグGGG
機械の警備員たちを一通り殴り倒した後、ネルソンことポリスマンは場を確認する。
やはりこの空間には敵以外には自分しかいない。後ろからついて来ている筈の怪盗とダンボールマンのsy型はどこにもなかった。
「ちくしょう! 俺がついていながらまんまと敵の罠にはまるとは!」
がってむ、と言わんばかりに悔やむ正義の味方。
尚、彼らは別に分断されたわけでも、囚われたわけでもなく、単純にネルソンと行動と行動を共にしたくないだけなのだが、そんなことを彼自身が知る由もない。人間の欠点など、いつだって自分自身にはわからないものなのだ。
「待っていろお前たち! いますぐ俺が助けてやる。そして悪い連中はみんな逮捕だ!」
拳を握りしめ、決意を新たにするポリスマン。
さっそく階段目掛けて駆け出していくが、それよりも前にエレベーターの音が鳴り響いた。
「む?」
到着音が聞こえた途端、ポリスマンは首を傾ける。
新たな敵が到着したのかと警戒するが、エレベーターの中から出現したのは彼の想像を超えた物体だった。
「ウホウホ」
ゴリラだ。
しかも二本脚で立ち、トップモデルのように堂々と歩いている。
「ウホホッーイ!」
ゴリラはポリスマンと目が合うと同時、帽子を取ってお辞儀をした。
西部劇に出てきそうなカウボーイハットだ。よく見れば、ベルトや革ジャンまで羽織っている。
「あ、これはどうもご丁寧に」
が、挨拶をされたら返すのが礼儀である。
正義の味方であるポリスマンもその常識に合わせ、一礼。
「ウホ」
しかし、だ。
彼が頭を下げた瞬間、ゴリラは素早い動作でベルトから銃を抜いた。さながら西部劇に出てくるガンマンのような早業である。
銃口がポリマンの脳天へと向けられた。
ゴリラは大きな引き金に指をかけると、躊躇いなく発砲。
乾いた銃声が鳴り響くと同時、ポリスマンが吹っ飛んだ。
「おおう!?」
ポリスマンの頭部を覆う赤いマスクに衝撃が走る。
エントランスを滑るようにして倒れつつも、彼はひび割れたバイザー越しにゴリラを睨みつけた。
「おのれ、挨拶をしながら銃を撃つとはなんと卑怯な!」
ポリスマンは生きていた。しかも元気びんびんである。
ゴリラは起き上がってきた敵を視認すると、帽子を被りなおす。つばの部分からモノクルが降りてきて、ゴリラの左目を覆う。モノクルを通じ、コンピュータがゴリラに語りかけてきた。
『サイボーグGGG。目標はいまだに沈黙せず』
「ウホホーイ」
信じられないぜ、とゴリラ――――サイボーグGGGは答える。
弾丸は確かにポリスマンの脳天に命中した。鉄をも撃ちぬく特別製品である。それを受けて起き上がってくる方がおかしいのだ。
『敵はサイボーグではないようですが、新人類です。注意してください』
「ウホッ」
鉄より堅い敵。普通ならバナナ3本でも断りたい仕事だが、ここは『ジャスティス』の本拠地でもある。
ここのサイボーグとして調整を受けている手前、断る選択肢などなかった。
それになにより、敵は決して不死身ではない。
『ノーダメージではありません。GGG、メタルガトリングの使用許可がおりています』
「ウホーイ!」
GGGの背中が割れる。脊柱の部分に納められていたガトリング砲を取り出すと、ゴリラはそれをポリスマンに向けて構えた。
『残り弾数表示』
「ウホ!」
『自動追尾機能、問題なし』
「ファイア!」
お前普通に喋れるのかよ。
ポリスマンはそう叫びたかったが、それよりも先に発射されたガトリング砲の弾丸に全神経を集中させる。
「グレートガード!」
両手を組み、腕を盾にすることで弾丸の直撃を防ぐ。
だがポリスマンを構成する赤いスーツは着弾と同時に、悲鳴をあげた。
「む!?」
腕から痛みが生じる。
先程、頭に受けた時もそうだが、あのゴリラが放つ弾丸はどうも機械兵士達が使っていたものとは違うようだ。
まともに受けていたら、いずれハチの巣になってしまう。
「ならば、これならどうだ!」
ガードの姿勢のまま、ポリスマンは叫んだ。
「へぇぇぇぇぇぇんしぃんっ!!! ポリィィィィィィィスメェェェェェンッ!! パワァァァァァァァァァァァァァァァァッド!!!!!!!!!」
天地がひっくり返りそうな大声がエントランスに響き渡った。
正直、よく喉が持つな、というのが正直な感想である。
「むふぅ!」
ガードの姿勢を解き、胸を大きく前へと押し出すポリスマン。
その時、不思議なことがおこった!
