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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
22/192

vsサイボーグ多数決

 シナリオはこうだ。

 アメリカが保管していた純正アルマガニウムが何者かに狙われている。これを阻止する為、実は国のスパイである怪盗シェルが事前に盗み出す計画だった。

 ところが、謎のサイボーグが出現。

 事故で純正アルマガニウムを飲み込んだ少年もろとも行方をくらましてしまった。


「純正アルマガニウムはまだ未知の部分が多い。先代大統領は兵器利用を考えていたらしいが、その前の大統領が陰ながら阻止していたくらいだからな」

「では、この怪盗どもは2代目の大統領の部下だというのか?」

「指示系統はややこしくなるが、そうなるな」


 あっけらかんと言ってのけるカイト。

 無論、本当のことも少し話しているのだが、怪盗シェルの関わり方はウソが大半である。


「ネルソン警部。ここで大事なのは、怪盗の在り方ではない。純正アルマガニウムを少年が呑み込んだことと、それをサイボーグが拉致してしまったことだ」

「後者はまだわからんでもないが、前者が大事なのはどういうことだ?」

「人質を取られているのと同義だということさ」


 勿論、これも理由のひとつではある。

 が、最大の懸念点は後ろで懸命に話を聞いているマリリス・キュロにあった。彼女は故郷で新生物から栄養を与えられ、望まぬ進化を果たしてしまった。

 経緯や物質は違えど、身体に取りこんでしまったことでスバルの身にどんな変化が起きているのか想像もつかない。


「その話が本当だとして」

「本当だぞジョン刑事。お前は国家権力を疑うのか?」


 コンビニ強盗みたいな恰好をしているカイトが睨みつける。

 有無を言わせぬ迫力があった。なんとしてでもこのシナリオでごり押すという、力強い意志を感じる。

 怯みつつも、ジョンは気になる事を問うた。


「そのサイボーグというのは、どういう存在なのですか」

「テログループか?」

「連中の正体はイルマ・クリムゾン秘書に問い合わせている。今のところ、身代金の要求などは来ていないことから察するに、金目当てではなさそうだな」


 言動や行動から察するに、純正アルマガニウムを狙っていたのは明らかだ。

 それも始めから。


「連中は先代大統領の手先か?」

「そもそも、純正アルマガニウムの情報自体、知っている連中は少ない。なにかしら、協力者がいるのは明らかだろうな。目的は知らんが」


 さて、ここで話しを纏めよう。


「シンプルにしておこう。俺たちの目的はこの少年の救出が第一だ。そして怪盗の目的は純正アルマガニウムの奪取にある」

「奪取した後は?」

「宇宙の外に放り出す」


 怪盗シェルが真剣なトーンで呟く。横に座っているイオが舌打ちしたことから察するに、本気でそうするつもりだったのが伺えた。


「アルマ・ペガサスを作成したのは俺たちの師匠だ。その意思を次いで、こいつを地球の外に放り出す。これは今の人類が扱っていいもんじゃない」

「それは師匠の遺言か?」

「ああ。その1か月後にあの人は殺された」


 気まずい沈黙が流れる。

 ややあってから、エイジが疑問をぶつけた。


「ロケットに積んで放り出すつもりなのか?」

「俺は今でこそ正義の味方をしてるけど、盗みの腕はプロだぜ。宇宙船だろうがかっぱらってみせるよ」

「よし、ならば今ここで逮捕だ!」

「アンタ人の話を聞いてた!?」

「やかましい! 例えどんな理由があっても、盗みはダメだ! 犯罪だ! ゆえに、逮捕する!」


 ネルソン警部の思考はとても単純だった。

 このままいくと折角集まりかけた戦力が浪費されてしまう恐れがあるので、カイトは無理やり話を元に戻す。


「警部。その前に少年が拉致されたのを忘れるな」

「む!」

「いいか、この少年は俺たちと違って運動が大得意というわけではない。刀で切られれば死ぬし、銃で撃たれると勿論死ぬ」

「あの。それで死なないのはカイトさんだけでは?」


 マリリスが突っ込んでくるが、気にしない。


「アイツに抵抗するだけの力はない。しかも、連中がアルマガニウムだけを狙っているのなら、時間が長引くだけ少年の身が危険だ。警部、仮にも法の番人なら、どっちを優先してほしいと思うかわかるだろう?」

