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エクシィズ外伝  作者: シエン@ひげ
超人大決戦! ~超人VS怪盗VS警察VSサイボーグ~
20/192

vsエリック・サーファイス

 政治家の親族が政治家になる。

 別段、珍しい話ではない。政治家に限らず、親族の仕事に憧れてその職に就いたり、代々受け継いだ家業というパターンだってある。

 だから先代の大統領の親族が政治家をやっていることについては別に大した疑問を抱く事は無かった。


「だが、それがなんで怪盗なんかと兼業してるんだ」

「そっちの方が疑われずに済むだろ。俺が仕事をしている間に怪盗が活動してるんだからさ」

「じゃあ、怪盗シェルが動いている間は誰がエリック・サーファイス議員を務めているの?」

「オレだ」


 マーティオが不貞腐れつつ挙手をした。

 彼はエリックを刃のような目つきで睨めつけつつ、淡々と喋りつづける。


「こんなナリだが、俺たちはふたりで『怪盗』と『政治家』をやってる。表の顔はエリックベースだがな」

「お前は?」

「マーティオ・ベルセリオン。レストランの地下でこっそりと怪盗の手伝いと闇医者をやってる」


 これまた濃い経歴の持ち主だ。カイトたちが言うのも何だが、若い癖に経験が豊かである。


「替え玉にしては全然似てないな」

「変装は怪盗の嗜みだからな。なんとでもできるさ」


 それよりも、マーティオとしては気になる事がある。


「で、エリック。ハッキリさせておきたいんだが、こいつらは味方として考えていいのか?」


 エリックとマーティオの最優先事項は純正アルマガニウムの入手と処理だ。今の所、共通の敵であるサイボーグを追う為に共同戦線を張るのは納得できる。

 納得できるがしかし、問題はその後だ。


「そのサイボーグとやらを上手く処理できたとしても、後でまたこいつらをやりあうのはゴメンだぞ」


 それだったら、今この場で決着をつけた方がいい。

 幸いにもここは自分たちの本拠地だ。地の利や、奥にいる家族たちを巻き込めば勝利は見込めるだろう。


「そうだな。まずはそこをハッキリさせようか」


 カイトが言う。

 彼は腕を組み、自分の考えを主張し始めた。


「美術館で少し話させてもらったが、お前たちの目的は純正アルマガニウムの処理だと考えていいんだろう?」


 エリックは沈黙。

 迂闊に話したのを後悔しつつも、カイトの次なる言葉を待つ。


「対してこちらの目的だが、正直にいうと純正アルマガニウムよりもサイボーグに連れ去られた少年の方が大事だというのが全員一致の意見だ」


 エイジとシデン、マリリスも満面の笑みで頷いた。

 この場にイルマがいたらなんと言われるかわからないが、いない者のことなど知った事ではない。


「純正アルマガニウムについては、政府から依頼を受けて怪盗から盗むのを阻止するのが当初の目的だった。だが、状況はお互いにとって大きく変わった」

「あのサイボーグ。政府の依頼で動いてたなら、わからねぇのか?」

「今、イルマ・クリムゾンに問い合わせている」


 イルマの名前がでたところでエリックは目を丸くした。

 若手ではあるが、彼も政治家だ。大統領の傍らに佇む、不思議な少女の存在はよく知っている。直接話したことはないが、妙に神秘的な雰囲気が漂っているのが印象的だった。


「お前、あの大統領秘書の命令で動いてるのか?」

「命令……まあ、命令だな」


 己の立場がよくわからなくなるので、その辺はあまり考えないようにする。


「連中の正体が判明するかはわからんが、ひとつだけハッキリしていることがある。こちらの仲間が奴らの手に落ちたことだ。しかも純正アルマガニウムを腹に納めて」

「ありえねぇだろ」

「漫画みたいだと思うだろ。でも事実って漫画よりもおかしなことがおきるんだよ」


 エリックが顔を伏せる。流れるような動作で少年が純正アルマガニウムを飲み込んだ光景は、今でも鮮明に思い出せる。


「イルマ・クリムゾンがなんと言おうが、俺たちの優先事項は連れ去られた少年だ。これだけは絶対に嘘はつかん」

「証明できるか?」

「言葉だけなら何とでも言えるぜ」


 エリックとマーティオの言い分は正しい。

 スバルが純正アルマガニウムよりも優先順位が高いと口でいうのは簡単だ。だが、実際に言葉だけを鵜呑みにできる状態ではないことなど百の承知である。


「カイちゃん、どうやって信用を得るの?」

「こればっかりはイルマやウィリアムを使っても難しいぞ。あいつらも新人類だろ?」

「恐らくな。だが、仮に旧人類だったとしてもウィリアムの能力を使ってはこいつ等に誠意を見せれない」


 かつてスバルから教えられたことだ。

 サイボーグたちの居場所――――すなわちスバルの居場所を知るには、彼らの協力は絶対必要である。

 だが、いかにして誠意を見せればいいだろうか。彼らの価値観を掴めておらず、カイト自身もコミュ障の自覚がある。顔見知りのエイジたちならともかく、今であった彼らにうまく協力を仰げるだろうか。