ポリスマンの身を覆っていた赤いスーツが、見る見るうちに青く変色していくではないか。
『異常事態発生。敵の変身かと思われます』
「ウホォーイ!」
GGGはメタルガトリングを乱射し、あくまで今の姿勢のままハチの巣にするつもりだった。
だが、彼にはある誤算があった。
「よく聞け、卑怯者のゴリラ野郎。今時のヒーローは状況に合わせてタイプチェンジすることくらい、常識なのだ!」
青に染まったポリスマンが動き出す。
超高速で走り出した青の影は真横へと走り出した。
だがGGGはガトリングの砲身の向きを変えない。追尾機能はオンになっている。どんなに速く動こうが、結果的に着弾するからだ。誰もメタルガトリングからは逃れられない。
その筈だった。
「必殺、パワードキイィィィィィィィィィィィィック!」
だがその瞬間、GGGはとんでもないものを見た。
青いポリスマンがメタルガトリングから発射された弾丸をひとつずつ蹴り落としているのだ。
「ウホ!?」
『GGG、そろそろキャラを作らずに普通に驚いても大丈夫かと思われます』
冷静なコンピュータだが、これが驚かずにいられるだろうか。
メタルガトリングは鉄をもぶち破る弾丸を連射しているのだ。
連射速度、追尾機能、破壊力、今日食べたバナナの美味さによる自身の絶好調具合。いずれをとってもありえない現象の筈である。
慌て始めるゴリラを見て、ポリスマンは得意げに笑った。
「見たかゴリラ野郎。お前の銃など、このポリスマン・パワードの前では止まって見えるぜ!」
説明しよう!
ネルソン・サンダーソン警部ことポリスマンは正義の味方である。
彼はあらゆる状況、あらゆる悪の手先、そしてあらゆる危機に対応する為、変身する姿を変えることができるのだ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお! 貴様の銃など、パワードな俺の前では止まって見えるぞ!」
「メタルガトリングを全部蹴り飛ばしているウホ」
『GGG、いい加減普通に喋りましょう。今更キャラを意識しても仕方ありません』
加えて説明しよう!
ポリスマン・パワードはスピード特化のポリスマンである。
ジョン・ハイマン刑事が徹夜で作り上げた超兵器ローラースケートを足の裏に取り付けることにより、ダッシュ速度がアップ!
更に青のボディに埋め込まれた加速装置により、自身の身体能力も劇的に倍増。
まさに速さに特化された青い旋風。それこそがポリスマン・パワードなのだ!
『GGG。メタルガトリングでは外敵を葬れないと判断します』
「仕方ないウホね」
『そのキャラはやはり無理があるのではないかとドクトルが判断しています』
「ドクトルに言われたら普通に喋るしかないか」
遂にキャラを捨て去り、喋り出したGGG。
彼はメタルガトリングでの射撃を止め、それを放り捨てる。
「武器を捨てたな!」
その行動が好機と見ると、ポリスマンはダッシュ。
足に取り付けられたローラースケートを猛回転させ、一気にGGGの懐に飛び込んだ。
「食らえ必殺、パワードキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイック!」
渾身の蹴りがGGGの喉元へと向けられた。
「その代わり、キャラに似合う怪力を自慢させていただくかな」
GGGがにやりと笑う。
青の旋風が喉元で静止した。強烈なハイキックがゴリラに掴まれたと認識した瞬間、ポリスマン・パワードはGGGの右拳を腹部に受ける。
「ごふっ!」
衝撃によって身体が僅かに宙に浮いた。
が、それだけでは留まらない。
「GGGのGはゴリラのG。もうひとつのGもゴリラのG。最後のひとつはガンナーのG。つまり、俺の右拳もまた砲兵となる!」
右拳が捻られる。
手首から小さな筒のようなものが出現すると、GGGは躊躇うことなくそれをポリスマンの腹に射出した。
エントランスに爆破が生じる。