「む……!」


 言われ、ネルソンは腕を組む。

 彼がどう答えるかは殆ど明確なのだが、本人の口から聞く前にジョン刑事が再び問う。


「その少年ですけど。現在も無事なのでしょうか」

「わからん。だが、もしもアイツに手を出しているのなら」


 指先から爪が伸びる。鋭利な刃のようなそれを机に突き刺すと、カイトは乱暴な動作で無理やりテーブルを縦にぶち破った。


「俺はアイツらを絶対に許さん。絶対に、だ」

「おィ。テーブルの請求はどこに出せばいいんだァ?」

「……国家権力に出しておけ」


 ソイルドレイクから終始半目で見られつつ、カイトは気まずそうに着席した。







 蛍石スバル、16歳。

 彼は今、未曽有の危機に立たされていた。ロープでぐるぐる巻きにされ、椅子に座らされているこの現状。彼の未来はサイボーグたちに委ねられているのである。


「カンチョーだ」

「いや、解剖だ!」

「否! 自然の摂理に任せ、排泄物として出てくるのを待つべきである!」


 即ち、この3択のうちどれかを迎える羽目になるのだ。

 スバルとしては自然の摂理を選択させてほしいのだが、いかんせん他の選択肢が現実的すぎるのが悲しい。特に解剖が。


「君たちは機械を詰められて脳の計算速度にバグが生じているのかな? 解剖だよ! 寧ろ解剖しかないだろう!」


 スバルは四方八方をサイボーグたちに囲まれている。

 所謂、裁判中の被告人のような立ち位置だ。少年は胃が痛むのを我慢しつつも、サイボーグたちの主張に耳を傾ける。


「ドクトルである私が責任を取ろう。彼の胃を解剖し、純正アルマガニウムを取り除くべきであると!」


 ドクトルと名乗った女性が白衣を広げ、中から無数のメスを取り出す。

 彼女は席から身を乗り出し、両手のメスを全力でぶつけはじめた。喧しい金属音が鳴り響く。


「解剖! 解剖! 動物ばっかりじゃ飽きてるんだよ! いい加減、生の生き物を解剖したいさ!」

「お前の趣味に任せたら危険だ。純正アルマガニウムを傷つける恐れがある」


 ライトニングが真っ向から意見をぶつける。

 言われた張本人であるドクトルは歪に表情を変えた。


「私の仕事が信用できないかな? 君たちをサイボーグにしたのは誰だか忘れたか?」

「サイボーグになるのを志願した結果、何人の失敗例を出したのか覚えていないのか? 致命的なバグが発しているのはドクトルの方だ」


 挑発するような物言いのライトニング。

 彼らのやり取りを見て、スバルは思う。あまり仲がいいわけではないのだな、と。

 そんなことを考えていると、途中で誰かが立ち上がった。


「ドクトルの意見は却下だ! 彼は旧人類の少年である。ゆえに、その彼を傷つける行為を私は正義とは認めない」

「ジャスティスがまた騒ぎ出したな」

「ああなったら誰の意見も聞かないぞ」

「だったらどうするというのか。我々は同じ目的の為に集い、生き残った同志である! 正義という共通の目的のためにくだらん争いをしている暇があるのなら、いつものアレで決めるべきではないのか!?」