「……」


 言葉が詰まる。

 証明の方法を無言で探るカイト達だったが、その沈黙が破れたのはキッチンの方からだった。


「大変だァっ!」


 奥から男の声が聞こえる。

 ばたばたと騒音が鳴り響いたかと思うと、白髪のシェフらしき青年が扉を蹴飛ばして突入してきた。


「おらァ! エリックにマーティオと……誰だコイツらぁ!?」

「ソルドレイク」

「アニキ、うるせぇ」


 ソルドレイク、と呼ばれた口の悪いシェフがこの場にいる全員を視界に入れ、混乱する。

 カイト達は先程のやり取りから、このソルドレイクという顔色の悪そうな男もまたエリックの協力者なのだと大体察した。


「何事だ。こっちは大事な話をしてるんだが」

「わりぃが話は後回しにしとけ。サツが嗅ぎつけやがった」


 ソルドレイクが言うと同時、マーティオがエリックの胸倉を再度掴んだ。


「テメェ、こいつ等だけじゃなく、警察にまで嗅ぎつけられるってのはどういう了見だ! 致命的なミスしすぎだろうが!」

「え、ウソだろ!? 臭いは消したんだけど……」

「血痕は回収したか?」


 カイトがぼそりと呟く。


「この前、資料で見たんだが最新鋭のブレイカーは血液から人間を辿ることができるんだそうだ。いわゆる、ロボット警察犬という奴だな」

「ええ!?」

「エリック、とにかく今は逃げろ! ここは俺たちがなんとかしてやっからよォ!」


 ソルドレイクが口の悪さに似合わず心配げに声をかけるが、カイトはここで閃いた。

 彼はソルドレイクに向き直ると、静かに問いかける。


「おい。警察というのは例の警部か?」

「ああ、ネルソン警部だなァ。あのサル顔は間違いねェ。いつもの部下とセットできやがったァ」

「他に部下は?」

「いや、きてねェが……」

「そうか」


 これは誠意を見せるチャンスかもしれない。

 カイトは静かに立ち上がる。


「おい、テメェ。どこの誰だか知らねェけどよ。ウチの店の大事な部分見られて、勝手に動き回られちゃ困るぜ」


 肩を掴み、脅しにかかるように言うソルドレイク。

 事実、彼は包丁を握ったままだった。


「勘違いするな。俺もお前たちも、今はサイボーグが共通の敵だ。今からこちらが味方だと証明してやる」

「どうやって?」

「あの警部を味方にする」


 簡単に紡がれた言葉に、エリックたちは唖然とする。


「追いかけっこをしたが、あの警部はかなりの戦力になると見た。サイボーグの戦力が未知数な以上、頼りになる駒は多い方がいい」

「いや、まあ確かにあの原始人を味方につけれたら心強いけどさ」


 嫌な思い出がある為か、露骨に顔をしかめるシデン。

 同様に、エリックも嫌そうな顔で声をあげた。


「お前は知らないだろうけどよ。あの警部はすげぇしつこいし、うるさいぞ。ギャグ漫画みたいな筋肉してるし」

「後、馬鹿だから一度目標を捉えると永遠に追い続けるな」

「そこだ」


 ネルソン警部は既にエリックを親の仇のように追い回しているが、実際に仇なわけではない。

 少し話した程度だが、彼はとても生真面目な警察官だ。生真面目すぎてお猿さんに退化しちゃってる気がするが、そこは大した問題ではない。


「要はあの警部の心を動かすようなドラマティックな事件にでっちあげる。怪盗も味方だと思わせれば、それだけで奴は動くだろ」

「そんな簡単にだませるか?」

「問題ない」


 カイトは自信満々な笑みを浮かべつつ、厨房へと出た。


「なにせメイド服の男を宇宙人だと信じたような奴だからな」


 その言葉を聞いて、エリックは心の中で深く納得した。

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