 ジャスティス、と言われた人物は周りからの非難を浴びつつも、己の主張を曲げようとはしない。

 同時に、彼がリーダー格のようだ。周りから深いため息をつかれつつも、彼らはジャスティスの判断に従っている。


「では正義の名のもとに、少年の運命を委ねよう!」

「え」


 勝手に運命を委ねられ、スバルは狼狽する。


「あの。すみません、俺は今からどうなってしまうのでしょうか!」

「静かに! 君は黙って運命に身を委ねるといいだろう」

「黙ってられないんですよ、さっきの選択肢をつきつけられたら!」


 なんといってもカンチョーと解剖が迫っているのだ。このふたつに決定されたら明日の朝日を拝める可能性はない。


「安心した前。君の生命は私の正義が保証する」

「どう保障されるっていうんですか! 解剖やカンチョーなんかされた日には、俺の身体がスパーキングですよ!」

「正義的に考えて、カンチョーを受けても無事だとは思うが」


 ジャスティスは思う。

 この少年は純正アルマガニウムの影響を受けて思考に異常が発しているのではないか、と。


「では少年。正義を名乗る者として保障しよう。例え君の肉体が滅んでも、第二第三の君が必ず君自身の無念を晴らすと! その為に君の脳を培養カプセルに保管することを提案するが、意義のある者はいるかな!?」

「異議あり!」


 スバルが吼える。

 周囲にいるサイボーグたちは沈黙を保ったままだった。


「では、1対26で決定、と」

「陰謀だ! 横暴だ!」

「どっちだね。正義的に答えたまえよ」

「ていうか、26人もいたら俺の意見なんて反映されるわけないだろうが!」

「26を馬鹿にしてはならん! 正義の強い意志でドクトルの手術に耐えきったスゲー奴らだぞ!」


 途端に口喧嘩に発展した。

 もっと怖がっているかと思っていたが、サイボーグ一同は堂々とジャスティスと言い争うスバル少年に敬意を抱き始めている始末である。


「あのガキ、ジャスティスを相手に物怖じしてないな」

「ああ。あれは大物になるぜ」

「既に大物かもしれないぞ。なにせ純正アルマガニウムを飲み込んでるんだ。こうしてる間にも、奴の胃袋はブラックホールになってるかもしれん」

「解剖したい解剖したい解剖したい解剖したい解剖した」

「いかんドクトルが熱暴走し出したぞ。ジャスティス、早く決めよう。このままだとドクトルが爆発する」

「おお、そうだ! では正義の多数決をおこなおう!」


 正義の多数決ってなんだよ。

 そんなので俺の胃と尻の命運が決まるの。

 スバルは叫びたかったが、それよりも先にサイボーグたちによる多数決が決行された。


「カンチョー17票。解剖1票。大自然のお仕置きが8票。よって、カンチョーに決定!」

「カンチョー多いなお前ら!」

「では特性のカンチョーの用意を行う。ドクトル、準備にどれほどかかる?」


 解剖熱が冷めないドクトルは、口から煙を吐きながら呟く。


「解剖……解剖なら、げほ! 1時間で!」

「煙を吐きながら正義の解剖などせきまい! 君もサイボーグなら、熱暴走を克服してからにしたまえ」


 ドクトルは既に使い物にならない。

 こうなったら彼女の助手に頼もう。


「ヴェノム。カンチョーの用意は?」

「あら、ジャスティス様。私を御使命ですか?」


 ナース服の女性がやや照れたように顔を赤らめる。彼女は手に取った注射器をなぜか口の中に放り込むと、そのままむしゃむしゃと食べ始めた。


「あの。なんであの女の人はさも当然のように注射器を食べてるんですか?」

「サイボーグだからな」


 サイボーグってすげぇや。

 少年は心の底からそう思った。


「私がやると猛毒で溶けてしまう可能性がありますので、ドクトルが機能復活するまで待っていただく方がいいかと」

「よかろう。意義がある者は正義に誓って私にいえ!」


 一同、沈黙。

 スバルにとっても時間が稼げるので、あまり文句は言えない。


「沈黙は正義の賛同と受け取る! ではサイボーグたちよ、守りにつけ! 怪盗の嗅覚は正確だ。いずれやってくる。カンチョーが決行される前に、敵は全滅だ!」


 スバルは心の底から思った。

 カイトさんシデンさんエイジさんマリリス、早く来てくれないと俺の尻がスパーキングだぜ、と。

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